Sakashita Yasunobu

Drawn to whatever quietly asks to be noticed. Each entry here is an attempt to hold something briefly before it changes — not to preserve it, but to acknowledge that it was once worth pausing for.

Japan
Sakashita Yasunobu

大学生活

図書館をもう少し身近に

本を読むことのハードルは、思っているよりも高い。 「本を読め」と言われる機会は多いけれど、ではなぜ多くの人が読まないのかという問いに正面から答えるのは案外難しい。忙しいから、何を手に取ればいいのかわからないから、そもそも読書という行為が日常から遠いから。理由はいくらでも挙がるし、そのどれもがたぶん本当だ。 大学の図書館には膨大な蔵書がある。自由に手に取って、好きなだけ読める。それだけでも恵まれた環境のはずなのに、実際には試験前の自習スペースとして使われていることが多い。本棚の前を通り過ぎて、席に着いて、ノートを開く。蔵書は風景の一部になってしまっている。 もったいない、と思う。 ただ、「もっと本を読みましょう」という呼びかけだけでは、たぶん何も変わらない。読書の勧めは、すでに読書が好きな人には響くが、そうでない人にはなかなか届かない。必要なのは、呼びかけよりも手前にある、ちょっとした仕掛けなのだと思う。 三つの条件 仕掛けを考えるにあたって、大事にしたい条件が三つある。 誰かの負担にならないこと。 特定の誰かが毎日頑張り続けないと回らない仕組みは、早晩息切れする。できる

By Sakashita Yasunobu

ことばと文学

出版がブログに代替されない理由

インターネットが普及し、誰でも無料でブログを公開できる時代になった。にもかかわらず、書籍という形態はいまだに選ばれ続けている。技術的にはブログで全文公開すれば済む話なのに、なぜわざわざ出版するのか。この問いを整理してみる。 出版が果たしている機能 編集・校正という品質保証 ブログは基本的に著者一人で完結する。一方、出版には編集者・校正者が介在し、構成の見直しや論理的な矛盾の指摘が行われる。文章が長くなるほど、著者自身では気づけない問題が増えるため、第三者による検証の価値は高まる。 これは学術論文における査読(peer review)と同じ構造であり、公開前に一定の品質フィルタを通すことで、読者が内容を信頼しやすくなる。 「読了される」確率の違い ブログに長文を掲載しても、最後まで読まれるとは限らない。書籍の場合、読者は購入という金銭的コストを払っている。行動経済学でいうサンクコスト(埋没費用)の影響もあり、購入した本は最後まで読もうとする動機が働きやすい。 もちろんこれは「必ず読了される」ことを意味しない。しかし、無料のブログ記事と比較すれば、書籍のほうが読者の注意

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ことばと文学

感想文に何を書けばいいかわからない君たちへ

読書感想文を書けと言われて、一冊の推薦図書を読み終えたとする。読んでいるあいだは、まあ眠くならない程度には面白かった。でも本を閉じた瞬間に出てくる感想は「ふーん」だ。そこから800字を埋めろと言われて、途方に暮れる。 その気持ちは、よくわかる。 でも、ここでひとつだけ伝えたいことがある。感想文は、本当に何を書いてもいい。好き放題、何を書いたっていい。 少し昔の話をさせてほしい。 AIがまだ身近ではなかった頃、自分の思ったことを「それっぽく」見せるために、ちょっとした変換リストのようなものを持っていた。「なんかすげえな」と思ったら「感銘を受けた」と書く。「よく知らないけど、どうやらすごいらしい」は「心の琴線に触れた」になる。そうやって書き換えるだけで、まるで自分の感覚の解像度が上がったような気がしてくる。文筆家でもなんでもないし、自分の文章が上手いとも思っていない。ある種の処世術だ。下手くそで何が悪い、と開き直ってやっていた。 今なら、このくらいのことはAIがやってくれる。思いつくままにぽんぽんと言葉を並べて、あとはいい感じの体裁に仕上げてもらえばいい。 ただ、ここでちょっと

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技術

Markdownで文献出典を扱う実用的な方法

Markdownで文章を書いていると、学術的な小論や技術記事など、ある程度の正確さを求められる文書で文献出典をどう扱うかという問題に直面する。Markdownの仕様には脚注や参考文献を管理する標準的な仕組みがなく、エディタごとの独自拡張に頼ると将来の移行時に困る。本稿では、プレーンテキストとしての可搬性を保ちながら文献出典を扱う方法を比較し、実用的な選択肢を検討する。 前提と要件 文献出典の記法に求められる性質は以下の通りである。 * 可搬性: 特定のエディタやプラットフォームに依存しない。プレーンテキストとして意味が通じる * 執筆時の効率: 書いている途中で文献リストとの間を行き来する必要がない * 可読性: 出典の挿入が本文の読みやすさを大きく損なわない * 検索性: 後から特定の文献を参照している箇所を検索できる * 自己完結性: リンクや外部参照に依存せず、テキスト単体で出典情報が完結する リンクベースの参照([[]] やハイパーリンク)は、リンク先が移動・消失すると出典情報そのものが失われるため、長期的な文書管理には不向きである。 主な方法の比較

