Sakashita Yasunobu

Drawn to whatever quietly asks to be noticed. Each entry here is an attempt to hold something briefly before it changes — not to preserve it, but to acknowledge that it was once worth pausing for.

Japan
Sakashita Yasunobu

ことばと文学

日本語の語彙と意味

📝本稿は筆者が大学の授業で学んだ内容をもとに、独自の考察を加えて再構成したものである。 日本語の語彙は、その成り立ちや意味関係において豊かな体系を持っている。本稿では語の構造や出自、意味関係、そして比喩やオノマトペまで、日本語の語彙の世界を広く見渡す。 語彙の基本概念 「語」と「語彙」は区別が必要である。「語」は意味を持った、文を組み立てる最小の独立した単位であり、語形(音や文字)と語義(意味)、そして指示対象(実際のもの)から成り立つ。一方「語彙」は一定の範囲における語の集合を指す。「範疆という語を習った」と言えば個々の単語を指し、「新聞を読むのにどのくらいの語彙が必要か」と言えば語の集合を指す。 機能による分類として、名詞・動詞・形容詞・副詞など実質的な意味を持つ「実質語(内容語)」と、助詞・助動詞・接続詞など主に文法機能を担う「機能語」がある。「私は日本人だ」という文では、「私」「日本人」が実質語、「は」「だ」

By Sakashita Yasunobu

大学

考古学の自然科学的分析

📝本稿は筆者が大学の授業で学んだ内容をもとに、独自の考察を加えて再構成したものである。 遺跡の調査においては、遺物や遺構そのものの分析に加えて、遺跡周辺にどのような環境が広がっていたか、人々がその環境にどう働きかけていたか、遠隔地とどのようなつながりを持っていたかを解明することが重要な課題となる。本稿では、こうした課題に取り組むための手法として、珪藻分析、蛍光X線分析、および動物遺存体の分析を概説する。 珪藻分析 珪藻分析は、珪藻(けいそう)の種構成が水域環境によって異なることを利用し、遺跡の土壌から検出された珪藻を分析することで当時の水環境を復元する手法である。 珪藻は二酸化ケイ素(ガラス質)の殻を持つ単細胞の植物プランクトンであり、この殻が土壌中に長期間保存される性質を持つ。珪藻は水環境に敏感に反応し、水質の清濁、流水か停水か、塩分濃度の高低、水深の深浅といった条件によって生息する種が変化する。遺跡の土壌から検出された珪藻の種構成を既知の生態データと比較することで、その場所の過去の水環境を推定できる。 具体的な応用としては、環濠に水が流れていたか否かの判定、水田耕作の

By Sakashita Yasunobu

大学

考古学の年代測定法

📝本稿は筆者が大学の授業で学んだ内容をもとに、独自の考察を加えて再構成したものである。 考古学において、出土した遺物や遺構がいつの時代のものであるかを明らかにすることは、歴史を読み解くうえで根本的に重要な作業である。年代測定にはさまざまな手法が存在するが、本稿では有機物の年代を推定する放射性炭素年代測定法と、木材の伐採年代を特定する酸素同位体年輪年代法について概説する。 放射性炭素年代測定法 原理 放射性炭素年代測定法は、大気中の放射性炭素(¹⁴C)の挙動に基づく年代測定法である。宇宙線が大気上層で窒素原子(¹⁴N)に衝突すると¹⁴Cが生成され、一方で¹⁴Cは放射性崩壊により減少する。この生成と崩壊が動的平衡を保つため、大気中の¹⁴C濃度はほぼ一定に維持される。 生きている生物は呼吸や光合成を通じて大気と炭素を交換するため、体内の¹⁴C濃度は大気と同程度に保たれる。生物が死亡すると炭素の取り込みが停止し、体内の¹⁴Cは放射性崩壊によって一方的に減少する。¹⁴Cの半減期は約5,730年(±40年)であり、この一定の崩壊速度を利用して、試料中の¹⁴C残存量から死後の経過時間

By Sakashita Yasunobu

大学

気候変動の環境経済学

📝本稿は筆者が大学の授業で学んだ内容をもとに、独自の考察を加えて再構成したものである。 IPCC(気候変動に関する政府間パネル)の第6次評価報告書(AR6)は、地球温暖化に関する科学的知見を包括的に評価した文書である。本稿では、同報告書が示す気候変動の現状と将来予測を概観し、環境経済学の視点から分析する。 地球温暖化の現状 IPCC第6次評価報告書によれば、工業化以前(1850年から1900年)の基準期間と比較して、2011年から2020年の世界平均気温は1.09°C上昇した。報告書は、この変化の速度について「1970年以降、世界平均気温は、少なくとも過去2000年にわたって経験したことのない速度で上昇した」と述べている。 温暖化の原因について、報告書は「人間の影響が大気、海洋、陸域を温暖化させてきたことには疑う余地がない」と断定している。根拠として、大気中の二酸化炭素(CO₂)濃度が少なくとも過去200万年のどの時点よりも高いこと、メタン(CH₄)と一酸化二窒素(N₂O)の濃度が少なくとも過去80万年間のどの時点よりも高いことが示されている。 将来予測とカーボンバジェ

