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光と写真

写真のしくみ ㉛ 白飛びを救うHDRとトーンマッピング

💡シリーズ「写真のしくみ」について 光はまっすぐ進み、レンズは世界をひっくり返す。写真と映像にひそむ小さな「なぜ?」を、数式なしで解き明かす全40回。 窓の外は真っ白、部屋の中は真っ暗 教室で友だちの写真を撮ろうとしたこと、ありますか。 友だちの顔がきれいに写るように明るさを合わせると、窓の外が真っ白にぶっ飛ぶ。逆に、窓の外の景色をきれいに撮ろうとすると、友だちが真っ暗なシルエットになる。目で見ると、友だちの顔も窓の外もどっちもちゃんと見えているのに、カメラで撮るとどちらかが犠牲になる。なんでこうなるのでしょう。 答えは、カメラの「目」は、人間の目ほど明暗の差に対応できないから。 カメラが一度に記録できる「いちばん暗いところ」から「いちばん明るいところ」までの幅には限界があります。この幅のことを、写真の世界ではダイナミックレンジと呼びます。そして今回の主役、HDRは、このダイナミックレンジの限界を乗りこえるための知恵です。 ダイナミックレンジは「バケツの大きさ」 ダイナミックレンジをたとえるなら、バケツの大きさです。 小さなバケツでは、少し水を入れただけであふれて

By Sakashita Yasunobu

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写真のしくみ ⑱ 影でわかるやわらかい光とかたい光

💡シリーズ「写真のしくみ」について 光はまっすぐ進み、レンズは世界をひっくり返す。写真と映像にひそむ小さな「なぜ?」を、数式なしで解き明かす全40回。 影がくっきりする日もあれば、ぼんやり消えてしまう日もある。同じ自分なのに、どうして影がこんなに変わるのでしょう。その答えは、光の「かたさ」にあります。今回は影を手がかりにして、写真撮影でとても大切な概念、「やわらかい光」と「かたい光」のちがいとその正体に迫ります。 きみの影で遊んでみよう 晴れた日の昼休み、校庭に立ってみてください。足元を見ると、くっきりとした自分の影がうつっています。輪郭がはっきりしていて、指を広げれば指のかたちまで影にちゃんと見えます。 では、曇りの日はどうでしょう。同じ場所に立っても、影はぼんやり薄くて、よく見ないとどこにあるかわからないくらいです。 同じ「自分」なのに、影がこんなにちがう。この差を生んでいるのは、光のかたさです。今回は、影を手がかりにして、光の正体にせまっていきましょう。 かたい光 晴れた日の太陽が照らす光を、写真の世界ではかたい光(ハードライト)と呼びます。 かたい光がつく

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写真のしくみ ㉓ 光を電気に変えるイメージセンサーと画素のはたらき

💡シリーズ「写真のしくみ」について 光はまっすぐ進み、レンズは世界をひっくり返す。写真と映像にひそむ小さな「なぜ?」を、数式なしで解き明かす全40回。 フィルムが化学の力で光を記録するなら、デジタルカメラは何の力で光をとらえているのでしょう。答えは「電気」です。今回は、光を電気信号に変換するイメージセンサーのしくみから、画素数とセンサーサイズが画質に与える影響、アナログの光がデジタルデータに姿を変える瞬間まで、一気にたどっていきます。 デジタルカメラの心臓部、イメージセンサー デジタルカメラの中をのぞいたことはありますか? ミラーレスカメラならレンズを外すだけで、奥にキラリと光る小さな四角い板が見えます。一眼レフカメラなら、ミラーを跳ね上げたその先にあります。この小さな板がイメージセンサーです。 フィルムカメラの時代、まったく同じ場所にフィルムがありました。フィルムは光を受けて化学変化を起こし、像を記録していました。イメージセンサーはフィルムと同じ場所に座り、同じ「光を記録する」という仕事をしています。ただし、やり方がまるで違います。フィルムが「化学」の力で像をとらえるのに

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写真のしくみ ㉝ 映画がなめらかに動く秘密はモーションブラーと180度ルールにあった

💡シリーズ「写真のしくみ」について 光はまっすぐ進み、レンズは世界をひっくり返す。写真と映像にひそむ小さな「なぜ?」を、数式なしで解き明かす全40回。 映画を見ているとき、動きは自然でなめらかに感じられます。でも一時停止してみると、動いている部分がぼんやりとブレていることに気づきます。このブレは、失敗でもノイズでもありません。今回は、映像の「なめらかさ」の正体であるモーションブラーと、その量を決める映画業界の経験則180度ルールのしくみをひも解いていきます。 映画を「一時停止」してみよう きみのお気に入りの映画を再生して、人が走っているシーンで一時停止ボタンを押してみてください。じっくり画面を見ると、走っている人の手足がぼんやりと引き伸ばされたように写っているのがわかるはずです。背景の静かな建物はくっきりしているのに、動いている部分だけがブレている。 このブレのことを モーションブラー(motion blur) といいます。日本語にすると「動きによるブレ」。写真を撮るときにカメラを動かしてしまって写真がブレた、あの「手ブレ」と原理は同じです。シャッターが開いている間に被写体

