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Capture Oneに待望のネガフィルム変換機能が来た

2026年4月3日、Capture One 16.7.4 がリリースされた。目玉はなんといっても Negative Film Conversion(ネガフィルム変換) の搭載だ。これまで Cultural Heritage エディション限定だったネガ反転処理が、ついに通常の Capture One Pro / Studio でも使えるようになった。 何が変わったのか 従来、Capture One でネガフィルムをポジに変換するには、Cultural Heritage(CH)エディションを使う必要があった。CH は文化財デジタル化向けの専用製品で、Base Characteristics ツールに Film Negative / Film Positive モードが用意されていた。しかし一般の写真愛好家がフィルムスキャンのためだけに CH を導入するのは現実的ではなく、多くのユーザーは Lightroom とそのプラグイン(Negative Lab

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雨の中、歩くべきか走るべきか

傘を忘れた日の永遠の問い、歩くか、走るか、いやいっそ雨宿りをするのか。物理で決着をつける。 モデル 人体を直方体で近似。上面積 $A_{\text{top}}$(頭・肩)、前面積 $A_{\text{front}}$(胸・顔)。雨は鉛直一様(落下速度 $v_r$、数密度 $n$)、距離 $d$ を速度 $v$ で直線移動する。 人体の直方体モデルは、上から見た水平断面が $A_{\text{top}}$、正面から見た鉛直断面が $A_{\text{front}}$ の二面で構成される。移動方向は水平、雨は鉛直に降る。 受ける雨滴数は、上面が $n v_r A_{\text{top}

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T-GRAIN・Core-Shell・旧式乳剤の定量比較

Kodak T-GRAIN、Ilford Core-Shell、旧式立方晶乳剤。写真フィルムの性能を左右する三つの乳剤技術を、特許文献と数式に基づいて比較する。 1. 出発点: 旧式乳剤の構造と限界 T-MAXやDeltaが何を改良したのかを理解するには、まず従来の乳剤がどのようなものだったかを押さえておく必要がある。 1980年代以前、標準的なハロゲン化銀乳剤はAgBrやAgBr(I)の結晶が立方体(cubic)か不定形(irregular)の形をしていた。Tri-XやHP5の祖先にあたるこれらの乳剤では、結晶のアスペクト比(直径対厚さの比)はおおむね1:1から2:1。三次元的にほぼ等方的な粒子が乳剤層にランダムに散らばっていた。 この形態が感度と粒状性のトレードオフに直結する。立方晶粒子を一辺 $a$ の立方体として近似すると、表面積と体積、そしてその比は次のとおりである。 $$ S_{\text{cubic}} = 6a^2, \quad V_{\text{cubic}} = a^3, \quad \frac{S}{V} = \frac{6}

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クジラはなぜがんにならないのか

体が大きい動物ほど細胞の数が多い。細胞が多ければ、そのうちどれかががん化する確率も高くなるはずだ。ところが現実には、クジラやゾウのがん発生率はヒトよりも低い。1977年、疫学者リチャード・ピートがこの矛盾を指摘した。以来この問いは「ピートのパラドックス」と呼ばれ、比較腫瘍学における最大の謎のひとつであり続けている。 種の中では予測通り、種の間では崩れる 同じ種の中では、直感どおりの傾向が確認されている。身長の高いヒトはそうでないヒトよりがんの発生率がやや高く、年齢を重ねるほどがんは増える。細胞の数が多いほど、細胞分裂の回数が多いほど、がん化の確率は上がる。 しかし種を超えて比較すると、この関係が崩壊する。シロナガスクジラの細胞数はヒトの約1000倍にのぼるが、がんの発生率がヒトの1000倍になるわけではない。哺乳類全体を見渡しても、体サイズとがんリスクの間に明確な正の相関は長い間見つかっていなかった。がんの発生率は種が異なっても約2倍の範囲にしか収まらないとされてきた。体サイズの差は100万倍を超えるにもかかわらず。 ゾウが持つ余分ながん抑制遺伝子 最もよく知られた説明は

