Godox現行スタジオストロボ製品ラインナップ総まとめ
Godoxは様々なラインナップを展開していますが、一方で商品が多すぎて訳が分かりません。ということで、長い記事になってしまいましたが、主にスタジオで利用されるモノブロックストロボについてまとめてみました!
現行ラインナップ一覧とモデル構成
現在のGodox製スタジオ用ストロボ(AC電源モノブロック)は多彩なシリーズ展開がされています。主なシリーズとその現行モデル(世代)を以下にまとめます:
- DPシリーズ – 大光量のプロ向けモデル。最新の第III世代(DPIII)として DP400III / DP600III / DP800III / DP1000III があり、従来のハロゲンランプ仕様に加えてLEDモデリングランプ版の DPIII-V シリーズ(例:DP400III-V)も展開されています 。
- QTシリーズ – 高速発光が特徴のハイエンドモデル。第II世代(QTII)と最新の第III世代(QTIII)があり、代表モデルは QT400II/III, QT600II/III, QT1200II/III です 。※現在は主にQTIIIシリーズ(III世代)が中心です。
- QSシリーズ – 中~大型出力のスタンダードモデル。現行は第II世代(QSII)の QS400II / QS600II / QS800II / QS1200II です 。
- GSシリーズ – QSと似たスペックを持つ廉価版シリーズ。第II世代(GSII)として GS200II / GS300II / GS400II がラインナップされています 。
- SGシリーズ – 400Wsクラスのみのシリーズで、SG400II-V が現行モデルです 。GSシリーズのLEDモデリングランプ搭載版とも言える位置付けです。
- SKシリーズ – エントリー向けの定番モデル。第II世代(SKII)の SK300II / SK400II に加え、近年モデリングランプをLED化した SKII-V 系の SK300II-V / SK400II-V があります 。
- DSシリーズ – コンパクト&軽量ボディのスタジオストロボ。第II世代(DSII)として DS300II / DS400II が展開されています 。
- MSシリーズ – 小型エントリーモデル。MS200 / MS300 が基本モデルで、LEDモデリングランプ搭載の新モデル MS200-V / MS300-V(MS Vシリーズ)も登場しています 。
- Eシリーズ – 最もシンプルな入門モデル。E250 / E300 が現行製品として残っています (内蔵ワイヤレス非対応の旧型シリーズ)。
以上が公式サイト等で確認できる現行ラインナップの全シリーズです。それぞれ出力や世代が異なり、「III」「II」「-V」といった表記は世代またはモデリングランプ種別(V=LEDタイプ)を示します。
各シリーズの基本性能と特徴
続いて、各シリーズのスペック上の特徴(出力性能や発光特性、対応機能など)を整理します。
DPシリーズ(DPIII / DPIII-V)
概要:DPシリーズは最大1000Wsまでの大光量モデルで、スタジオの主光源や大規模撮影向けのプロ仕様ワークホースです。現行は第III世代で、内蔵2.4GHz受信機を搭載しXシステム対応となりました 。DPIII-VはモデリングランプをLED化した派生版です。
基本性能:例えば中核モデルDP600III(600Wsの場合)で見ると、リサイクルタイム0.1~1.0秒(フル発光でも約1秒以内)、発光時間1/800~1/2000秒、色温度は5600K±200Kと安定しています 。出力調整幅は1/64~1/1(6ストップ) と広く、第III世代では旧世代(最小1/16)よりきめ細かな低出力制御が可能です 。モデリングランプは従来型では150Wハロゲン球ですが、-V
モデルでは30WのLEDに変更され省電力・長寿命化しています 。TTL自動調光や高速同期(HSS)には非対応ですが、光学スレーブやシンクロ端子による一般的な同調発光は可能です。
