写真のしくみ ⑦ センサーサイズで画角が変わる理由とフルサイズ換算のしくみ

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シリーズ「写真のしくみ」について
光はまっすぐ進み、レンズは世界をひっくり返す。写真と映像にひそむ小さな「なぜ?」を、数式なしで解き明かす全40回。

同じレンズをつけているのに、カメラを変えたら写真に写る範囲が変わった。そんな経験をしたことはありませんか? あるいは、カメラのカタログで「フルサイズ換算○○mm相当」という表記を見て、首をかしげたことはないでしょうか。今回はその正体、センサーサイズと画角の関係を一緒に解き明かしていきましょう。

いきなり実験! 同じレンズなのに写る範囲がちがう?

ちょっと想像してみてください。ここに2台のカメラがあります。1台は「フルサイズ」と呼ばれるカメラ。もう1台は「APS-C」と呼ばれるカメラです。

この2台に、まったく同じレンズをつけます。同じ場所に立って、同じ景色にレンズを向けて、シャッターを切ります。

さあ、撮れた写真を並べてみると……あれ? 写っている範囲がちがう。 フルサイズで撮ったほうが景色を広く写していて、APS-Cで撮ったほうはまるで少しズームしたかのように、狭い範囲だけが大きく写っています。

レンズは同じなのに、いったい何が起きているのでしょう?

その答えは、カメラの中にあるイメージセンサーという部品の大きさのちがいにあります。

カメラの中にある「光のスクリーン」

カメラのレンズは、外の世界の光を集めて、カメラの中に小さな像(ぞう)をつくります。映画館のプロジェクターがスクリーンに映像を映し出すのとよく似ていますね。

では、その像はカメラの中のどこに映るのか。それがイメージセンサーです。デジタルカメラの心臓部ともいえる部品で、光を電気の信号に変えて、写真のデータにしてくれます。フィルムカメラの時代は、ここにフィルムが張られていました。デジタルカメラではフィルムの代わりにこのセンサーが光を受け止めるわけです。

さて、ここからが大事なポイントです。

レンズが映し出す像は、実は丸い形をしています。「イメージサークル」と呼ばれるこの丸い光の像の中から、センサーが四角く切り取って記録します。それが1枚の写真になるのです。

窓から外をのぞくところを想像してみてください。大きな窓なら景色がどーんと広く見えますよね。でも小さな窓だったら? 見える範囲はぐっと狭くなります。

イメージセンサーもこれと同じです。センサーが大きければ、像を広く切り取れます。センサーが小さければ、狭い範囲しか切り取れません。 つまり、同じレンズを使っていても、センサーの大きさが変われば写る範囲も変わるのです。

センサーの大きさくらべ

カメラの世界には、さまざまなサイズのセンサーがあります。代表的なものを大きい順に見ていきましょう。

フルサイズ(36 × 24 mm)

現在もっとも広く「基準」として使われているサイズです。切手よりやや大きいくらいの面積で、プロの写真家や写真愛好家がよく使うカメラに搭載されています。なぜ「フルサイズ」と呼ばれるのかは、あとでくわしく話しますね。

APS-C(約 23.5 × 15.7 mm)

フルサイズよりひと回り小さいセンサーです。入門向けから中級者向けまで、幅広いカメラに使われています。ニコンやソニー、富士フイルムではおよそこのサイズです。キヤノンのAPS-Cはこれよりわずかに小さく、約 22.2 × 14.8 mm です。面積にすると、フルサイズの約40%ほどになります。

マイクロフォーサーズ(17.3 × 13 mm)

OMシステム(旧オリンパス)やパナソニックのミラーレスカメラに採用されているセンサーです。フルサイズと比べると面積はおよそ4分の1。そのぶんカメラ本体やレンズを小型・軽量にしやすいという利点があります。

スマートフォンのセンサー

機種によってまちまちですが、多くのスマートフォンのセンサーはとても小さく、フルサイズと比べると面積で数十分の一ということも珍しくありません。最近は大型化が進んでいますが、それでもマイクロフォーサーズよりずっと小さいものがほとんどです。

こうして並べると、カメラの種類によってセンサーの大きさがずいぶんちがうことがわかりますね。

大きなセンサーと小さなセンサーで何が変わる?