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電脳空間のハエ

ショウジョウバエの脳がコンピュータの上で再現され、仮想の体に接続されたら、歩き始めた。強化学習で訓練されたわけでも、行動規則をプログラムされたわけでもない。ニューロンの接続パターンをコピーしただけで、ハエは動いた。 何が起きたのか 2026年3月7日、サンフランシスコに拠点を置くEon Systems PBCが、デモンストレーション映像を公開した。同社の共同創設者であるAlex Wissner-Grossによれば、世界初の「身体を持つ全脳エミュレーション(embodied whole-brain emulation)」だという。 「全脳エミュレーション」とは、生物の脳の神経回路をニューロン単位、シナプス単位でコンピュータ上に再現し、動作させることを指す。「身体を持つ」とは、その脳のシミュレーションが物理法則に従う仮想の体に接続され、感覚入力を受け取り、運動出力を返す閉じたループを構成していることを意味する。 これまでにも脳のシミュレーションや体のシミュレーションは個別に存在した。線虫(C. elegans)の神経系を再現するOpenWormプロジェクトは約302個のニューロン

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写真のしくみ ④ 虫めがねが紙を燃やす「焦点」のひみつ

💡シリーズ「写真のしくみ」について 光はまっすぐ進み、レンズは世界をひっくり返す。写真と映像にひそむ小さな「なぜ?」を、数式なしで解き明かす全40回。 晴れた日に虫めがねを持って外へ出てみましょう。地面に黒い紙を置いて、虫めがねを太陽にかざします。レンズと紙のあいだの距離をゆっくり変えていくと、紙の上の光がだんだん小さくなって、あるところでぎゅっと小さな点になります。 その点をじっと動かさずにいると、白い煙がすうっと立ちのぼって、やがて紙がこげはじめます。 小学校の理科の実験で経験した人も多いのではないでしょうか。でも、あらためて考えてみると不思議です。虫めがねはただの透明なガラス。火をつける道具なんかではありません。それなのに、なぜ紙が燃えるほど熱くなるのでしょうか。 この「なぜ?」の先に、レンズの本質が隠れています。 太陽の光は「平行」にやってくる まず、太陽の光について考えてみましょう。 太陽は地球からおよそ1億5000万キロメートルも離れています。あまりにも遠いので、太陽から届く光は、地球に届くころにはほぼ完全にそろって「平行」に進んでいます。つまり、どの光も

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写真のしくみ ㉔ 白黒しか見えないセンサーがカラー写真をつくるしくみ

💡シリーズ「写真のしくみ」について 光はまっすぐ進み、レンズは世界をひっくり返す。写真と映像にひそむ小さな「なぜ?」を、数式なしで解き明かす全40回。 カメラのシャッターを切れば、カラー写真ができあがる。あまりに当たり前なので、そのしくみを不思議に思う人は少ないかもしれません。でも実は、カメラの中では驚くほど巧妙なことが起きています。 センサーは色が見えない いきなりですが、ちょっとびっくりする話から始めましょう。 デジタルカメラのセンサーは、色が分かりません。 「え、だってカラー写真が撮れるじゃん!」と思うかもしれません。もちろん最終的にはカラーの写真ができあがります。でも、センサーそのものが見ているのは、実は 「光の強さ」だけ なんです。 センサーの表面には、何百万、何千万という小さな「画素(ピクセル)」が並んでいます。ひとつひとつの画素は、光が当たると電気信号に変えます。光が強ければ大きな信号、弱ければ小さな信号。やっていることは、いわば 「ここは明るい」「ここは暗い」と測っているだけ です。 目をつぶって手のひらを太陽にかざしてみてください。まぶたの裏が明るく

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写真のしくみ ⑯ 虫の目になるマクロ撮影のしくみ

💡シリーズ「写真のしくみ」について 光はまっすぐ進み、レンズは世界をひっくり返す。写真と映像にひそむ小さな「なぜ?」を、数式なしで解き明かす全40回。 前回は、絞りすぎると光の回折でぼやけるという「くっきりの限界」を見ました。今回は視点を変えて、ふだん肉眼では見えないほど小さな世界へ飛び込むマクロ撮影の話です。 きみは道ばたにしゃがみこんで、アリをじーっと見つめたことがあるでしょうか。花びらについた朝つゆをのぞきこんで、小さな水玉の中にひっくり返った景色が映っているのを見て、ちょっとびっくりしたことは? ぼくたちの目は、ものすごく近いものにはピントが合いません。試しに、人差し指を目の前5センチくらいまで持ってきてみてください。指紋がぼやけて見えるはずです。実はカメラのレンズにも、これとまったく同じ限界があります。 マクロ撮影というのは、その限界をぶち破って、小さなものを大きく写す技術のことです。テントウムシの背中の水玉もよう、タンポポの綿毛の一本一本、蝶の羽についた鱗粉のきらめき。ふだん肉眼では「なんとなく」しか見えなかったものが、写真になると「こんな世界だったのか!」と声が