特徴:大光量ゆえ大きなソフトボックスやアンブレラを使った商品・ファッション撮影にも余裕で対応でき、複数灯を使う大型スタジオでも主力になりえるシリーズです。その反面、最小出力でも光量が大きめなので、小物撮影や開放絞りポートレートでは光量オーバーになりやすい点に注意が必要です(旧DPシリーズは最小1/16と出力をあまり絞れず、「f/5.6~11程度の撮影に向くワークホース」という位置付けでした )。第III世代では改善しましたが、それでもエントリーモデルほどは落とせません。基本的にTTL自動発光などは不要で、大光量と信頼性を重視するプロ/ハイアマ向けと言えます。
QTシリーズ(QTII / QTIII)
概要:QTシリーズは高速リサイクル・短発光持続時間を売りにしたハイスピードストロボです。AC駆動ながらIGBT制御(フラッシュの発光をデジタル制御)を採用しており、GodoxのADシリーズ(バッテリーストロボ)に匹敵するスピード性能と機能性を備えます 。最新の第III世代ではモデリングランプも40W LEDに強化されました 。出力ラインナップは400Wsから1200Wsまで。
基本性能:QTIIIシリーズの性能は際立っており、リサイクルタイムは最速0.01秒、フル発光でも約0.9~1.2秒と極めて高速です 。発光時間(閃光時間)も短く、例えばQT600IIIでは最短1/26,100秒(t=0.1) という驚異的な短さです 。出力調整範囲も1/256~1/1(8ストップ) と非常に広く、HSSモード時は1/32まで、ストロボ発光のマルチモード時は1/4~1/256まで対応します 。色温度は通常モードで5600K±200Kの安定度ですが、高速モードでは発光時間短縮の影響でやや色温度が変動します (安定モード時は±200K以内に制御可能 )。高速同期(HSS)対応で1/8000秒までのシャッターで同調可能、また後幕シンクロやマスク機能(複数発光の順番制御)など高度な機能も備えています 。TTL自動調光については、初期にはTTL対応版も存在しましたが現行品はHSSのみ対応でTTL版は事実上流通していません 。
特徴:「スピードリーダー(Speed Leader)」の異名をとる通り、瞬間発光性能に優れ 、動体の瞬間凍結撮影や高速連写に向くシリーズです。例えば水しぶきやダンサーの動きなどもQTIIIなら1万分の1秒単位で止められます。またHSS対応により屋外で絞り開放+高速シャッターで背景光を調節するといった撮影も可能です。こうした高度機能を持つ反面、価格は他シリーズより高めで、本格的なプロユースやハイスピード撮影ニーズに応える上級者向けです 。QSシリーズと比べると後述の通り発光方式自体が異なり、QTはIGBT式ならではの高速性・拡張機能を備えたQSシリーズの上位互換的モデルと言えます 。
QSシリーズ(QSII)
概要:QSシリーズは安定した出力と信頼性を重視した中~高出力モデルです。ラインナップは400Ws~1200Wsで、QTのような高速発光機能はありませんが、その分価格を抑えつつ堅牢な性能を提供します。Godox自身「最も信頼できるシリーズ」と位置付けているモデルでもあります 。
基本性能:発光制御は電圧調整式(アナログ方式)で完全マニュアル発光のみです 。TTLやHSSには対応せず、発光時間もQTほど短くはありません(「ごく普通のストロボ発光」と表現されます)。リサイクルタイムは約0.3~1.5秒(フル発光時)とまずまず高速で 、発光持続時間も中程度の長さです。出力レンジはシリーズ全般で1/32~1/1程度(5ストップ前後) と考えられ、後述するSKよりは広い傾向です。すべてのモデルで150W調光式モデリングランプ、光学スレーブ(S1/S2モード)、6.35mmシンクロ端子を搭載。QSIIはGodox 2.4GHzワイヤレス(Xシステム)受信機を内蔵しており、XT16やXPro送信機での遠隔操作・発光に対応しています 。
特徴:QTシリーズほどの高速性能は不要だが大出力で安定したストロボを求めるユーザーに適したシリーズです。メーカーからも「信頼性重視」 と謳われており 、長時間の連続撮影や日常の商業撮影で堅実に使える作りになっています。4機種(400Ws~1200Ws)ありますが基本性能に大差はなく、必要な出力に合わせて選べます。プロのポートレート撮影や商品撮影などで、安定した色温度・出力とそこそこのリサイクル速度が求められる場面にマッチします。高速同期やTTLが不要であれば、QTよりコストパフォーマンスの良い実用本位の中~大型ストロボと言えるでしょう。