先ほどの「窓のたとえ」をもう少しくわしく考えてみましょう。

レンズが映し出すイメージサークル(丸い像)の大きさは、同じレンズなら同じです。レンズは「カメラのセンサーが大きいから像を大きく映そう」なんて気を利かせてはくれません。いつも同じ大きさの丸い像を、カメラの中に映し出すだけです。

そこにセンサーを置きます。

  • 大きなセンサーは、この丸い像の広い範囲を四角く切り取ります。結果、写真には広い景色が写ります。
  • 小さなセンサーは、同じ丸い像の中央のせまい部分だけを切り取ります。まるで大きな写真の真ん中だけをトリミング(切り抜き)したかのように、写真に写る範囲が狭くなるのです。

写る範囲が狭くなるということは、遠くのものが相対的に大きく写るということでもあります。だから小さなセンサーのカメラで撮ると、ちょっとズームしたような写真になるわけです。

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やってみよう
もしフルサイズとAPS-Cなど、センサーサイズの異なるカメラが2台あれば、同じレンズをつけて同じ場所から同じ被写体を撮り比べてみましょう。APS-Cのほうが被写体を大きく写しているはずです。フルサイズの写真の中央部分だけをトリミングしてみると、APS-Cの写真とほぼ同じ範囲になることも確かめられます。

「フルサイズ換算」という共通のものさし

ここで困ったことが起きます。

「焦点距離50mmのレンズ」と聞いたとき、カメラによってセンサーの大きさがちがうので、写る範囲もバラバラです。これではレンズを選ぶとき、とても不便ですよね。自分のカメラにつけたらどのくらいの画角(写る範囲の広さ)になるのか、パッとわかりません。

そこで生まれたのが、「フルサイズ換算焦点距離」という考え方です。

考え方はとてもシンプルです。「自分のカメラにこのレンズをつけたときの画角は、フルサイズのカメラでは焦点距離何mmのレンズと同じになるか?」を計算して示します。それだけです。

つまりフルサイズを共通のものさしにして、どんなセンサーサイズのカメラでも画角を比較できるようにしたわけですね。

「1.5倍」のひみつ

「フルサイズ換算」の計算は、実はとてもかんたんです。

鍵になるのはクロップファクター(crop factor)という数字です。日本語で「焦点距離倍率」とも呼ばれます。これは、フルサイズセンサーの対角線の長さを、比較したいセンサーの対角線の長さで割った値です。

  • フルサイズの対角線:約 43.3 mm
  • APS-C(ニコン・ソニー)の対角線:約 28.3 mm
  • 43.3 ÷ 28.3 ≒ 1.5

この「1.5」がクロップファクターです。使い方もかんたんで、レンズの焦点距離にクロップファクターをかけるだけです。

  • 35mm × 1.5 = 52.5mm相当
  • 50mm × 1.5 = 75mm相当
  • 85mm × 1.5 = 127.5mm相当

たとえば、APS-C(ニコン)のカメラに35mmのレンズをつけたときの写る範囲は、フルサイズのカメラに約52.5mmのレンズをつけたときとほぼ同じになる、ということです。

主なセンサーのクロップファクターもまとめておきましょう。

  • APS-C(ニコン・ソニー・富士フイルム):約 1.5倍
  • APS-C(キヤノン):約 1.6倍
  • マイクロフォーサーズ:ちょうど 2倍
  • スマートフォン:機種によって幅がありますが、おおよそ 3倍から7倍 程度です

マイクロフォーサーズがちょうど2倍というのは覚えやすいですね。50mmのレンズをつければフルサイズ換算100mm相当。暗算でできます。

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ちょっと気になる人へ
クロップファクターの計算に「対角線」を使うのは、センサーのアスペクト比(縦横の比率)が規格ごとに異なるためです。フルサイズは 3:2、マイクロフォーサーズは 4:3。幅や高さだけで比べると、アスペクト比の違いが結果をゆがめてしまいます。対角線なら、縦横両方の情報をひとつの数字にまとめて公平に比較できるのです。

なぜフルサイズが「基準」になったの?