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写真のしくみ ㉑ 朝日と蛍光灯の色がちがう理由は「色温度」にあった

💡シリーズ「写真のしくみ」について 光はまっすぐ進み、レンズは世界をひっくり返す。写真と映像にひそむ小さな「なぜ?」を、数式なしで解き明かす全40回。 朝、カーテンを開けると、部屋に差し込む太陽の光はうっすらオレンジ色をしています。同じ日の昼間に外に出ると、太陽の光はまぶしいくらいに白い。夜になって部屋の蛍光灯をつけると、今度はなんだか青白い。 同じ「白い光」のはずなのに、色がちがう。いったいどういうことでしょう? この回では、光の色のちがいを「温度」で表す 色温度 という考え方と、カメラがそのちがいにどう対処しているかを見ていきます。 そもそも「白い光」って本当に白いの? 私たちの目はとても賢くできています。白い紙を朝日の下で見ても、蛍光灯の下で見ても、「白い紙だな」と感じる。でも実は、朝日に照らされた白い紙はオレンジがかっているし、蛍光灯の下の白い紙は少し青みがかっています。 ためしに、夕方の部屋で蛍光灯をつけて窓の外を見てみてください。窓の外の夕日に照らされた景色はオレンジ色なのに、部屋の中は青白い。同じ「白い光」が、場所によってまるでちがう色をしています。 人

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写真のしくみ ⑭ ボケの大きさを決める3つの要素とスマホでボケにくい理由

💡シリーズ「写真のしくみ」について 光はまっすぐ進み、レンズは世界をひっくり返す。写真と映像にひそむ小さな「なぜ?」を、数式なしで解き明かす全40回。 背景がとろけるように美しくぼけた写真を見て、「自分もあんなふうに撮りたい」と思ったことはありませんか。 前回と前々回で、ピントが合うとはどういうことか、そしてボケの正体が「錯乱円」という光の円であることを見てきました。レンズは、ある一つの距離にある被写体をセンサーの上にぴたりと結像させますが、その距離から外れた場所にあるものは「ぼんやりした円」として写ります。 では、このボケを大きくするにはどうすればいいのでしょうか。逆に、小さく抑えるには? 実は、ボケの大きさを左右する要素は、大きく 3つ あります。 * 絞り(F値) * 被写体までの距離 * 焦点距離 この3つをうまく使いこなせれば、写真のボケは思いのままです。一つずつ、順番に見ていきましょう。 要素その1 絞り(F値)が小さいほど、ボケは大きくなる まずは「絞り」のおさらい 絞りとは、レンズの中にある「光の通り道の大きさを変えるしくみ」

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写真のしくみ ⑬ 背景がとろけるボケの正体は「光の円」だった

💡シリーズ「写真のしくみ」について 光はまっすぐ進み、レンズは世界をひっくり返す。写真と映像にひそむ小さな「なぜ?」を、数式なしで解き明かす全40回。 写真を撮ったとき、人物の顔はくっきり写っているのに、その後ろの景色がふわっととろけたようになっていることがあります。あの「ふわっ」の正体、気になったことはありませんか。 あれがボケです。 カメラ好きの人たちが「このレンズ、ボケがきれいだなあ」とうっとり語るあの「ボケ」。実はこれ、光がちょっとしたいたずらをした結果なんです。今回は、ボケがどうやって生まれるのか、その正体を光の「円」から読み解いていきましょう。 ピントが合わない光は「円」になる まず、ピントが合うとはどういうことか、思い出してみましょう。 レンズの仕事は、光を一点に集めることです。遠くの小さな光、たとえば夜の街灯を思い浮かべてみてください。レンズがピントをぴったり合わせると、街灯から来た光はセンサー(フィルムでも同じです)の上で、キュッと小さな一点に集まります。これが「ピントが合っている」状態です。 では、ピントが合っていない場所から来た光はどうなるでしょ

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写真のしくみ ⑧ 圧縮効果の正体は望遠レンズではなく撮影距離だった

💡シリーズ「写真のしくみ」について 光はまっすぐ進み、レンズは世界をひっくり返す。写真と映像にひそむ小さな「なぜ?」を、数式なしで解き明かす全40回。 テレビで野球中継を見たことはありますか。バッターボックスに立つ打者と、マウンドにいるピッチャー。画面の中では、ふたりがすぐそばに並んでいるように見えます。でも実際には、ピッチャーとバッターのあいだは約18.44メートルも離れています。学校の25メートルプールの4分の3くらいの距離です。 なのに、テレビの画面ではほとんど隣どうし。不思議ですよね。 「望遠レンズが空間を圧縮するからだよ」と説明されることがあります。たしかに結果だけ見ればそう見えます。でも、この説明には大事なピースが抜けています。望遠レンズが空間をギュッと押しつぶしているわけではないのです。 じゃあ、なにが起きているのでしょうか。今回はその「なぞ」を解き明かしていきます。 広角と望遠で写真の「感じ」が変わる まず、よく言われる現象を整理しておきましょう。 広角レンズ(たとえば24mmや28mm)で撮ると、手前のものがグッと大きく写り、奥のものはずっと小さく遠

