写真の物理学 ㉘ ダイナミックレンジとビット深度
📐写真の物理学シリーズ ㉘ このシリーズでは、写真にまつわる現象を物理学の言葉で記述する。「なんとなくそうなる」を「なぜそうなるか」に変換することが目的である。 カメラのスペックに並ぶ「14bit RAW」や「ダイナミックレンジ○○EV」は、数字が大きいほど良いと思われがちだ。しかしダイナミックレンジはセンサーのウェルキャパシティとリードノイズの比で決まる物理量であり、ビット深度はその情報を損なわずに格納する器の大きさにすぎない。本稿ではこの二つの概念を物理的に整理し、リニアRAWの構造からデュアルゲインセンサー、HDR合成までを導出する。 ダイナミックレンジの定義 ダイナミックレンジ(DR)とは、センサーが記録できる最も明るい光と最も暗い光の比である。 写真の世界では、この比をEV(Exposure Value)段で表現するのが一般的だ。1EV段は光量が2倍になることに対応する。数式で書くと、 $$ \text{DR} = \log_2 \left( \frac{I_{\max}}{I_{\min}} \right) \quad [\text{EV}] $$ となる。