大学に入学してからやるべき最も重要なこと
卒業要件を、自分の言葉で書き出せ。
学内のシステムにログインするためのIDとパスワードを手に入れた。入学式も終わった。サークルの勧誘を受けた。新しい街にも少し慣れた。さて、次に何をすべきか。
答えはひとつだ。卒業するために何が必要かを、正確に把握しろ。
なぜ卒業要件なのか
大学生活には自由がある。高校までのように、時間割が決められているわけではない。何を学ぶか、どの授業を取るか、どう時間を使うかは、基本的に自分で決める。
この自由は、裏返せば「誰も教えてくれない」ということだ。
卒業要件は、大学のWebサイトや学生便覧に書いてある。書いてある。しかし、読んで正確に理解している学生は驚くほど少ない。必修科目の一覧は確認しても、選択必修の条件、自由選択の上限、進級要件、卒業論文の位置づけまで把握している1年生は、ほとんどいない。
そして3年生になってから、「この科目を取っていなかった」「この区分の単位が足りない」と気づく。これは珍しい話ではない。毎年、全国の大学で起きている。
「読んだ」と「理解した」は違う
卒業要件のページを開いて、目を通す。これは「読んだ」ことにはなるが、「理解した」ことにはならない。
なぜか。卒業要件は、複数の条件が組み合わさった構造をしているからだ。
必修科目は何単位。選択必修はこの群からいくつ、あの群からいくつ。自由選択は何単位まで。教職課程の単位は卒業要件に含まれるのか。他学部の科目は何単位まで算入できるのか。再履修の場合、以前の成績はどう扱われるのか。
これらの条件が個別にはシンプルでも、組み合わさると複雑になる。頭の中だけで把握しようとすると、必ず抜け漏れが出る。
だから、書き出す。
書き出し方
紙でもスプレッドシートでも、何でもいい。やることは単純だ。
まず、卒業に必要な総単位数を書く。次に、必修科目の一覧とその単位数を書く。選択必修の区分ごとに、必要な単位数と選択可能な科目を書く。自由選択の枠を書く。進級要件があれば、それも書く。
書き出してみると、見えてくるものがある。「自由に選べる枠は、思ったより少ない」。この発見は早ければ早いほどいい。自由選択の枠が少ないことを知っていれば、その枠をどう使うかを戦略的に考えられる。大学生は履修上限を超える意味がないことを知っていれば、限られた枠の中で最大の効果を狙える。
判定プログラムという発想
プログラミングができるなら、もう一歩踏み込める。
卒業要件を条件式として書き下し、現在の取得単位を入力すれば、あと何が必要かを自動で判定するプログラムを作ることができる。スプレッドシートの関数でも十分だ。取得済みの科目を入力していけば、区分ごとの充足状況がリアルタイムで見える。
大げさに聞こえるかもしれないが、要件の構造を条件分岐として書き下す行為そのものが、要件の理解を深める。「この科目は必修だが、あの科目で代替できる」、「この区分はあと2単位で充足する」。こうした条件を明示的に書くことで、曖昧な理解が正確な理解に変わる。
プログラミングができなくても、チェックリストを作るだけで効果はある。要件のすべての条件を箇条書きにして、各条件の横に「充足/未充足」を書いていく。学期ごとに更新する。これだけで、4年間の見通しは格段に良くなる。
早くやるほど効く
卒業要件の把握が重要なのは、早い段階でやるほど選択肢が広がるからだ。
1年生の時点で全体像を掴んでいれば、2年生以降の履修計画を戦略的に立てられる。大学で成績を分析しろ、それも徹底的にで書いたように、自分の得意分野を偏差値で把握し、得意な科目でGPAを確保しつつ、大学生は下手に履修するより聴講をしろで書いた聴講で興味の幅を広げる。こうした戦略は、全体像が見えていなければ立てようがない。
3年生になってから慌てて確認するのと、1年生のうちに把握しておくのでは、同じ行為でも意味がまるで違う。前者はリカバリーであり、後者は設計だ。
学務課を頼れ
卒業要件について不明な点があれば、学務課(教務課)に聞くことをためらわないでほしい。
学務課は事務手続きの窓口であると同時に、履修に関する相談窓口でもある。「この科目はこの区分に算入されるか」、「留学中の単位はどう扱われるか」といった個別の疑問に、正確な回答を得られる。
自分の解釈だけで判断して、後から「実は違った」と気づくのは最悪のパターンだ。疑問があれば確認する。確認した結果を記録しておく。この習慣が、4年後の自分を助ける。
まとめ
大学に入学してからやるべき最も重要なことは、卒業要件を正確に把握し、自分の言葉で書き出すことだ。
読むだけでは足りない。書き出して、条件を整理して、全体像を掴む。できるなら判定の仕組みを作る。そして不明点は学務課に確認する。
これは地味な作業だ。華やかさはない。しかし、この作業を入学直後にやるかやらないかで、残りの4年間の自由度は大きく変わる。
自由は、構造を把握した人間だけが使いこなせる。