By Sakashita Yasunobu

大学

ごみ処理と拡大生産者責任

📝本稿は筆者が大学の授業で学んだ内容をもとに、独自の考察を加えて再構成したものである。 ごみの処理は、自治体が担う最も身近な公共サービスの一つであると同時に、費用負担や処分場の確保といった構造的な課題を抱えている。本稿では、高知市の清掃事業を事例にごみ処理の現状と課題を分析し、拡大生産者責任(EPR)の考え方を取り入れた制度設計について考察する。 高知市のごみ処理事業 高知市のごみ処理事業は、段階的な制度改革を重ねてきた。特筆すべきは、平成元年(1989年)に開始されたプラスチック系ごみの分別収集である。当初は全市の8.3%の世帯を対象としたモデル地区から始まり、翌年の平成2年1月には全市域での分別収集が実現した。これは容器包装リサイクル法の完全施行(2001年)に12年先行する取り組みであった。 現在の分別区分は、可燃ごみ、プラスチック製容器包装、ペットボトル、資源物、可燃粗大ごみ、家電品、水銀含有廃棄物、不燃ごみ、発火器具・ライター類の9区分である。こうした分別収集体制のもと、平成19年度(2007年度)以降は焼却灰・焼却飛灰の全量をセメント資源化するゼロ・エミッション

By Sakashita Yasunobu

ことばと文学

英語の動詞と語順の変遷

📝本稿は筆者が大学の授業で学んだ内容をもとに、独自の考察を加えて再構成したものである。 古英語から現代英語への移行において、動詞体系と語順は相互に関連しながら大きく変化した。強変化動詞の母音交替パターンの平準化、完了形の形成方法の変化、語順の固定化、そして機能語の発達は、英語の文法構造を根本的に変えた変化である。本稿では、これらの変化を整理し、あわせてフランス語の否定構文との比較を通じて、言語変化の一般的なパターンを考える。 強変化動詞の母音交替と平準化 現代英語の動詞 shrink には、過去形として shrank と shrunk の二つの形が存在する。この併存は、英語の強変化動詞(不規則動詞)における歴史的な平準化(leveling)の過程で生じたものである。 アプラウトと古英語の強変化動詞 古英語の強変化動詞は、アプラウト(Ablaut、母音交替)と呼ばれる体系的な母音変化によって時制を表した。アプラウトはインド・ヨーロッパ祖語にまで遡る現象であり、語根の母音を交替させることで文法的な区別を表す。 古英語では、強変化動詞の過去形は単数と複数で異なる母音を持って

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ことばと文学

英語の名詞と代名詞の変遷

📝本稿は筆者が大学の授業で学んだ内容をもとに、独自の考察を加えて再構成したものである。 古英語から現代英語にかけて、名詞と代名詞の体系は大きく変化した。複数形の規則化、属格(所有格)の表現方法の変容、そして二人称代名詞の統合は、英語の歴史における重要な変化である。本稿では、現代英語に残る不規則な痕跡をたどりながら、これらの変化を整理する。 不規則な複数形 現代英語の名詞複数形は -s/-es が標準であるが、いくつかの名詞はこの規則に従わない。これらの不規則形は、古英語の異なる変化パターンの名残である。 二重複数 children は、古英語の cild の複数形 cildru に、さらに中英語期に -en が付加されて cildren となったものである。すなわち、古い複数語尾の上にさらに別の複数語尾が重ねられた「二重複数」(double plural)である。同様の現象は brethren(brother の古い複数形)にも見られる。brethren は古英語 brōþru に -en

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ことばと文学

ゲルマン語の子音推移

📝本稿は筆者が大学の授業で学んだ内容をもとに、独自の考察を加えて再構成したものである。 インド・ヨーロッパ語族からゲルマン語派が分岐する過程で、子音体系に大規模な変化が生じた。この変化はグリムの法則として知られ、さらにヴェルネルの法則による補正、そしてゲルマン語内部で生じた第二次子音推移を経て、英語とドイツ語の音韻的な差異を生み出した。本稿では、これらの子音推移の内容とその関係を整理する。 グリムの法則 19世紀初頭、ドイツの言語学者ヤーコプ・グリム(Jacob Grimm)は、インド・ヨーロッパ祖語からゲルマン語派への体系的な子音変化を記述した。これがグリムの法則(Grimm's Law)であり、第一次子音推移(First Germanic Sound Shift)とも呼ばれる。変化の内容は以下の三系列からなる。 無声破裂音から無声摩擦音へ インド・ヨーロッパ祖語の無声破裂音 *p, *t, *k は、ゲルマン語で無声摩擦音 *f, *θ, *x(のちに *h)へと変化した。 * ラテン語 pater(父)