GSシリーズ(GSII)
概要:GSシリーズはQSシリーズの廉価版的位置付けのモデルです。200Ws~400Wsのラインナップで中低クラスの出力帯をカバーし、価格を抑えつつ基本性能を提供します。現行は第II世代でXシステム内蔵。
基本性能:スペック上はQSIIシリーズと非常によく似ており、発光仕様(マニュアルのみ、非HSS/TTL)、リサイクルタイムや色温度安定度なども同等レベルです 。実際、スペック上の違いは重量くらいとも言われ 、つまり筐体の造り(筐体素材や内部構造)が簡素化され軽量化・低コスト化されていることが伺えます。各モデルとも150Wモデリングランプ搭載、Xシステム受信機内蔵でワイヤレス発光可能です。
特徴:QSと比べ価格重視のスタジオストロボで、趣味の個人スタジオや予算の限られた小規模撮影に向きます。性能自体は同クラスのQSモデルに近いため、実質的に「安価なQSシリーズ」 と考えて差し支えありません 。ただしGodoxでは地域によってGSシリーズをあまり展開しておらず、米国などでは既にGSシリーズがディスコン(販売終了)扱いとの情報もあります 。現在は後述のSKやMSシリーズにその役割を引き継ぎつつあるようです。
SGシリーズ(SG400II-V)
概要:SGシリーズはSG400II-V単一モデルのみのシリーズで、GS400IIをベースにモデリングランプをLED化した新派生モデルと考えられます。現状400Wsモデル1機種ですが、商品キットとして各国で販売が確認されています 。
基本性能:基本の出力・リサイクルタイムなどはGS400IIと同様で、400Ws・最大ガイドナンバーGN~65程度、リサイクル約1秒台、出力調整1/32~1/1程度と思われます。大きな違いはモデリングランプが10W COBタイプLEDになっている点です(150W石英ハロゲンからの置き換え)。これにより発熱や消費電力を抑えつつ、発光色温度もフラッシュと近似した5700K前後で一定に保たれます 。Xシステム2.4GHzレシーバーを内蔵しワイヤレス発光対応、他の基本機能もGSシリーズに準じます。
特徴:実質的には「LEDモデリング版GS400II」 と言えるモデルで、GSシリーズユーザーからは待望のLED化アップデートでした。型番がGSではなく“SG”となっているのは、従来GSシリーズとは別ライン扱いにすることで並行販売するためと思われます。性能・用途面ではGS400IIと同じく汎用的な400Wsストロボですが、LEDモデリングにより動画撮影などでも補助光として運用しやすいメリットがあります(発光色が安定し長寿命なので、モデリングランプ常灯で簡易定常光として使える) 。Godoxのラインナップ整理の過渡期的モデルとも言えますが、400Ws帯のコスパ良好なLEDモデリング搭載ストロボとして注目できます。
SKシリーズ(SKII / SKII-V)
概要:SKシリーズは「安価で必要十分な機能」を提供するエントリーストロボ です。300Wsと400Wsの2モデルがあり、初代発売以来アマチュアから小規模スタジオまで広く普及した定番シリーズとなっています。現行第II世代は2.4GHzワイヤレスを内蔵し、さらに最近「-V」版ではモデリングランプがLED化されました。
基本性能:最大出力400Ws、最小出力は1/16(4ストップ範囲) と、出力調整幅は必要最低限です 。リサイクルタイムは約0.4~1.5秒程度(※SK400IIの場合)で、発光時間も1/800秒前後と標準的 。TTLやHSSには非対応で完全マニュアル発光のみ、旧式らしく出力を下げた際の自動放電(オートダンプ)機能もありません (パワーを下げたら手動で一度テスト発光する必要があります)。ただし内蔵レシーバーによりGodox X2TやXPro送信機からの無線発光制御が可能で、エントリー機ながら基本的な遠隔操作はカバーしています 。モデリングランプは従来150Wのハロゲン球ですが、SKII-Vでは10W高輝度LEDに変更され省エネになりました 。