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写真のしくみ ㉚ RAWとJPEGのちがいを知って「生の写真」を自分で料理しよう

💡シリーズ「写真のしくみ」について 光はまっすぐ進み、レンズは世界をひっくり返す。写真と映像にひそむ小さな「なぜ?」を、数式なしで解き明かす全40回。 カメラの設定画面に「JPEG」と「RAW」という2つの選択肢があるのを見たことはありませんか? JPEGはふだんから目にする画像の形式ですが、RAWはちょっと聞き慣れないかもしれません。「プロっぽい人が使うやつでしょ?」と思っている人もいるでしょう。 実は、この2つのちがいを知ると、カメラの中で何が起きているのかがぐっと見えてきます。そして「自分の写真を自分の好きなように仕上げる」という、写真のいちばん楽しい扉が開きます。今回は、JPEGとRAWのちがいを「料理」にたとえながら、わかりやすく解き明かしていきましょう。 カメラの中で何が起きている? シャッターを押した瞬間、カメラの中では何が起こっているのでしょう。 レンズを通った光が、カメラの奥にある イメージセンサー にぶつかります。センサーは、ものすごくたくさんの小さな「光のバケツ」が並んだシートのようなものです。ひとつひとつのバケツが「ここにはどれくらいの光が来たか」

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写真のしくみ ⑫ ピントと被写界深度の正体

💡シリーズ「写真のしくみ」について 光はまっすぐ進み、レンズは世界をひっくり返す。写真と映像にひそむ小さな「なぜ?」を、数式なしで解き明かす全40回。 虫めがねで遊んだこと、ありますか? 晴れた日に虫めがねを持って外に出て、太陽の光を紙の上に集める。虫めがねをゆっくり上げ下げすると、紙に映る光の丸がだんだん小さくなって、あるところでキュッとひとつの点になります。もうちょっと動かすと、今度はまた丸が大きくなっていきます。 じつは、カメラの「ピントが合う」しくみは、まさにこれと同じです。 ピントが「合う」とは何が起きているのか カメラのレンズは、虫めがねの親せきです。やっていることは基本的に同じで、光を集めて、像をつくること。 目の前に一本の木があるとしましょう。木の葉っぱからは、光があらゆる方向に飛び出しています。太陽や空の光が葉っぱに当たって反射したもの、それが「葉っぱから出る光」です。そのうちレンズに飛び込んできた光は、レンズを通り抜けるときにぐっと曲げられて、レンズの反対側のどこか一点に向かって集まっていきます。 この「光が集まる点」が、ちょうどカメラのセンサー(

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写真のしくみ ㊴ ゴールデンアワーとブルーアワーの光の科学

💡シリーズ「写真のしくみ」について 光はまっすぐ進み、レンズは世界をひっくり返す。写真と映像にひそむ小さな「なぜ?」を、数式なしで解き明かす全40回。 きみは夕方の公園で、友だちの顔がやけにきれいに見えたことはありませんか。朝早く起きたとき、窓の外の街並みがいつもとまったく違う色に染まっていて驚いたことは? 実はそれ、気のせいなんかじゃありません。光そのものが本当に変わっているんです。写真を撮る人たちがこぞって「この時間がいちばんきれいだ」と言う、ある特別な時間帯があります。今回はその秘密を、科学の力でのぞいてみましょう。 ゴールデンアワーってなんだろう? ゴールデンアワーは、日の出のあとのおよそ1時間と、日没の前のおよそ1時間のことです。「マジックアワー」と呼ぶ人もいます。この時間帯になると、あたりの景色がふんわりとオレンジ色や金色に包まれます。人の肌はあたたかく輝いて見え、建物の壁は夕焼け色に染まり、木々の葉っぱは金色の縁取りをもらったようにキラキラします。 もう少し正確に言うと、太陽の位置が地平線から約6度以内にあるときが、もっともゴールデンアワーらしい光になるとされ

