雨の中、歩くべきか走るべきか
傘を忘れた日の永遠の問い、歩くか、走るか、いやいっそ雨宿りをするのか。物理で決着をつける。
モデル
人体を直方体で近似。上面積 $A_{\text{top}}$(頭・肩)、前面積 $A_{\text{front}}$(胸・顔)。雨は鉛直一様(落下速度 $v_r$、数密度 $n$)、距離 $d$ を速度 $v$ で直線移動する。
人体の直方体モデルは、上から見た水平断面が $A_{\text{top}}$、正面から見た鉛直断面が $A_{\text{front}}$ の二面で構成される。移動方向は水平、雨は鉛直に降る。
受ける雨滴数は、上面が $n v_r A_{\text{top}} \cdot d/v$(滞在時間比例)、前面が $n A_{\text{front}} d$(速度非依存)。無次元化 $u = v/v_r$, $\rho = A_{\text{front}}/A_{\text{top}}$ で、
$$ \boxed{\hat{W}(u) = \frac{1}{u} + \rho} $$
$\hat{W}'' = 2u^{-3} > 0$(狭義凸)より恩恵は単調逓減、下限 $\rho$ に漸近。二速度間の削減率 $\Delta_\% = (u_2 - u_1)/[u_2(1 + \rho u_1)]$ は距離にも雨量にも依存しない普遍量。$\rho \approx 2$ で歩行→全力疾走($u: 0.2 \to 1.1$)は約59%削減。
向かい風 $w = v_w/v_r$ を加えると $\hat{W}(u) = (1 + \rho w)/u + \rho$。双曲線構造は不変、向かい風で速度増加の恩恵が拡大する。
雨宿り vs ダッシュ
雨が時間変動 $n(t)$ する場合、時刻 $T$ まで屋根の下で待ち $v_{\max}$ で走ると、移動時間 $\tau = d/v_{\max}$ のスケールで $n$ がほぼ一定なら $W(T) \propto n(T)$。指数減衰 $n = n_0 e^{-\mu t}$ で半減期 $k$ 回分待つと $1 - 2^{-k}$ 削減。半減期1回分(50%削減)が全力疾走(59%)とほぼ等価。
最適制御による一般化
状態 $x$(位置)、制御 $v(t) \in [0, v_{\max}]$、自由終端 $T$ の最適制御問題:
$$ \min_{v(\cdot)} \int_0^T n(t)\bigl[v_r A_{\text{top}} + A_{\text{front}} v(t)\bigr] dt, \quad \dot{x} = v,\; x(0)=0,\; x(T)=d $$
ハミルトニアンが $v$ にアフィン、共役変数 $p = \text{const}$ より、スイッチング関数の符号変化は高々1回。最適戦略はバンバン制御($t^*$ まで停止→全力走行)に限られ、最適出発時刻は
$$ \boxed{\frac{n(t^*)}{n(t^* + d/v_{\max})} = \frac{1 + \rho\,u_{\max}}{\rho\,u_{\max}}} $$
で決まる($\rho=2, u_{\max}=0.6$ で閾値 $\approx 1.83$)。指数減衰では臨界減衰率が閉じた形で得られ、それより速い減衰なら待ち、遅ければ即走る。
不確実性の下で
$W(T) = n(T) \cdot k$ が $n$ に線形なので確実性等価が厳密に成立。$n(t)$ を条件付き期待値 $\mathbb{E}[n(t) \mid \mathcal{F}_0]$ に置き換えて確定的解析をそのまま適用すればよい。$\mathbb{E}[n(T)] \geq n(0)$(マルチンゲール以上)なら待つ期待利得はゼロ以下。情報がなければ走れ。
結論
$$ \boxed{\hat{W}(u) = \frac{1}{u} + \rho} $$
- 一定の雨:走れ。削減率は距離・雨量に依存しない普遍量。
- 弱まる雨+屋根あり:半減期1回分の雨宿り $\approx$ 全力疾走。急速に弱まるなら待て。
- 未来不明:$W$ の線形性から確実性等価成立。弱まる根拠がなければ走れ。