特徴:価格の安さとシンプルさが最大の魅力で、300Wsモデルは約1万円台、400Wsでも2万円前後と非常に手頃です 。必要最低限の機能と十分な光量を備えており、スタジオ照明入門者が最初に導入するのに適したシリーズです 。ポートレートや物撮りの基本ライティングに対応でき、軽度の使用なら耐久性も問題ありません。ただしプロ用途で酷使するには放熱や調光精度の点で不安が残るため、「とりあえずストロボを使ってみたい」層向けと言えるでしょう 。DPシリーズとの違いとして最小出力が大きめ(1/16止まり) なので、小物撮影などでは光量過多になることがあります 。より細かな調光や高速発光が必要になれば上位シリーズへのステップアップが推奨されます。
DSシリーズ(DSII)
概要:DSシリーズは小型軽量ボディが特徴のスタジオストロボです(製品名にGeminiの名が付くこともあります)。300Wsと400Wsの2モデルがあり、性能的にはSKシリーズに近いですが、よりコンパクトな筐体と若干広い調光範囲を持ちます。
基本性能:最大出力は400Ws、出力調整は1/32~1/1(5ストップ) とSKより下げられ 、小物撮影時にも光量を抑えやすくなっています。発光時間は短めで1/2000秒程度(最小出力時)~1/800秒程度(最大出力時)と表記され、リサイクルタイムも0.1~1.5秒程度と軽快です 。TTL/HSS非対応の手動ストロボで、内蔵無線レシーバーも搭載せず(旧式のため) 、ワイヤレスで使うにはオプションのFT-16/XT16送信機+FTR16受信器で電波制御する必要があります 。150Wモデリングランプ搭載、光学スレーブS1/S2モードやブザー音といった基本機能は備えています。
特徴:本体が非常に軽量コンパクトで、ブームに取り付けたり持ち運びの多い現場でサブのストロボ(トップライトやバックライト用途) として重宝します 。Godox公式でも 「小型軽量で、商品撮影・ポートレート・ライフスタイル写真に適し、大規模スタジオではハイライトや背景光用に使える」 とうたわれています 。SKシリーズより筐体が小さい分、連続発光時の放熱や耐久性は若干劣る可能性がありますが、ライトユースでは問題ないレベルです。難点は内蔵レシーバーが旧式(433MHz帯)で現行Xシステム送信機との直接互換がない点ですが、XT16送信機(2.4GHz)と組み合わせる「-D」キットも提供されており、実質的には無線同期も可能です 。総じて 「もう少し小さく扱いやすいSKシリーズ」 といったポジションで、初心者から中級者まで用途に応じて選ばれています。
MSシリーズ(MS / MS-V)
概要:MSシリーズはエントリークラス最小サイズのモノブロックストロボです。200Wsと300Wsモデルがあり、価格対性能に優れると評判です。初代MS200/300はハロゲンモデリングランプでしたが、最新のMS-Vシリーズ(MS200V/300V)ではLEDモデリングランプ搭載にアップデートされています。
基本性能:300WsのMS300(初代モデル)の場合、リサイクルタイム0.1~1.8秒、発光時間は最短1/2000秒、出力は1/32~1/1(5ストップ) の範囲で0.1刻みで調整可能です 。150Wモデリングランプは5~100%の連続調光式 。小型ながら冷却ファン内蔵でオーバーヒートを防ぎ、背面にデジタル表示パネルを備えて操作も直感的です 。Godox X 2.4GHz無線受信機を内蔵しており、XProやX2T送信機からの電波制御で発光や出力調整が行えます 。MS-Vシリーズではモデリングが10W程度のLEDライトに変更され、明るさ1~100%調整可能な点以外は基本仕様は同じです 。TTLおよびHSSには非対応です。
特徴:驚くほど低価格ながら必要十分な性能を持つことで人気のシリーズです。実際「市場で見かける最良の低予算ライトの一つ」といった評価もあり 、1台1万円台後半程度で購入できる300Wsストロボとしてコストパフォーマンスは抜群です。サイズも非常にコンパクトで重量約2.6kg(MS300、スタンド含まず)と軽量なため、家庭用の簡易スタジオや持ち運び撮影にも向いています 。SKシリーズ比で出力レンジが広く(5ストップ)、内蔵レシーバーも最新式、発光部も安定していることから、実質的にエントリー機の中では最もバランスが良いモデルと言えます。MS-VではLEDモデリングライトがより明るくなり動画撮影の補助にも使いやすくなりました 。初心者の入門から上級者のサブ機まで、「安いが侮れない」万能選手です。
Eシリーズ(E250/E300)
