書けないのは手ではなく問いが止まっているからだ

レポートが書けない。書き始めても手が止まる。何度書き直しても、まとまらない。その原因を「文章力がないから」と片付けてしまう人が多い。だが、ほとんどの場合、文章力は関係ない。

問題は、書き始める前にある。

「テーマを決める」と「問いを立てる」は違う

多くの学生が混同しているのがここだ。「SNSについて書きます」はテーマであって、問いではない。テーマだけでは、何を書けばいいか決まらない。

「SNSの匿名性は政治参加を促進するか、それとも抑制するか」。これが問いだ。問いが立てば、答えるために何を調べればいいかが見えてくる。構成が浮かぶ。根拠を集める方向が定まる。

レポートの出来は、書き始める前に決まっている。問いの質がレポートの質を決める。

弱い問いと強い問い

弱い問いには共通した特徴がある。範囲が広すぎる、答えが自明、あるいは調べれば一発で分かるものだ。

  • 弱い問い: 「地球温暖化とは何か」
  • 強い問い: 「なぜ地球温暖化の科学的合意にもかかわらず、政策実行が遅れるのか」

弱い問いは、百科事典を要約すれば済んでしまう。強い問いは、複数の視点を検討し、自分なりの答えを構築する必要がある。

良い問いの4つの型

問いが立たないのは、知識が足りないからではない。問いのを知らないからだ。

比較。 AとBの違いは何か。「大正デモクラシーと戦後民主主義の参加構造はどう異なるか」。比較は、対象を並べることで両方の特徴を際立たせる。

因果。 なぜAがBを引き起こすのか。「なぜ読書量の減少が語彙力の低下と相関するのか」。因果は、現象の裏にあるメカニズムを探る。

境界。 Aはどこまで成り立つか。「表現の自由はヘイトスピーチにも適用されるべきか」。境界は、概念の適用範囲を問う。どこで線を引くかが議論の核になる。線はどこにもなかったで書いたように、境界線を引く行為そのものが問いの本質であることも多い。

定義。 そもそもAとは何か。「『教養』とは何を指すのか」。定義は、みんなが使っているが正確には定義されていない概念を掘り下げる。哲学書が読めない理由は難しさではないに書いたとおり、定義の不在こそが議論を混乱させる最大の原因であることが多い。

問いの設計プロセス

実際に問いを立てるときの手順を示す。

  1. テーマを一つ決める(「大学教育」「表現の自由」など)
  2. そのテーマについて自分が感じている違和感や疑問を書き出す
  3. 書き出した疑問を、上の4つの型に当てはめてみる
  4. 最も具体的で、最も答えがいのある問いを選ぶ

この手順は、大学生は下手に履修するより聴講をしろで書いた「学びの主体性」と直結する。与えられたテーマをそのままなぞるのではなく、自分の問いとして引き受ける作業だ。

問いが明確なら構成は自然に決まる

「SNSの匿名性は政治参加を促進するか抑制するか」という問いが立てば、構成は自然に決まる。

  1. SNSの匿名性とは何かを定義する
  2. 政治参加を促進するという立場の根拠を示す
  3. 政治参加を抑制するという立場の根拠を示す
  4. 両者を検討し、自分の見解を示す

問いが曖昧だと、この構成が作れない。「SNSについて」では、何を最初に書き、何を最後に書けばいいかが見えない。だから手が止まる。

教員が見ているのは「問い方」

レポートの採点で、教員が最も注目するのは答えの正確さではない。「どういう問いを立て、どういう手順で答えようとしたか」だ。

答えが不十分でも、問いが鋭ければ評価される。逆に、答えが正しくても、問いが弱ければ「調べただけのレポート」に見える。大学生がレポートでどう引用すればいいか迷ったらに書いた引用の作法も、問いが明確であればこそ「何を引用すべきか」が見えてくる。

大学生、初めてのレポートでは、レポートの基本的な構成や書き方を扱った。だが、構成の前に問いの設計がある。問いが弱ければ、どんなに構成が整っていても中身のないレポートになる。

まとめ

レポートが書けないとき、文章力を疑う前に問いを疑え。テーマを決めただけでは問いは立っていない。比較、因果、境界、定義。この4つの型に当てはめれば、漠然としたテーマから具体的な問いが生まれる。問いが立てば、構成が見える。構成が見えれば、書ける。レポートの勝負は、最初の一文を書く前に決まっている。

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