ドメインレジストラの選び方

ウェブサイトを運営するならドメインが要る。ドメインが要るなら、それを登録・管理するレジストラを選ばなくてはいけない。

Cloudflare×Ghost Proで簡単!.pageドメインを使ったカスタムドメイン設定ガイド
.pageドメインでのセットアップをしている人を見なかったので。 ドメインといえば.comがいまでも主流ですが、ドメインを新規で使う分にはどれを選んでも同じなため、ちょっと面白いものを選びたいですね。 今回は.pageドメインを利用してみました。Googleがレジストラーとして管理しており、HTTPSが強制され、HSTS Preloadも勝手に登録されるのでブログを使う身としては安心でらくちんです。 HSTSとはなんぞや HSTS(HTTP Strict Transport Security)って、簡単に言うと「ブラウザが自動でHTTPアクセスをHTTPSアクセスに切り替えるようにする仕組み」です。たとえばふつうならHTTPでアクセスすると、そのままHTTPでサーバーに行くわけですよね。でもHSTSを設定しておくと、いったんブラウザが「このサイトはHSTSに対応してるんだから、そもそもHTTPでの接続を試そうとしちゃダメ」って判断し、強制的にHTTPSに変えてくれるんです。 そうすると、ユーザーがURLバーに http://example.com って打ち込もうが何しようが、

ウチでは .pageドメインをCloudflareで使っている

この選択が思ったより厄介だということに気づいたのは、実際にいくつかのレジストラを使い比べてみてからだった。

ドメインは一度取得すると長く使い続ける。ブログの顔になり、メールの基盤になり、あらゆるオンラインの拠り所になる。レジストラに不満が出たとき、移管(別のレジストラへの引っ越し)は可能だが、ICANNの規定で取得後60日間は移管ができないし、手続き自体にも手間と時間がかかる。最初にどこを選ぶかが、その後何年もの体験を左右する。

そして、レジストラの品質には驚くほど差がある。

💡
結論だけ知りたい人に

Cloudflare Registrarを使おう。

以上

何を基準に選ぶか

基準は人それぞれだろうが、長く使う前提で考えたときに重要だと思う観点をいくつか挙げてみる。

料金の透明性

ドメインの価格には「取得価格」と「更新価格」がある。初年度だけ極端に安く設定し、翌年から大幅に値上がりするレジストラは少なくない。長期で使うなら、更新価格こそが本当のコストだ。WHOIS公開代行やDNSSECといった基本的な機能に追加料金がかかるかどうかも、実質的な総コストを左右する。

ICANN公認レジストラであること

ドメインの管理体系は、ICANN(Internet Corporation for Assigned Names and Numbers)という非営利組織を頂点に構成されている。その下に、ドメインの種類ごとの管理団体であるレジストリがあり、さらにその下にユーザーへドメインを販売するレジストラがいる。

ICANN公認レジストラになるには一定の財務基盤と運用基準を満たす必要がある。リセラー(公認レジストラの再販業者)が必ずしも悪いわけではないが、中間業者が入るぶん、万が一の対応で不利になりうる。ICANNのサイトに公認レジストラの一覧が公開されているので、確認しておいて損はない。

管理画面の使い勝手

DNSレコードの設定やドメインの各種操作を頻繁に行う人にとって、管理画面の出来は日常の体験そのものだ。頻繁に触らない人であっても、いざ設定変更が必要になったとき「何がどこにあるか分からない」画面は困る。

WHOIS公開代行

ドメインを登録すると、登録者の情報がWHOISデータベースに公開される仕組みになっている。個人でドメインを持つ場合、氏名や住所が世界中から閲覧可能になるのは避けたいところだ。

現在はGDPR(EU一般データ保護規則)の影響で多くのレジストリがデフォルトで個人情報を非公開にしているが、すべてのTLD(トップレベルドメイン)で一律に適用されているわけではない。レジストラ側でWHOIS公開代行が無料提供されているかどうかは、引き続き重要な確認事項になる。

倫理的な姿勢

少し抽象的に聞こえるかもしれないが、ユーザーをどう扱っているかは長い目で見ると大きい。アップセルの押し付け、退会や移管の妨害、不透明な値上げ。こうした振る舞いは、短期的にはレジストラの利益になるかもしれないが、ユーザーにとっては不利益でしかない。

そして経験上、ユーザーを雑に扱うサービスが本当の意味でコストパフォーマンスに優れていることは、まずない。

いくつかのレジストラについて

ここからは、選択肢として挙がりやすいレジストラについて書いてみる。網羅的なレビューではなく、あくまで個人の視点で見た現時点の印象だ。

Cloudflare Registrar

Cloudflareはもともとコンテンツ配信ネットワーク(CDN)やDDoS防御で知られる企業だが、2018年にドメインレジストラ事業を開始した。最大の特徴は、ドメインを卸売価格、つまりレジストリに支払う原価そのままで販売していることだ。Cloudflareはドメイン販売からは利益を得ていない。

