大学のあり方を問う

Share
📝
本稿は筆者が大学の授業で学んだ内容をもとに、独自の考察を加えて再構成したものである。

社会は変わり、大学を取り囲む環境も大きく変わった。少子高齢化、グローバル化、情報技術の進展。こうした変化のなかで大学は何を求められ、どこへ向かおうとしているのか。

筆者は大学の講義を通じて、大学政策に関するレポートを毎回のテーマに沿って執筆した。そのなかで見えてきたのは、大学という組織が抱える課題の多面性である。経営、ガバナンス、入試、研究、地域貢献、国際化。それぞれが独立した問題でありながら、根底では互いにつながっている。

本稿ではこれらのレポートを5つの視点から整理し、各記事への案内とする。

大学と社会

大学は社会のなかでどのような存在なのか。この問いは他のすべてのテーマの出発点となる。

大学と社会の関係性では、企業と大学の類似点に着目し、「公共経営」という概念を手がかりに、大学が企業的手法を取り入れる背景を考察した。営利を目的としない大学がなぜ企業と似た振る舞いを見せるのか。その答えは、公共的課題の解決という共通の目的にある。

大学の理念と個性では、私立大学の教育理念を具体的に取り上げ、建学の精神が大学の個性をどのように形づくるかを分析した。国立大学が地域貢献を掲げる一方で、私立大学は独自の教育理念を前面に打ち出すという対照的な姿が浮かび上がる。

経営とガバナンス

大学がその使命を果たすために、組織としてどう動くべきか。経営とガバナンスは大学の内側を支える骨格である。

大学の戦略的ガバナンスでは、大学経営が管理から戦略的経営へと移行してきた過程をたどり、内的統制としてのガバナンスのあり方を論じた。権力の集中がもたらす迅速な意思決定と、それに伴うリスクのバランスが問われている。

大学の管理運営と多様化では、McNayの四類型を手がかりに、同僚制から企業制への移行を分析した。大学の発展期が終わり安定期に入った今、管理運営のあり方を見直す時期が来ていることを指摘し、大学の多様化の必要性を論じている。

IRと大学経営では、データに基づく意思決定支援としてのIR(Institutional Research)に着目した。ビッグデータやIoTの進展を背景に、大学経営における情報活用の重要性が高まっている。一方で、行き過ぎた効率化への警鐘も鳴らしている。

構成員と入試

大学を構成する人々は多様化し、大学に入る人々の選び方もまた変わりつつある。

大学構成員の多様化では、教員、職員、学生の三者それぞれに生じている変化を整理した。教員の役割拡大、職員の専門化、学生の背景の多様化。大学組織としての一体性を保ちながら、各構成員の力を引き出すことが課題となっている。

大学入試と選抜では、ユニバーサル化した高等教育のもとでの入試制度を考察した。大学が「選ぶ側」から「選ばれる側」へと変化するなかで、学力偏重からの脱却と、多面的な評価のあり方を論じている。

研究と社会貢献

大学の研究は社会にどう還元されるのか。直接的な貢献から間接的な貢献まで、その経路は多様である。

大学の研究と社会貢献では、COVID-19のワクチン開発を題材に、大学と企業の連携による社会貢献の実例を分析した。基礎研究を担う大学と、実用化を進める企業との協働が、危機的状況において果たした役割を考察している。

大学と地域貢献では、大学の「第3の機能」とされる地域貢献について、学術探究との関係を論じた。大学は即効性のある解決策を提供するよりも、学問を通した長期的な社会貢献こそ本領であるという立場から議論を展開している。

大学発ベンチャーと技術移転では、TLO(技術移転機関)を軸に、大学の研究成果が産業界へ還元される仕組みを整理した。大学の高度な研究力を背景としたベンチャーは、個人による起業とは異なる安定性を持ちうると論じている。

連携と国際化

一つの大学だけでは対応しきれない課題に対し、連携と国際化は重要な戦略となる。

大学間連携の未来では、大学同士の「水平的連携」と教育段階を超えた「垂直的連携」の二つの軸から、大学の将来像を模索した。OECDのリカレント教育やUNESCOの生涯教育の理念も踏まえ、連携のあり方を多角的に検討している。

大学の国際化では、学生と教員・研究者という二つの人的資源の観点から国際交流を分析した。経済的要因が国際交流の活発化を妨げている現状を指摘し、支援の充実とデジタル技術の活用を提言している。

おわりに

12本のレポートを通じて繰り返し立ち現れるのは、大学が社会の変化に応じて自らを問い直さなければならないという認識である。M. トロウが示したエリート型からユニバーサル型への移行、McNayの組織モデル、公共経営の概念。これらの理論的枠組みは、大学が直面する個々の課題を俯瞰するための手がかりとなる。

大学は学術の府であると同時に、社会の一構成要素でもある。その二つの顔をどう両立させるかという問いに、簡単な答えはない。しかし、問い続けること自体が、大学という営みの本質なのではないだろうか。

Read more

Dependabotの対応が面倒なのでRenovateを導入する

Dependabotくんはある程度の依存関係の更新を通知してくれるが、山のようにprojectを抱えているとなんとも痒いところに手が届かない。 ということで、Renovateを使ってみる。 Build software better, togetherGitHub is where people build software. More than 150 million people use GitHub to discover, fork, and contribute to over 420 million projects.GitHub ここからGitHub Appを入れる。 あとは、指示に従ってポチポチするだけで、超かんたんだった。 感想 自動化最高。

By Sakashita Yasunobu

nodejsのバグを見つけたのでPRを投げてみた

概要 要するに、node --testで特定のバイナリを標準出力に書くと、テストランナーが固まったり、異常終了したりするバグです。 バグ自体は既知のものだったようで、修正がされていました。 test_runner: infinite loop in FileTest#drainRawBuffer when child stdout contains FF 0F followed by large size bytes · Issue #62693 · nodejs/nodeVersion v25.9.0 (also reproduced on v24.14.1 LTS, v22.21.0 LTS, v23.4.0) Platform Darwin 25.

By Sakashita Yasunobu
青空文庫のParser

青空文庫のParser

青空文庫のParserを作ってます。 GitHub - P4suta/aozora: Pure-functional Rust parser for 青空文庫記法 (Aozora Bunko notation): ルビ, 傍点, 縦中横, 外字, 返り点, indent containers, page breaks.Pure-functional Rust parser for 青空文庫記法 (Aozora Bunko notation): ルビ, 傍点, 縦中横, 外字, 返り点, indent containers, page breaks. - P4suta/aozoraGitHubP4suta Rustで作ってますが、配布物はcargoのほかにnpm/pypiでも入手できます Documentation * Playground — try it in

By Sakashita Yasunobu