大学と地域貢献
近年の社会では大学と地域社会の関わり方が変わり、社会貢献責任の考え方の広がりなどに伴い、大学が地域と連携していくことが期待されている。本稿では、大学の地域貢献から原点に立ちかえり、今後大学がどのようにして地域連携していくべきかを論ずることによって、地域社会へ貢献する目的と問題点について明らかにすることを目的とする。
大学の地域貢献と学術探究の関係
まず、近年の大学による地域貢献の期待の高まりについて、梶は地域貢献を「大学の『第3の機能』」と指摘している(1)。このように、たしかに大学の機能が地域貢献に関して拡大してきているが、大学の最も重要な機能は学術の探究である(2)。大学の機能に関して草原も「大学の社会的責任には多様な側面があるが、最も重要かつ基本的なことは『学問を通じて貢献すること』だ」と強調している(3)。このことから、筆者は大学が自身の特性を生かした地域連携のあり方を模索していくべきだと考える。すなわち大学は必ずしも地域貢献に直結する事業のみから地域と連携しなければならないわけではなく、研究を通して学問の立場から地域へ貢献していく立場も尊重するべきなのではないかということである。
日本の大学の地域性について、武井は「国立大学や私立大学がこれまで評価されたのは特定の地域にではなく『社会全体の価値の向上に貢献する』点が大とされてきた」と評価している(4)。一方で、確かに直接大学が地域と連携し、過疎問題などを代表とする諸問題の解決に乗り出すことがもっとも直接的な大学の地域連携の形なのではないかという指摘も考えられる。しかし、主たる活動が学術研究である大学に比べ、利益を追求する一般的な企業の方が結果の即効性という視点からは得意としているのではないかと考える。つまり、学術的な知の集積を目的としないシンクタンクなどの施設では、より実践的な解決策を提示することが可能であり、その点において大学と一線を画しているのではないかと考えられる。山﨑も大学の研究所に関して「学問的に優れた研究によって貢献することが賢明であろう」と論じている(5)。以上のことから、筆者は大学が一歩引いた俯瞰的な視点から地域と連携していくべきであり、具体的な方法としては学問を通した長期的な社会貢献をするべきではないかと考える。
「開かれた学校」としての大学
一方で、長岡らは学校に関して「最も整備された施設・設備と専門的スタッフを有する教育機関」であり、「地域社会の教育機関としては最も中心的なものだ」と認めつつも、「今日、施設・設備の面では、学校をはるかにしのぐ社会教育関係施設も増えている」と指摘している。ただ、「教員、すなわち『人』の面では、学校は今後とも他の施設におくれをとることはなさそうである」と、大学の特に人的資源の側面に焦点を当てている。そのうえでの実践的解決策として、学校は社会教育に要請される生涯教育の役割を引き受けるべきだとしている(長岡らはそうした学校のことを「開かれた学校」と呼んでいる)。以上の理念に即した学校の実現のために「学校は、学校以外の多様な教育機関、文化的諸施設、さらには地域住民などと積極的な協力関係を結ぶことが要請されている」と案を提示している(6)。
他方、草原は大学の研究が直接は社会問題の解決につながらないことについて「大学の学問はすでに社会的有用性を失いつつあるのではないか」と問題提起をしており、その上で「社会問題と乖離した大学の学問」と「学生意識の変化」が原因ではないかと指摘している(7)。こうした地域連携における大学の強みと弱み、及び大学の社会からの乖離に関しては今後さらなる議論が求められる。
脚注
- 梶英樹「大学における地域連携の戦略的展開」『大学の戦略的経営手法』第7章、岩崎保道 編、大学教育出版、2016年、pp. 88-104.
- 参考:学校教育法第八十三条
- 草原克豪「大学の社会的責任:学問と教育」『大学の社会的責任』第1章、大学の研究教育を考える会・野村浩康・前田正史 編、丸善、2001年、pp. 3-21.
- 武井昭「公立大学の生き残り戦略と『地域貢献』」『大学と地域貢献』第4章、高崎経済大学付属産業研究所 編、日本経済評論社、2003年、pp. 205-241.
- 山﨑益吉「『地域貢献』への篤い思いと地域研究」『大学と地域貢献』第2章、高崎経済大学付属産業研究所 編、日本経済評論社、2003年、pp. 61-145.
- 永岡順・平沢茂「学校から地域へ、地域から学校へ」『学校と地域社会』第1章第4節、吉本二郎・長岡順 編、ぎょうせい、1980年、pp. 38-49.
- 草原克豪、前掲書.