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写真のしくみ ㉒ 光の足し算と絵の具の引き算で読み解く色のしくみ

💡シリーズ「写真のしくみ」について 光はまっすぐ進み、レンズは世界をひっくり返す。写真と映像にひそむ小さな「なぜ?」を、数式なしで解き明かす全40回。 スマホの画面を、ぐーっと目を近づけて見たことはありますか。虫めがねやルーペがあれば最高です。よく観察すると、画面にはとても小さな光の粒がびっしりと並んでいます。赤、緑、青。たったこの3色の光だけで、写真も動画も、空の青もリンゴの赤も、ぜんぶ表現されています。 ところで、図工や美術の時間を思い出してみてください。絵の具をいろいろ混ぜていくと、どんどん色が暗くなって、最後にはなんだか黒っぽいドロドロになった経験はないでしょうか。 光を混ぜると明るくなる。絵の具を混ぜると暗くなる。同じ「色を混ぜる」はずなのに、まるっきり逆の結果になります。この不思議の正体をつかまえるのが、今回のテーマです。 テレビやスマホの画面をのぞいてみよう テレビやスマホ、パソコンのディスプレイは、光を出して映像を映しています。この光の正体は、ものすごく小さな 画素(ピクセル) と呼ばれる光の点です。ひとつひとつの画素の中には、赤(Red)・緑(Green

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写真のしくみ ⑪ 暗い場所でも明るく撮れるISO感度と露出の三角形

💡シリーズ「写真のしくみ」について 光はまっすぐ進み、レンズは世界をひっくり返す。写真と映像にひそむ小さな「なぜ?」を、数式なしで解き明かす全40回。 夜の街、室内のパーティー、薄暗い水族館。暗い場所で写真を撮ると、思ったよりずっと暗く写ってしまうことがあります。「もっと明るく撮れないのかな?」と思ったことはありませんか? この回では、その「もっと明るく」を実現するための道具、ISO感度(アイエスオーかんど)のしくみを解き明かします。さらに、カメラが写真の明るさを決めるために使っている3つの道具の関係、通称 「露出の三角形」 まで一気にたどりつきましょう。 暗いところで写真が撮れない! 写真が写るには「光」が必要です。明るい場所にはたくさんの光があるから、カメラは楽に写真を撮れます。でも暗い場所では光が少ないので、カメラに届く光の量も少なくなります。 光が足りないまま撮ると、写真は暗くなってしまいます。まるで、かすかな声を聞き取ろうとしているようなものです。声(光)が小さすぎて、うまく聞こえない(写らない)というわけですね。 ではどうすればいいでしょう? 方法は大きく分

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写真のしくみ ⑦ センサーサイズで画角が変わる理由とフルサイズ換算のしくみ

💡シリーズ「写真のしくみ」について 光はまっすぐ進み、レンズは世界をひっくり返す。写真と映像にひそむ小さな「なぜ?」を、数式なしで解き明かす全40回。 同じレンズをつけているのに、カメラを変えたら写真に写る範囲が変わった。そんな経験をしたことはありませんか? あるいは、カメラのカタログで「フルサイズ換算○○mm相当」という表記を見て、首をかしげたことはないでしょうか。今回はその正体、センサーサイズと画角の関係を一緒に解き明かしていきましょう。 いきなり実験! 同じレンズなのに写る範囲がちがう? ちょっと想像してみてください。ここに2台のカメラがあります。1台は「フルサイズ」と呼ばれるカメラ。もう1台は「APS-C」と呼ばれるカメラです。 この2台に、まったく同じレンズをつけます。同じ場所に立って、同じ景色にレンズを向けて、シャッターを切ります。 さあ、撮れた写真を並べてみると……あれ? 写っている範囲がちがう。 フルサイズで撮ったほうが景色を広く写していて、APS-Cで撮ったほうはまるで少しズームしたかのように、狭い範囲だけが大きく写っています。 レンズは同じなのに、い

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写真のしくみ ㊳ 目とカメラはそっくりなのになぜ写真と見た目は違うのか

