ことばと文学
ポーとミステリの誕生
📝本稿は筆者が大学の授業で学んだ内容をもとに、独自の考察を加えて再構成したものである。 ミステリとは何か。この問いに対する答えは、時代や論者によって少しずつ異なる。 江戸川乱歩は1951年の『幻影城』において「探偵小説とは、主として犯罪に関する難解な秘密が、論理的に、徐々に解かれて行く径路の面白さを主眼とする文学である」と定義した。一方、イギリスの批評家H・R・F・キーティングは1987年の『Crime and Mystery: The 100 Best Books(ミステリ百選)』において、ポーからP.D.ジェイムズに至る100作を選出しながら「エンタテインメントとしての価値を第一に書かれた小説であり、その主題が何らかの犯罪の形をとっている小説」をミステリの基本的な枠組みとして論じている。両者に共通するのは、犯罪にかかわる謎解きが物語の核であるという認識だ。 ところが、これらの定義には欠けているものがある。乱歩の定義はいわゆる「本格ミステリ」にしか当てはまらず、サスペンスやハードボイルドのような幅広いミステリの領域をカバーできない。そしてどちらの定義にも、主人公への視点が含ま