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技術

小さなブログにコメント欄もアナリティクスもいらない

小さな、熱意のあるサイト運営者へ。 ブログのコメント欄は閉じよう。まだ導入していないなら、導入しなくていい。 そしてアナリティクスも入れなくていい。少なくとも、Google Analytics(GA4)は入れるべきではない。 突拍子もないことを言っているように聞こえるかもしれない。でも、これは思いつきでも逆張りでもなく、実際に小規模ブログを運営してきた多くの人たちが、試行錯誤の末にたどり着いた結論だ。 コメント欄を閉じよう そもそも誰もコメントしない まず、厳しい現実から始めなければならない。 Jakob Nielsenが2006年に提唱した「参加の不平等(Participation Inequality)」の法則によると、オンラインコミュニティではユーザーの90%が閲覧のみ、9%がたまに参加し、積極的に投稿するのはわずか1%にとどまる。ブログのコメント欄ではこの偏りがさらに極端になり、95対5対0.1ほどになるとも指摘されている。 Participation Inequality: The 90-9-1 Rule for Social FeaturesIn mos

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ことばと文学

デジタルの紙を超えて

紙の資料がPDFになった。たったそれだけのことが、実際にはどれほど革命的だったか。そしてなぜ、それだけでは足りないのか。 紙からPDFへ 少し前まで、「資料」といえば紙のことだった。コピー機を通すたびに劣化する文字。数世代のコピーを経て原形をとどめないページ。手書きの注釈が入り混じった印刷物。回覧のために物理的に持ち運ばなければならない書類の束。それが「資料を配布する」ということの実態だった。 コロナ禍を契機にオンライン化が一気に進み、紙の資料は急速にPDFへと置き換わった。コミュニケーションツールが普及し、ファイル共有が当たり前になった。 この変化の大きさを、過小評価すべきではないと心から思う。 ニール・アームストロング船長の有名な言葉が頭に浮かぶ。 That's one small step for a man, one giant leap for mankind. 一人の人間にとっては小さな一歩だが、人類にとっては偉大な飛躍である。 紙からPDFへ。ファイルを送るだけで同じ文書が相手の画面に表示される。文字を検索できる。拡大しても潰れない。地球の裏側にいる人に

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ことばと文学

道楽としてのブログ

ブログで収益を得ることについて、何度か考えたことがある。 アフィリエイト、広告、スポンサーシップ。ウェブ上で文章を書いて生活する方法は、少なくとも概念としてはいくつもある。「好きなことを書いてお金がもらえるなんて最高じゃないか」と言う人もいるし、その気持ちは理解できる。 けれど、実際にそこに足を踏み入れてみると、そう単純な話ではないことに気づく。 お金を受け取るということ アフィリエイトには、いい面がある。自分が本当に気に入っている製品やサービスを紹介して、それが誰かの役に立って、その結果としてわずかな報酬が入る。自分の経験を共有することが、そのまま誰かの助けになる。理想的な形で機能しているとき、それは悪い仕組みではない。 ただ、その構造には、静かな引力がある。 報酬が発生するとなると、どうしても「報酬が発生する記事」を書きたくなる。ある商品について正直に「悪くはないが、別にすすめるほどでもない」と思っても、アフィリエイトリンクを貼っている以上、その微妙なニュアンスは書きにくくなる。自分の誠実さと収益のあいだで、小さな摩擦が生まれる。 広告はもう少し単純だ。たとえばGo

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技術

ストレージを信じるということ

ストレージに求められるのは、便利さと信頼性の両方だ。この二つが揃っている限り、裏側がどんな技術で動いていようと気にする必要はない。ファイルを保存して、必要なときに取り出せる。それだけのことが当たり前に機能し続けること。ストレージへの信頼とは、つまるところそういうことだと思う。 ところが、ストレージには他の技術レイヤーにはない厄介な性質がある。 不可逆性という特殊性 ソフトウェアにおける抽象化とは、内部の複雑さを隠して、使う側に必要な操作だけを見せる設計思想だ。ファイルを「保存」するとき、実際にディスク上でどのようにデータが書き込まれているかを意識する必要がないのは、この抽象化が正しく機能しているからにほかならない。 多くの技術レイヤーでは、抽象化が破綻しても回復の手段がある。計算の誤りはやり直せる。通信の途切れは再送できる。しかしストレージの喪失は、バックアップが存在しなければ取り返しがつかない。破綻したときに巻き戻せないという不可逆性が、ストレージを特別な領域にしている。 同じ性質を持つ分野は他にもある。たとえば暗号鍵の管理がそうだ。秘密鍵を紛失すれば、署名能力は不可逆的