💡シリーズ「写真のしくみ」について 光はまっすぐ進み、レンズは世界をひっくり返す。写真と映像にひそむ小さな「なぜ?」を、数式なしで解き明かす全40回。 前回は、画面や紙の上で写真の色がどう再現されるかを見ました。今回は視点をぐるりと変えて、写真を「見る」側、つまり人間の目のしくみに迫ります。 きみは今、この文章を読んでいます。 当たり前のことですが、ちょっと立ち止まって考えてみてください。きみの目は、どうやってこの文字を「見て」いるのでしょう? じつは、目のしくみをよく調べてみると、カメラとびっくりするほど似ていることがわかります。でも、決定的にちがうところもある。今回は、「見る」という行為の正体にせまっていきましょう。 カメラのパーツと目のパーツを並べてみよう カメラの基本的なしくみを思い出してみてください。レンズが光を集めて、絞りが光の量を調節して、センサー(またはフィルム)が光を記録する。この3つが写真を撮るための基本セットでした。 人間の目にも、この3つにあたるパーツがちゃんとあります。 角膜と水晶体 → レンズ 目の一番外側にある透明な膜を「角膜(かくま

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写真のしくみ ㊱ 虹・ハロ・逃げ水・光芒が生まれるしくみと撮り方

💡シリーズ「写真のしくみ」について 光はまっすぐ進み、レンズは世界をひっくり返す。写真と映像にひそむ小さな「なぜ?」を、数式なしで解き明かす全40回。 雨あがりの空にかかる虹、太陽のまわりにぽっかり浮かぶ光の輪、夏の道路にキラキラ現れる幻の水たまり、雲のすきまから降りそそぐ光のカーテン。 ふだん何気なく「きれいだなあ」と眺めている空の現象には、どれもちゃんとした理由があります。しかも、そのしくみはびっくりするほどシンプルです。光がまっすぐ進み、何かにぶつかって曲がったりはね返ったりする。たったそれだけのルールで、これだけドラマチックな光景が生まれるのです。 今回は、虹・副虹・ハロ・逃げ水・光芒という5つの「空のふしぎ」を追いかけてみましょう。 虹のひみつ 雨あがりの空に大きなアーチを描く虹。あの美しい色のならびは、いったいどうやって生まれるのでしょうか。 雨つぶは小さなプリズム 理科の授業でプリズム(三角柱のガラス)に白い光を通すと、赤・橙・黄・緑・青・藍・紫の色に分かれるのを見たことはありませんか。虹が生まれるしくみは、まさにあのプリズムと同じです。ただし、プリズ

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写真のしくみ ㉟ 空の青と夕焼けの赤を生む光の散乱

💡シリーズ「写真のしくみ」について 光はまっすぐ進み、レンズは世界をひっくり返す。写真と映像にひそむ小さな「なぜ?」を、数式なしで解き明かす全40回。 空を見上げてみてください。 昼間はまっさおな青。夕方になると燃えるようなオレンジや赤。朝焼けはやさしいピンクで、曇りの日の雲は白、雨雲はどんよりした灰色。同じ空なのに、こんなにも色が変わるのはなぜでしょう? じつはこの秘密、ぜんぶ「光の散乱」というひとつのしくみで説明できてしまいます。今回は、空の色の正体をいっしょに追いかけていきましょう。 太陽の光は「白」じゃない まず、大前提の話から始めましょう。 ふだん何気なく浴びている太陽の光。あれは「白い光」だと思っている人が多いかもしれません。けれど、太陽の光をプリズム(三角柱のガラス)に通すと、赤・橙・黄・緑・青・藍・紫と、虹のようにたくさんの色に分かれます。ニュートンが17世紀にやった有名な実験です。つまり太陽の光は、いろいろな色の光が全部混ざった「ごちゃまぜの光」なのです。 色の正体は、

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写真のしくみ ③ 虹が7色に分かれる理由と目に見えない光の正体