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ことばと文学

場所はどのようにつくられるのか

📝本稿は筆者が大学の授業で学んだ内容をもとに、独自の考察を加えて再構成したものである。 「場所」を問い直す 朝、寝室で目を覚まし、食堂で朝食をとり、学校や職場へ向かう。帰りにスーパーへ寄り、家に戻る。私たちは毎日「場所」を舞台にして暮らしているが、場所そのものについて考えることはほとんどない。 森正人『誰が場所をつくるのか』(新曜社、2024年)は、その当たり前の「場所」を問い直す一冊である。副題に「ポストヒューマニズム的試論」と掲げられた本書によれば、場所は最初から存在する自明の所与ではなく、特定の時空間において人間と「人間あらざるもの」の相互作用によって構成される動的な過程である。場所論は人文地理学の中心的な主題であり、1970年代以降さまざまな理論的展開を経てきた。本書はその展開を丹念にたどりながら、近年のポスト人間中心主義の思潮を取り込んで場所概念の刷新を試みている。 本稿では、まず本書の議論を整理したうえで、理論的な観点から二つの問題点を指摘する。第一に、社会的構築主義とポスト人間中心主義の間に存在する緊張関係について。第二に、「場所はつねに変化し続ける過程である

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ことばと文学

ドストエフスキー『カラマーゾフの兄弟』書評

📝本稿は筆者が大学の授業で学んだ内容をもとに、独自の考察を加えて再構成したものである。 本を読んで人生が変わった、と言い切れる人が、どれだけいるだろうか。本じゃなくてもいい。映画を見終わってシアターを出たとき、世界がまるで違って見える感覚を覚えたことはないだろうか。感傷的な人や多感な中高生なら、そういう経験があるのだろう。しかし大学生にもなると、そうはいかない。世の中が少し見えてくると、作り話が生ぬるく思えてくる。よくできたフィクションより、現実のほうがよっぽど手に負えない。だからだろうか、若者は本を読まなくなった。オジサンは若者の現状をみて「本離れ」と呼んで嘆くが、言われすぎてもはや定型句だ。いまさら文句をつけられようが言い返す気にもなれない。あげく『白鯨』、『罪と罰』、『失われた時を求めて』などなど、「名著を読め」ときた。いわく「のめりこむほど面白い」そうだが、そんな手あかのついた宣伝文句で心が動くほど素直ではないし、大体、オジサンが面白いと言うものは面白くないのだ。その時間でSNSを眺めていたほうがマシだ。 とはいえ、オジサンと一緒になって若者の読書離れを嘆いていても仕方な

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ことばと文学

加藤典洋『言語表現法講義』書評

📝本稿は筆者が大学の授業で学んだ内容をもとに、独自の考察を加えて再構成したものである。 なぜこの本を選んだのか 大学生活で避けて通れないのが、レポートや論文の執筆だ。しかし正直なところ、書くことは楽しくない。義務として書かされる文章は、書く側も読む側も面白くない。そんな中、「書くこと」そのものの意味を問い直すこの本に出会った。タイトルこそ堅苦しいが、著者の加藤典洋は「書くことを上手に表現する技法の問題だとは考えていない。むしろよりよく考えるための、つまり自分と向かい合うための一つの経験の場なのだ」と主張する。この視点の転換に惹かれ、本書を手に取った。 本書の構成と主題 本書は全9章から構成されている。第2章では課題レポートの問題点から始まり、第3章では推敲による文章の変化、第4章では「書かないこと」の表現力、つまり行間について論じられる。第5章では優れた文章に宿る「天啓」の獲得方法、第6章では敏感な問題に対する書き手の姿勢、第7章では現代文章の特徴が分析される。第8章では「良い文章」を書く際の壁について、そして最終章ではフィクションの力について語られる。 「行間文法」

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光と写真

ストロボのガイドナンバーは照射角でどう変わるか

ストロボの照射角(ズーム位置)を変えると、ガイドナンバー(GN)はどう変化するか。本稿では物理法則から理論式を導出し、Canon スピードライト EL-1の公称データと照合する。 GNの定義 GNはISO 100において次式で定義される。 \[ GN = d \times F \] \(d\) は被写体距離(m)、 \(F\) は絞り値である。 GNと光度の関係 光軸上の光度を \(I\) (cd)とする。逆二乗則より、距離 \(d\) における照度は次のようになる。 \[ E = \frac{I}{d^2} \] 適正露光の条件として、被写体面での照度 \(E\) と絞り値 \(F\) の間には \(E \propto F^2\) の関係がある(ISO感度一定)。絞りを絞るほど、

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