概要:Eシリーズは古くからあるエントリー向けストロボで、現在も250Wsと300Wsのモデルが販売されています。シンプルなダイヤル操作式で、他シリーズのようなデジタル表示や内蔵無線はありません 。「ThinkLite Mini」などとも呼ばれることがあります。
基本性能:出力は250Wsまたは300Ws固定の単一モデルごとで、調光範囲は広くなく1/16~1/1程度と推測されます(公称スペックは簡略化されあまり公開されていません)。モデリングランプ150W、光学スレーブ搭載、シンクロ端子あり。無線制御には対応しておらず、外部受信機(FT-16受信機など)を装着するポートも持ちません 。そのためGodox Xシステムとの直接連携はできず、使う場合はシンクロコードや光スレーブ頼りになります。
特徴:他のシリーズが次々と刷新される中でE250/E300が残っているのは、極限までコストを抑えたエントリーモデルとして需要があるためでしょう。性能的には一世代以上前の設計ですが、その分価格は最安です。とにかく初期費用を抑えてストロボ環境を整えたい初心者には選択肢となりえますが、同じ入門でも無線機能や安定性に優れるSK/MSシリーズの存在を考えると、特殊な事情(例えば既存の有線シンクロ設備で使う等)がない限り優先度は低いかもしれません。
各シリーズのターゲット層と主な用途
以上を踏まえ、各シリーズごとに想定されるユーザー層と適した撮影用途をまとめます。
- QTシリーズ(ハイエンド高速タイプ):動き物撮影やハイスピード撮影をするプロ写真家、ハイアマチュアが主なターゲット。ファッション撮影やスポーツ、ダンスの瞬間描写、液体スプラッシュ撮影など動的ポートレート・商業撮影で威力を発揮します。高速シンクロを活かして日中シンクロのポートレート撮影なども可能です。性能重視のため価格は高めですが、「AC電源版ADシリーズ」的な位置付けで最も要求の厳しいユーザー向けです 。
- DPシリーズ(大光量プロユースタイプ):大規模スタジオやレンタルスタジオ運営者、広告・商品写真のプロフォトグラファーが主な対象です。カメラの低ISO・高F値での撮影(例えばISO100・f/11など)や、大きなソフトボックスを使った大型商品撮影、グループポートレート撮影などで求められる強力な光量を供給できます。安定した色温度と繰り返し発光性能から長時間の連続撮影にも向きます。初心者にはオーバースペックですが、プロの現場で主光として終日酷使できる信頼性重視のモデルです。
- QSシリーズ(安定志向の中~大出力タイプ):ポートレート写真館や商品撮影を行うセミプロ・プロ、あるいは機材投資を抑えたい上級アマチュアがメインターゲットです。QTほどの特殊機能は不要だが出力には余裕が欲しい場合に選ばれ、ファミリーポートレート、ウェディング撮影、ネット通販商品の撮影など幅広いシーンで使われます。高出力モデル(QS1200II)は比較的安価な1200Wsとしてコスパが高く、大きなスタジオを構えるプロからも支持されています(「信頼性が高く壊れにくいシリーズ」とされる通り、日常業務に耐えるタフさが評価ポイントです )。
- GSシリーズ(廉価スタンダードタイプ):低予算でストロボ環境を構築したいアマチュアや小規模事業者向けです。性能バランスはQSに近いので、ポートレートから簡易商品撮影まで一通り対応可能なオールマイティ機として使えます。特に400WsのGS400IIは価格の割にパワーがあり、小さなスタジオでの人物撮影などに丁度良いでしょう。耐久性はQSに一歩譲る可能性がありますが、趣味の範囲やライトユースの商用撮影には十分です。後継のSG400II-Vでは動画撮影用途にも配慮され、予算を抑えつつLED定常光的な運用もしたいユーザーに適しています。
- SKシリーズ(エントリー定番タイプ):これからスタジオライティングを始める写真愛好家や副業カメラマン、学生など、ライトユーザー層全般がターゲットです。価格の安さからとりあえず導入する一台目に選ばれることが多く、人物ポートレートの練習から小物ブツ撮り、コスプレ撮影、簡易動画ライティングまで幅広く“入門編”として使われています。主な使用シーンは個人のポートレート撮影、商品ブツ撮り(小~中型物) など。プロ使用には耐えにくいですが、 「まずストロボで撮影してみたい」初心者のお試し用 や、上級者のサブライト・バックグラウンドライトなど割り切った用途にも適します 。