開始当初は移管のみの受付だったが、現在は多くのTLDで新規登録にも対応している。WHOIS公開代行、DNSSEC、DNS管理はすべて無料。管理画面はCloudflareのダッシュボードに統合されており、日本語を含む多言語に対応している。

制約もある。ドメインをCloudflareで管理する場合、DNSもCloudflareを利用する必要がある。ただし、CloudflareのDNSは応答速度・安定性ともに業界最高水準にあり、実用上は問題になりにくい。支払いがUSドル建てのため為替変動の影響を受ける点と、.jpドメインに対応していない点は留意しておきたい。

卸売価格という圧倒的な価格面の合理性、整理された管理画面、CDNやセキュリティ機能との自然な統合。技術的な操作に抵抗がない人にとっては、非常に手堅い選択肢だと思う。

Gandi

フランスで1999年に創業した老舗のICANN公認レジストラ。「No Bullshit」という標語を掲げ、広告費の代わりにNPOやオープンソースプロジェクトを支援する方針で知られてきた。取り扱いTLDが豊富で、ドメイン契約に付帯する無料メールボックスも特徴のひとつだ。管理画面は日本語対応で使い勝手も良好である。

ただし、近年は状況が変わりつつある。ユーザーからは更新価格の大幅な引き上げが報告されており、数年のあいだに更新料が倍近くに跳ね上がったという声もある。また、移管時にドメインのロック解除まで最大72時間の待機が必要になるなど、手続きの煩雑さを指摘する意見も見られる。かつて「No Bullshit」に共感して選んだユーザーの一部が、他のレジストラへの移管を検討している状況が生まれている。

サービスの品質そのものが悪いわけではない。しかし、価格面での優位性は薄れており、以前ほど無条件に推薦しにくくなったのが正直なところだ。

お名前.com

日本で最も知名度の高いドメインレジストラのひとつ。GMOインターネットグループが運営しており、初年度の登録価格が安いことで多くの新規ユーザーを集めている。

一方で、管理画面の使いにくさ、大量の宣伝メール、更新を促すモーダルウィンドウ、WHOIS公開代行の不透明な料金体系など、ユーザー体験に対する不満は根強い。技術者コミュニティでの評判は以前から芳しくなく、初年度の安さに惹かれて登録したものの、更新時の価格やUXの問題に気づいて他のレジストラに移管するというパターンは珍しくないようだ。

初年度が安いことは確かだが、長期的な利用コストと体験を考えると、積極的に選ぶ理由は見当たらない。

Google Domainsの教訓

かつてGoogleが提供していたGoogle Domainsは、透明な料金体系と優秀な管理画面で高く評価されていた。しかし、2023年にSquarespaceへの事業売却が発表され、2024年半ばまでにすべてのドメインがSquarespaceへ移管された。

優れたサービスであっても、提供元の事業判断ひとつで消滅しうる。Google Domainsを推薦する記事はネット上に今も多く残っているが、新規登録はもうできない。ドメインレジストラの情報は鮮度が命であり、古い推薦記事をそのまま鵜呑みにすると痛い目を見る可能性がある。

Porkbun

近年、特に英語圏の開発者コミュニティで急速に評価を高めているレジストラ。料金が透明で比較的安価、WHOIS公開代行は無料、管理画面はシンプルで使いやすいと評されている。Cloudflareと異なりDNSを自由に選べる点を好むユーザーもいる。

.jpドメインの場合

.jpドメインを使いたい場合、現時点ではCloudflareは対応していない。Gandiは対応しているが海外レジストラの中ではやや割高だ。日本のレジストラでは、スタードメイン(ネットオウル)が比較的まともな管理画面と無料のWHOIS公開代行を提供している。ゴンベエドメイン(インターリンク)は取り扱いTLDが非常に豊富で、変わったドメインが必要な場合に選択肢に入る。

結局のところ

ドメインレジストラの選択は、人生を左右するような大きな決断ではない。だが、一度選ぶと長く付き合うことになるし、不満を感じたときの移管には相応の手間がかかる。

現時点で.jp以外のドメインを取得するなら、Cloudflare Registrarの合理性は際立っている。卸売価格で販売するというのは、つまり「世界中のどのレジストラよりも高くなることがない」ということだ。管理画面も整っていて、CDNやDNSとの統合も自然。技術的な操作に慣れている人であれば、不満を感じる場面はほとんどないだろう。

Gandiはかつて「誠実なレジストラ」として広く推薦されていたが、近年の値上げ状況を見ると、2019年頃の評価をそのまま引き継ぐのは難しい。同様に、Google Domainsの終了は、どんなに優秀でもサービスが永続する保証はないという教訓を残した。

そう考えると、長い目で見て最も重要な選択基準は、移管の自由が確保されていること、つまり「いつでも出ていける状態」であることなのかもしれない。ICANNの仕組み上、60日の制限期間を除けば、ドメインはレジストラ間で移管できるように設計されている。この自由を妨げないレジストラを選ぶこと。それが、変化の速いこの世界で自分のドメインを守る、最も確実な方法だと思う。

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