💡シリーズ「写真のしくみ」について 光はまっすぐ進み、レンズは世界をひっくり返す。写真と映像にひそむ小さな「なぜ?」を、数式なしで解き明かす全40回。 太陽の光は何色でしょうか。「白」、あるいは「とくに色はついていない」と答える人がほとんどだと思います。ところが、その白い光の中には、赤から紫まで虹のすべての色がこっそり隠れています。それだけではありません。人間の目には絶対に見えない「光」さえ存在するのです。 今回は、光の「色」の正体をさぐり、虹がなぜあんなにきれいに色分かれするのかを解き明かしていきます。そして最後には、目に見えない光の世界にも足を踏み入れてみましょう。 白い光をプリズムで分解する 文房具屋やインテリアショップで、三角柱の形をした透明なガラスを見たことはありませんか。あれをプリズムといいます。 このプリズムを窓辺に持っていって、太陽の光を通してみましょう。すると、壁や床の上に、赤・橙・黄・緑・青・藍・紫と並んだ色の帯がふわっと現れます。白かったはずの光が、色とりどりに分かれたのです。 🔬この実験を世界で初めて体系的に行い、記録に残したのが、イギリスの科

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写真のしくみ ㊵ 写真のすべては光でつながっている

💡シリーズ「写真のしくみ」について 光はまっすぐ進み、レンズは世界をひっくり返す。写真と映像にひそむ小さな「なぜ?」を、数式なしで解き明かす全40回。 いよいよ最終回です。全40回にわたって続いてきた「写真のしくみ」の旅も、今回でおしまい。 第1回で「光はまっすぐ進む」というたった一つの事実を手にしたところから、ぼくたちの冒険は始まりました。あのとき、まさかここまで遠くに来るとは思わなかったでしょう。レンズの中に逆さまの世界が映ること。シャッターのほんのわずかな時間のちがいで写真がまるで変わること。色という存在がじつは光の波長のちがいにすぎないこと。ぼくたちはたくさんの「えっ、そうだったの?」に出会ってきました。 この最終回では、40回の旅路をもういちど最初からたどりなおしてみましょう。ばらばらに見えていた知識が、じつはひとつの物語としてつながっていることに気づくはずです。 光の旅をたどりなおそう はじまりは「光はまっすぐ進む」 このシリーズで最初に学んだのは、光が持つもっとも基本的な性質でした。光はまっすぐ進む。当たり前のように聞こえますが、この「まっすぐ」がなかっ

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写真のしくみ ⑨ カメラの「瞳」が明るさをあやつる

💡シリーズ「写真のしくみ」について 光はまっすぐ進み、レンズは世界をひっくり返す。写真と映像にひそむ小さな「なぜ?」を、数式なしで解き明かす全40回。 カメラの中をのぞいたことはありますか。レンズの奥に、何枚もの金属の羽根でできた穴が見えます。この穴は大きくなったり小さくなったりして、写真の明るさもボケも変えてしまう。今回は、きみ自身の目にも備わっている「絞り」のしくみと、写真の世界で使われる「F値」の正体に迫ります。 きみの目の中にも「絞り」がある 暗い部屋から急に外に出ると、まぶしくて目がくらむことがありますよね。でも少し待つと、ちゃんと景色が見えるようになります。逆に、明るい場所から暗い部屋に入ると、最初は何も見えないのに、だんだん目が慣れてくる。 これ、きみの目の中で何が起きているか知っていますか? きみの目の中には「虹彩(こうさい)」という色のついた部分があります。日本人なら茶色っぽく、ヨーロッパの人なら青や緑に見えるあの部分です。虹彩の真ん中に開いている黒い穴が「瞳孔(どうこう)」。ふだん「瞳」と呼んでいるのは、実はこの穴のことなんです。 明るい場所では、虹

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写真のしくみ ⑮ 絞りすぎると逆にぼやける理由と最もくっきり写るF値

💡シリーズ「写真のしくみ」について 光はまっすぐ進み、レンズは世界をひっくり返す。写真と映像にひそむ小さな「なぜ?」を、数式なしで解き明かす全40回。 前回までで、ピントとボケのしくみを見てきました。絞り(F値)を絞れば絞るほど、ピントの合う範囲が広がって、写真はくっきりしていく。それが基本でしたね。 だったら、絞りをめいっぱい絞ればいいじゃないか。F16、F22、もっと絞れるなら絞ってしまえ。そうすれば、すみずみまでカリッとした、最高にくっきりした写真が撮れるはずだ。 ……ところが、そうはいかないのです。 実は絞りすぎると、写真は逆にぼんやりしてしまいます。「えっ、どうして?」と思いますよね。ここには、光という存在そのものの性質と、レンズという道具の宿命が関わっています。今回は「くっきり」の限界に迫っていきましょう。 絞りすぎると起こる「回折」 光は波だ まず、大事なことをひとつ。光は「波」です。 ちょっと意外に聞こえるかもしれません。ふだん光というと、懐中電灯からまっすぐ飛ぶ「線」