- DSシリーズ(小型ライトウェイトタイプ):軽さと小ささを活かし、ロケ撮影や狭い室内での設置を必要とするユーザーや、大型ライトの補助光を求めるプロ/アマが対象です。商品撮影ではテーブルフォトのトップライトや背景用のカラー照明として活躍します 。人物撮影でも、フラグやブームに載せて髪の毛を照らすリムライトやスポット的なハイライトに使うなど、サブライト用途に向いています 。また外部電源(バッテリーインバーター等)と組み合わせて屋外ポートレートに使われることもあります。小型で持ち運びやすいため、出張撮影の機材量を減らしたい中上級者にも好まれます。
- MSシリーズ(超小型エントリータイプ):こちらも初心者~中級者が主な対象ですが、特に自宅や小さなスペースで撮影を楽しみたい層にフィットします。サイズが小さいため室内での取り回しが良く、ライトスタンドを立てにくい狭い部屋でも扱いやすいです。撮影シーンとしてはハンドメイド作品や小物の商品撮影、子供やペットのポートレート撮影、趣味のコスプレ撮影など幅広く、必要なら複数台揃えても予算内に収まりやすいため多灯ライティングの練習にも向いています。またLEDモデリング付きのMS-Vは簡易的な定常光源としてYouTube等の動画撮影の照明に流用することもできます(ただし出力10W程度なので補助的ですが )。総じて 「安価だが本格機能搭載」のMSシリーズは学生やアマチュアからプロのサブまで幅広い支持 を得ています。
- Eシリーズ(シンプル入門タイプ):写真サークルの備品や学校教材、最低限の機能でよい初心者が対象です。シンクロ発光さえできれば良い場合に選ばれ、使い捨て感覚で導入されることもあります。典型的な使用シーンは学園祭やイベントでの簡易フォトブース、あるいは古いフィルムカメラでのシンクロ撮影などですが、昨今は同価格帯でSK/MSが買えてしまうため、特殊な理由がなければ選択肢に入ることは少なくなっています。
シリーズ間の比較まとめ
最後に、主要シリーズ間の相違点や位置付けの違いをいくつかピックアップして比較します。
- DPシリーズ vs SKシリーズ:いずれも廉価TTL非対応の手動ストロボですが、最大出力と最小出力のレンジに大きな差があります。DP IIIでは1/64まで絞れるのに対し、SK IIは1/16までしか絞れません 。これによりDPは大光量ながら小出力運用もある程度可能ですが、SKは小物撮影でオーバーになりがちです。その代わりSKは本体・価格とも小さく、DPはプロ向け大型、SKは初心者向け小型と明確に棲み分けられています。また筐体の堅牢性・放熱設計もDPの方が優れており、連続発光耐性や長時間稼働の信頼性に差があります。
- QTシリーズ vs QSシリーズ:両者は同じクラスの出力帯を持ちますが、発光制御方式と機能が大きく異なります。QTはIGBT制御によるデジタルカットオフ発光で、HSS対応・短発光時間・高速リサイクル・ファームウェア更新やマスク機能対応など最新機能を備えています 。一方QSは電圧制御のオーソドックスなストロボで、TTL/HSS非対応・発光時間長め・リサイクルも標準的 。つまりQTはQSの上位互換モデルであり、QSは高速機能を省いて信頼性と低価格を重視したモデルと言えます。予算に余裕があり高度な撮影をするならQT、そうでなければQSという選び分けになります。
- QSシリーズ vs GSシリーズ:性能スペックはほぼ共通で、違いはビルドクオリティ(筐体設計)と価格です 。GSは軽量=コストダウン版のQSと位置付けられ、出力やリサイクルは同等ながら、耐久性や連続使用時の発熱耐性でQSが勝ります。しかし実用上は大差なく、重さ・値段以外ほぼ同じため、購入時は価格と入手性で決めても問題ないでしょう 。現在はGSシリーズが縮小傾向にあり、将来的にはQSに統合されていく可能性があります。
- SKシリーズ vs MSシリーズ:どちらもエントリー向けですが、MSシリーズの方が新しく改良されたポイントが多いです。具体的には出力レンジがSKの4ストップからMSは5ストップに拡大されており 、より低出力での調光が可能になりました。また無線レシーバーもMSは内蔵済みで利便性が高く(SKIIも内蔵こそしていますが旧式モデルでは非内蔵)、モデリングランプもMS-VでLED化されSKII-Vに追随しています。筐体サイズもMSの方が小さく、省スペースです。ただしSKの方が海外での流通歴が長く実績があるため、「より小型高機能なのがMS」「従来からの定番安心感ではSK」といった違いで選ぶ声もあります。総合的にはMSシリーズがSKシリーズの実質的な後継と言えるでしょう。