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技術

Pi-holeをdocker runだけで起動する

Pi-holeのDocker公式イメージはdocker-composeでの起動が案内されている。しかしNAS製品の多くはGUIからコンテナを管理する設計であり、docker-composeを使うにはSSHでログインする必要がある。Pi-holeを動かすためだけにSSHの管理を増やすのは合理的でない。 実際にはdocker-composeの設定はすべて docker run のオプションに変換できるため、docker-compose無しでもPi-holeは起動できる。本稿では、公式のdocker-compose設定を docker run コマンドに変換した例を示し、あわせて各オプションの意味を整理する。 docker runコマンド 以下は、Pi-hole公式のdocker-compose設定と同等の docker run コマンドである。 docker run -d \\ --name pihole \\ -p 53:53/tcp \\ -p 53:53/udp \\ -p 80:80/tcp \\ -p

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技術

ScanSnap iX1300のカラー解像度が白黒の半分になる理由

はじめに PFUのドキュメントスキャナー ScanSnap iX1300の自動画質モード(Best)では、カラーと白黒で読み取り解像度が異なる。 原稿の短辺が約105mm以下の場合は、カラー/グレー300dpi、白黒600dpi相当に設定。原稿の短辺が約105mmよりも長い場合は、カラー/グレー200dpi、白黒400dpi相当に設定。 どの条件でも白黒はカラーのちょうど2倍の解像度である。光学解像度は600dpiと記載されているにもかかわらず、なぜカラーではその性能をそのまま発揮できないのか。本記事では、iX1300が採用するCISセンサーの仕組みからその理由を解説する。 なお、iX1300は手動で「Excellent」モードを選択すればカラー600dpi(白黒1200dpi相当)でのスキャンにも対応している。ただしスキャン速度は大幅に低下する(Best:30枚/分 → Excellent:9枚/分)。本記事で扱うのは、速度を維持する自動画質モードでなぜ解像度が制限されるかという問題である。 参考:ScanSnap iX1300 | PFU CISセンサーの基本構造

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ことばと文学

美しさに応えるということ

日常が美しいのは、それが過ぎ去るからではない。 それ自身として美しい 季節の移り変わり、窓から差す午後の光、何気ない食卓の風景。こうしたものに心を動かされるとき、「儚いから美しい」という説明がよく使われる。やがて失われるから、今この瞬間が尊い、と。 その感覚はわかる。だが、どうしても違和感が残る。 儚さに美の根拠を置くと、美しさは「失われること」の副産物になってしまう。永遠に続く穏やかな日々があったとして、それは美しくないのか。変化しない安らぎは、美の資格を持たないのか。 そうではないと思う。日常はそれ自身として美しい。失われるから美しいのではなく、ただそこにあることが、すでに美しい。 鑑賞者がいなくても ここで一つの思考実験をしてみる。 美しさには通常、見る側と見られる側がある。鑑賞者と対象。だが、「それ自身として美しい」と言うとき、鑑賞者の存在は本当に必要だろうか。 誰もいない森の中で、光が木漏れ日となって地面に落ちている。それは美しいか。 「美しいと感じる人がいなければ美しくない」と言うこともできる。だが直感的には、誰もいなくても、あの光は美しいと思える。

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技術

ドメインレジストラの選び方

ウェブサイトを運営するならドメインが要る。ドメインが要るなら、それを登録・管理するレジストラを選ばなくてはいけない。 Cloudflare×Ghost Proで簡単!.pageドメインを使ったカスタムドメイン設定ガイド.pageドメインでのセットアップをしている人を見なかったので。 ドメインといえば.comがいまでも主流ですが、ドメインを新規で使う分にはどれを選んでも同じなため、ちょっと面白いものを選びたいですね。 今回は.pageドメインを利用してみました。Googleがレジストラーとして管理しており、HTTPSが強制され、HSTS Preloadも勝手に登録されるのでブログを使う身としては安心でらくちんです。 HSTSとはなんぞや HSTS(HTTP Strict Transport Security)って、簡単に言うと「ブラウザが自動でHTTPアクセスをHTTPSアクセスに切り替えるようにする仕組み」です。たとえばふつうならHTTPでアクセスすると、そのままHTTPでサーバーに行くわけですよね。でもHSTSを設定しておくと、いったんブラウザが「このサイトはHSTSに対応してるん

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