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写真のしくみ ⑩ シャッタースピードと動きの表現

💡シリーズ「写真のしくみ」について 光はまっすぐ進み、レンズは世界をひっくり返す。写真と映像にひそむ小さな「なぜ?」を、数式なしで解き明かす全40回。 写真は「一瞬」を記録します。でも、その「一瞬」の長さは、自分で決められます。1/1000秒の世界では水しぶきが空中に止まり、1秒の世界では車のライトが光の川になる。その秘密を握っているのが、カメラの中にある小さな幕、シャッターです。 シャッターはカメラの「まぶた」 目をぎゅっとつぶって、パッと開けて、またすぐつぶる。ほんの一瞬だけ目を開けたとき、目の前の景色はピタッと止まって見えるはずです。 カメラの中にも、これとそっくりな「まぶた」があります。シャッターと呼ばれる薄い幕です。シャッターボタンを押すと、この幕がサッと開いて光をセンサー(フィルムカメラならフィルム)に届け、設定された時間が経つとパタンと閉じます。この「開いている時間」のことをシャッタースピード(シャッター速度)といいます。 シャッタースピードは「1/1000秒」、「1/60秒」

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偏光フィルターの原理

偏光フィルター(C-PLフィルター)は、写真用アクセサリーのなかで唯一、後処理では再現できない効果をもたらす光学素子だ。NDフィルターの効果はシャッタースピードの変更で、グラデーションNDの効果はHDR合成で代替できる。しかし偏光の選択的除去は、光がセンサーに届く前に行うしかない。 本稿では、偏光板の物理的機構から出発し、PLフィルターとC-PLフィルターの違い、ブリュースター角による反射の偏光、大気散乱光の偏光パターン、植生表面の鏡面反射など、偏光フィルターが写真にもたらす効果とその限界を、電磁気学の言葉で体系的に記述する。 偏光の定義 電磁波としての光で論じたように、光は電場と磁場が互いに直交しながら進行方向にも直交して振動する横波である。電場ベクトルの振動方向が偏光(polarization)だ。 電場の振動が一つの平面内に固定されている場合を直線偏光と呼ぶ。位相が90°ずれた二つの直交する直線偏光を等振幅で重ね合わせると、電場ベクトルの先端が螺旋を描く円偏光が生じる。振幅が異なる場合や、位相差が90°以外の場合には楕円偏光となる。楕円偏光は直線偏光と円偏光を特殊な場合

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生きること

ぼくと石ころ

道ばたの石ころと、ぼく。構成元素も、いずれ塵に還る運命も、たいして変わらない。それでもぼくは「違う」と言い張る。根拠はないのだが。 問いの在り処 道を歩いていて、ふと足元の石ころが目に入る。 灰色で、角が丸くて、誰にも拾われない。雨に濡れても乾いても、そこにある。ぼくが見ていようが見ていまいが、そこにある。 ぼくもそこにいる。心臓が動いていて、呼吸をしていて、何か考えている。石ころにはそれがない。だから、ぼくのほうが上位の存在だ。 ......本当にそうだろうか。 「意識がある」ことが偉いというのは、意識の側の言い分にすぎないかもしれない。石ころはそんな序列に異議を唱えない。異議を唱えないのは、反論できないからではなく、そもそも序列という概念が石ころの存在様式には無関係だからかもしれない。 この記事は、「ぼくと石ころは何が違うのか」という素朴な問いを出発点にして、その「違い」がどこまで本当に成立するのかを、少しずつ剥がしていく試みになる。 同じ原子、違う配置 物理学の言葉で言えば、ぼくも石ころも原子の集まりだ。 石ころはケイ素や酸素、鉄やマグネシウムでできている

By Sakashita Yasunobu

大学

朝鮮戦争と核拡散

💡本稿をお読みになる方へ 朝鮮戦争とその後の核拡散は、朝鮮半島の分断、東アジアの安全保障環境、そして核兵器をめぐる国際秩序に現在も直結する、極めて深刻かつ繊細な問題です。本稿で扱う歴史的事象に関連して犠牲となられたすべての軍人および民間人の方々に対し、その国籍、民族、立場を一切問わず、深い敬意と哀悼の意を表します。また、現在も朝鮮半島の分断や戦争の影響のもとで生活されているすべての方々に対しても、同様の敬意を表します。 筆者の立場と本稿の限界について 筆者は軍事史、東アジア国際関係、核戦略のいずれの専門家でもなく、一学生にすぎません。本稿は、大学の講義で視聴したドキュメンタリー番組(NHK「映像の世紀 バタフライエフェクト」)をもとに執筆した大学レポートを再構成したものであり、学術論文ではありません。限られた情報源に基づく記述であり、朝鮮戦争やその影響の全体像を網羅するものでは到底ありません。より正確で多角的な理解のためには、関係各国の公式記録や専門的な学術文献を参照されることを強くお勧めします。 政治的中立性について 本稿は、いかなる国家、政治体制、民族、イデオロギーをも支持、

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