ところで、「フルサイズ」という呼び方にはどこか偉そうな響きがあります。なぜこのサイズが基準なのでしょう。もっと大きなセンサーや、もっと小さなセンサーを基準にしてもよさそうなものですが。

その答えは、写真の歴史にあります。

時は1910年代。ドイツのエルンスト・ライツ社で働いていた技術者オスカー・バルナックは、あるアイデアを思いつきます。当時、映画の撮影に使われていた幅35mmのフィルムを流用して、小さくて持ち運びやすいスチルカメラ(静止画カメラ)をつくれないだろうか、と。

映画用フィルムは縦方向に送って撮影しますが、バルナックはこれを横方向に送ることで、1コマを 36 × 24 mm の大きさにしました。1914年に試作機(のちに「ウル・ライカ」と呼ばれる)が完成し、1925年にはライプツィヒの見本市で「ライカ I」として正式にお披露目されます。

小型で持ち運びやすく、フィルムも手に入りやすかったこのカメラは大ヒットし、35mmフィルムは写真の世界でもっともポピュラーなフォーマットとして定着しました。

それから約100年。デジタルの時代になっても、この 36 × 24 mm というサイズが「フルサイズ」として受け継がれ、焦点距離を語るときの共通言語の基準であり続けています。

つまりフルサイズは、「性能がいちばん優れているから基準になった」のではなく、「もっとも長く、もっとも多くの人に使われてきたから基準になった」のです。歴史が生んだ共通語、といったところでしょうか。

「小さいセンサーは望遠に強い」って本当?

カメラの話をしていると、「APS-Cは望遠に有利」「マイクロフォーサーズは望遠に強い」という言葉を耳にすることがあります。これはどういう意味でしょうか。

たとえば、200mmの望遠レンズをマイクロフォーサーズのカメラにつけてみましょう。クロップファクターは2倍ですから、フルサイズ換算で400mm相当の画角が得られます。同じレンズなのに、フルサイズのときよりもぐっと狭い範囲を大きく写せるわけです。

遠くの野鳥を撮りたいとき、スポーツ選手の表情にぐっと迫りたいとき。これはたしかに便利です。フルサイズで同じ画角を得ようとしたら、もっと大きく重い(そして高価な)超望遠レンズが必要になりますから。

ただし、ここで大事な注意点があります。

「望遠に強い」というのは、画角が狭くなるから遠くのものが大きく写る、という意味です。レンズそのものの光学的な性能が上がっているわけではありません。センサーが小さいぶん、イメージサークルの中央部分だけを切り取っています。つまりやっていることは、大きなプリントの真ん中だけをハサミで切り抜いているのと同じです。

切り取る範囲が狭くなるということは、センサーが受け止める光の総量も減るということです。暗い場所での撮影や、ノイズ(ざらつき)の少なさでは、面積の大きいフルサイズセンサーに分があります。

また、画素数が同じであれば、大きなセンサーのほうが1つひとつの画素が大きく、より多くの光を受け止められるため、階調(明るいところから暗いところへのなめらかなグラデーション)の再現でも有利になります。

「小さいセンサーは望遠に強い」は、たしかにそのとおりです。ただしそれは「狭く切り取れるから」であって、「何もかも有利」という意味ではありません。 ここを正しく理解しておくと、自分の撮影スタイルに合ったカメラやセンサーサイズを選ぶときに、きっと役に立つはずです。

この回のまとめ

今回は、カメラの世界でよく出てくる「フルサイズ換算」という言葉の正体を解き明かしました。ポイントをふりかえりましょう。

  • レンズがつくる像は同じでも、イメージセンサーの大きさによって写真に写る範囲(画角)が変わります。
  • センサーが大きいほど広く、小さいほど狭く写ります。狭く写るということは、ズームしたように見えるということです。
  • 「フルサイズ換算焦点距離」とは、センサーサイズのちがいを超えて画角を比べるための共通のものさしです。
  • 換算の計算は 「レンズの焦点距離 × クロップファクター」 でかんたんに求められます。
  • クロップファクターは、APS-C(ニコン・ソニー・富士フイルム)で約1.5倍、キヤノンAPS-Cで約1.6倍、マイクロフォーサーズで2倍です。
  • フルサイズ(36 × 24 mm)が基準になったのは、35mmフィルムが約100年にわたって最も広く使われてきた歴史があるからです。
  • 「小さいセンサーは望遠に強い」とは、画角が狭くなるぶん遠くのものを大きく写せるという意味であり、光学性能が向上するわけではありません。

同じレンズでも、カメラのセンサーが変われば、見える世界が変わります。「フルサイズ換算」は、そのちがいを誰にでもわかる数字で橋渡ししてくれる便利な道具です。カメラのカタログやレビューを読むとき、この知識があるだけで、ぐっと理解が深まるはずですよ。

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