- DSシリーズ vs 他のエントリー機:DSはSK/MSと同クラスの出力ですが、無線機能が内蔵されていない点で異なります 。これは設計の古さによるもので、現行の他機種(II世代以上およびMS)は全てGodox X無線に対応しているのに対し、DSIIシリーズだけはオプション頼みです 。そのため利便性ではMS/SKに劣ります。しかしDSは本体サイズが小さく軽量という強みがあり、同じ300~400Ws帯で比較すると最もコンパクトです 。したがって据え置き主体ならMS/SK、持ち運び重視ならDSといった差別化になっています。
- TTL対応の有無:現在流通しているGodox製ACスタジオストロボは、基本的にTTL自動調光に非対応です (過去にはQTIIシリーズにTTL版がありましたが現行では入手困難 )。つまり露出はすべて手動調節する必要があります。ただしクリップオンストロボやADシリーズ(バッテリー式モノブロック)にはTTL対応機が多く、必要な場合はそれらを検討する形になります 。HSS(高速同期)はQTシリーズのみ対応で、他のDP/QS/SKなどは対応していません 。このためカメラのシャッタースピードを上げて環境光を抑えるような撮影(ハイスピードシンクロ撮影)をしたい場合は、QTシリーズあるいはバッテリー式のADシリーズを選ぶ必要があります。
以上のように、Godoxのスタジオストロボ各シリーズは性能・機能・価格帯に応じて明確に棲み分けされています。それぞれの強み弱みを理解し、撮影スタイルや予算に合わせて適切なモデルを選ぶことが重要です。
特に注目すべきシリーズ・モデル
最後に、現行ラインナップの中でも特筆すべき特徴を持つシリーズ/モデルを挙げます。
- Godox QTIII シリーズ(QT400III/QT600III/QT1200III) – 「圧倒的な高速発光性能」
前述の通りQTIIIは他を圧倒するスペックを備えています。例えばQT600IIIでは0.01秒からの超高速チャージや1/20,000秒オーダーの発光時間を実現しており 、高速連写や高速被写体撮影で他の追随を許しません。さらに8ストップの広範囲調光や40WLEDモデリングランプなど、現在のスタジオストロボではトップクラスのハイテク機能詰め込みです 。価格は高めですが、それでも競合他社の同等スペック機に比べれば入手しやすく、ハイスピード撮影を志向するフォトグラファーにとっては最もコストパフォーマンスの良い選択肢でしょう。 - Godox MSシリーズ(MS300およびMS300-V) – 「驚異的な価格対性能比」
MSシリーズは発売以来そのコストパフォーマンスの良さで高評価を得ています。300Ws出力・内蔵Wireless X・短いリサイクルタイムといった充実した機能を持ちながら、価格は1台約2万円以下と破格です 。実際ユーザーからも「予算100ドル程度のスタジオライトとしてベスト」といった声があるほどで 、初心者が最初に買う一台としても、上級者が手軽な予備機として揃えるにも適しています。新型のMS300-Vでは6ストップの出力レンジやLEDモデリングランプなどさらなる強化も図られ、もはや廉価機ながら侮れない存在です 。「価格対性能比が優れるMSシリーズ」 という評価は決して大袈裟ではなく、今後もエントリークラスの基準となるモデルでしょう。 - その他の注目ポイント: 上記以外では、DP1000III は単体で1000Wsもの出力を備える貴重なモノブロックで、大型ストロボが必要な現場で重宝します。またSK400II-VやSG400II-VなどLEDモデリングランプ搭載モデルは、昨今の動画撮影需要も睨んだアップデートとして注目できます。とくにSG400II-VはGodoxが廉価機にもLED化を広げている兆候であり、今後他のシリーズ(例えばQSシリーズ等)にも波及する可能性があります。いずれにせよ、Godoxのラインナップは常に進化を続けており、用途に応じた最適な一台を選べる選択肢が年々拡充されている点はユーザーにとって嬉しい限りです。