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写真のしくみ ⑥ 画角と焦点距離が決める写る範囲の広さ

💡シリーズ「写真のしくみ」について 光はまっすぐ進み、レンズは世界をひっくり返す。写真と映像にひそむ小さな「なぜ?」を、数式なしで解き明かす全40回。 前の回で、焦点距離は「レンズから像ができる場所までの距離」だと学びました。では、この数字が変わると、写真にはいったい何が起きるのでしょう。今回は、焦点距離と写る範囲の関係を身近なたとえで解き明かしていきます。 「ズーム」って、結局なんの話? カメラ屋さんのレンズ売り場を歩くと、箱にかならず書いてある数字があります。18mm、35mm、50mm、200mm…。この焦点距離が変わると、写真の何が変わるのか。 答えをひとことで言うと、こうなります。 焦点距離が短い(数字が小さい)ほど、広く写る。焦点距離が長い(数字が大きい)ほど、せまく写る。 これだけです。とてもシンプル。でも、「なぜそうなるの?」を知ると、カメラのことがぐっとおもしろくなります。今回は、そこを探検していきましょう。 窓からのぞくと、なにが見える? いきなりレンズの話をする前に、

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写真のしくみ ⑳ りんごが赤い理由と色が見えるしくみ

💡シリーズ「写真のしくみ」について 光はまっすぐ進み、レンズは世界をひっくり返す。写真と映像にひそむ小さな「なぜ?」を、数式なしで解き明かす全40回。 私たちは毎日、色にあふれた世界で暮らしています。でも「色」は、光のなかにも、目のなかにも、そのままの形では存在していません。光と目と脳が協力してはじめて生まれるものです。 今回は、りんごの赤をきっかけに、色覚のしくみをたどり、デジタルカメラとの意外な共通点まで見ていきましょう。 りんごは「赤い光」を投げ返している きみの目の前に、つやつやの赤いりんごがあるとしましょう。「りんごは赤い」なんて当たり前すぎて、ふだんは気にもとめませんよね。でも、ちょっと待ってください。そもそも、なぜりんごは赤く「見える」のでしょう? 答えを先に言ってしまいましょう。りんごが赤いのは、りんご自身が赤い光を出しているからではありません。 りんごは太陽や蛍光灯の光を浴びて、そのなかの「赤い成分」だけを跳ね返し、残りの色の光をぜんぶ吸い込んでいます。跳ね返った赤い光だけが私たちの目に届くから、りんごは赤く見える。それだけのことです。 たとえ話をしま

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写真のしくみ ㊲ 画面と紙で写真の色が変わるわけ

💡シリーズ「写真のしくみ」について 光はまっすぐ進み、レンズは世界をひっくり返す。写真と映像にひそむ小さな「なぜ?」を、数式なしで解き明かす全40回。 写真を撮った。よく撮れた。さあ、誰かに見せたい。 そのとき写真は、スマホの画面に映るか、紙にプリントされるか、どちらかの姿をとります。画面で見た写真と、プリントした写真。同じデータのはずなのに、色がちょっと違って見えたことはありませんか。「あれ、画面ではもっと鮮やかだったのに」「プリントしたら暗くなった」。これは気のせいではありません。画面と紙では、色をつくるしくみそのものが根本的に違うからです。 今回は、ディスプレイとプリンターがそれぞれどうやって色をつくっているのかをのぞいてみましょう。そして、なぜ画面と紙で色がずれるのか、その理由をつきとめます。 画面の中の小さな光たち スマホやパソコンの画面を、虫めがねでぐーっと拡大してみたことはありますか。やってみると、びっくりする光景が広がっています。画面は、ものすごく小さな光の粒でびっしり埋め尽くされているのです。 この粒のひとつひとつを ピクセル(画素)と呼びます。そして

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