初めてのレンズに迷ったら

単焦点レンズを買おうと思ったとき、多くの人がまず迷うのが「35mm、50mm、85mmのどれを選ぶか」だ。結論から言えば、普段自分がどの画角で世界を切り取りたいかがわかれば、答えは自然と見えてくる。

スマートフォンで画角を体感する

自分に合う焦点距離を知る手軽な方法がある。スマートフォンのカメラでズーム倍率を変えながら撮ってみることだ。

たとえばiPhoneの場合、メインカメラは35mmフルサイズ換算で24mmから26mm相当の画角を持つ(機種によって異なる)。2倍ズームにすると約48mmから52mm相当になり、50mmの単焦点レンズに近い画角が得られる。Proモデルでは、48MPセンサーからのクロップにより28mmや35mmといった焦点距離のプリセットも利用できる。

ふだんスナップを撮るとき、どの倍率がしっくりくるかを意識してみよう。よく使う倍率がわかれば、それを35mmフルサイズ換算の焦点距離に読み替えるだけで、最初の一本の候補が絞り込める。

焦点距離と画角

焦点距離はレンズの光学的特性を表す値で、ミリメートル(mm)単位で示される。この値が小さいほど広い範囲が写り(広角)、大きいほど狭い範囲が切り取られて写る(望遠)。

レンズが写し取る範囲の広さを角度で表したものを画角(Field of View)という。画角は焦点距離とセンサーサイズの両方によって決まる。同じ焦点距離のレンズでも、センサーが大きければ画角は広くなり、小さければ狭くなる。スマートフォンのカメラに「35mm換算」という但し書きがつくのはこのためだ。

35mmフルサイズセンサーにおける代表的な画角は以下のとおりだ。

  • 35mm ... 対角画角 約63°、水平画角 約54°
  • 50mm ... 対角画角 約47°、水平画角 約40°
  • 85mm ... 対角画角 約29°、水平画角 約24°

焦点距離が長くなるほど画角は狭くなり、被写体をより大きく切り取れることがわかる。

35mm、50mm、85mmの特徴

35mm

広角寄りの画角で、被写体だけでなく周囲の状況も広く写し込める。街中のスナップや、風景の中に人物を配置する環境ポートレートに向いている。ただし、被写体に近づいて撮ると遠近感が強調されやすく、人物の顔が不自然に歪んで写る場合がある点には注意が必要だ。

50mm

広角と望遠の中間にあたり、「標準レンズ」と呼ばれる焦点距離だ。被写体と背景のバランスが自然で、ポートレートからスナップ、テーブルフォトまで幅広い用途に対応する。多くのカメラメーカーがf/1.8クラスの製品を比較的手頃な価格で展開しており、最初の一本として高い人気がある。

85mm

中望遠に分類され、ポートレート撮影の定番として広く使われている焦点距離だ。撮影者と被写体の間に適度な物理的距離が確保されるため、被写体がリラックスしやすい。背景のボケが大きくなり、被写体を際立たせる描写が得意だ。反面、室内や狭い場所では十分な撮影距離を取れないことがある。

遠近感は距離で決まる

写真で「望遠レンズは背景を圧縮する」、「広角レンズは遠近感を誇張する」と言われることがある。しかし、遠近感(パースペクティブ)を決定するのは焦点距離ではなく、カメラから被写体までの距離だ。

望遠レンズで撮影すると背景が圧縮されて見えるのは、望遠レンズの光学的性質によるものではない。望遠レンズで被写体を適切な大きさにフレーミングするには、撮影者は被写体から離れる必要がある。被写体との距離が大きくなると、被写体と背景の距離の比率が相対的に小さくなるため、背景が近く大きく見える。これが圧縮効果の正体だ。

広角レンズでは逆のことが起きる。被写体に近づいて撮ることが多いため、被写体と背景の距離の比率が大きくなり、遠近感が誇張される。

これは裏を返せば、同じ位置から35mmレンズで撮った画像を85mm相当の画角にトリミングすれば、85mmレンズで撮影した写真とパースペクティブは一致するということだ。焦点距離が変えているのは画角であって、遠近感ではない。

写真から画角を読む

カメラを続けていると、一枚の写真を見ただけでおおよその焦点距離がわかるようになる。画角による被写体と背景の関係、ボケの量と質、遠近感の強さ。これらを総合的に読み取ることで、どのレンズで撮られた写真かが見えてくる。

好きな写真家の作品を見るときに「この写真は何ミリだろう」と推測する習慣をつけてみよう。自分がどの画角に惹かれるかが見えてくれば、それが最初のレンズ選びにおいて最も信頼できる判断材料になる。

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