倫理と思考実験
あぁ、さようなら
最後に誰かと会ったとき、「もう二度と会えない」と思っただろうか。 思わなかったはずだ。最後はいつもそうだ。「じゃあまた」が最後の言葉になることを、事前に知ることはできない。そしてある朝、「また」が永遠に来ないことを知る。それはニュースのように不意に届くこともあれば、長い沈黙のあとに、静かに気づくこともある。 この文章には答えがない。もしあなたが今、誰かを失って苦しんでいるなら、ここに処方箋はない。あなたの悲しみをやわらげる言葉を、僕は持っていない。持っていたら自分に使っている。ただ、同じように途方に暮れた人間の、まとまらない思考の断片がここにあるだけだ。 最後はいつも静かに過ぎる 「最後に会ったとき、これが最後だとは思わなかった」 おそらく、人類史上もっとも多くの人が、もっとも多くの言語で、もっとも多くの夜に呟いてきた言葉だ。そしてそのたびに、誰もが同じことに気づく。別れは、別れの瞬間には姿を見せない。 考えてみれば当然だ。もし「これが最後だ」と分かっていたら、僕たちはきっと別の言葉を選ぶ。もっと丁寧に、もっと慎重に、もっと正直に。しかしそれは「最後だと知っている別れ」で