大学生活

You arrived on campus and nobody handed you a manual. These entries cover what no syllabus mentions: how to register courses without regret, how to write a report that doesn't embarrass you, which tools actually help, and how to survive the strange social physics of lecture halls, group work, and empty periods between classes. Practical, sometimes blunt, written for the student who just wants to know what to do next.

大学生活

大学生の「暇」は退屈か、意味の不在か

「暇だ」と言いながら、スマートフォンの画面をスクロールし続ける。やるべき課題は積まれているのに、なぜか「暇」と感じる。この矛盾は、「暇」という言葉が指しているものが、実は時間の空白ではないことを示している。 「暇」は時間の問題ではない 「暇」と感じるとき、多くの場合、物理的に何もしていないわけではない。SNSを眺め、動画を流し見し、メッセージに返信している。時間は消費されている。にもかかわらず「暇」なのは、そこに「意味のある予定」が存在しないからだ。 「暇」の正体は、時間の余りではなく、時間に対する意味づけの不在にある。予定があること、つまり「やるべきこと」「行くべき場所」「会うべき人」が時間を構造化する。その構造がないとき、時間はただ流れるものになり、それを「暇」と呼ぶ。 退屈の心理学 心理学者ジョン・イーストウッドらの研究は、退屈(boredom)を「注意を向けたい対象が見つからず、その状態を不快に感じること」

By Sakashita Yasunobu

大学生活

履修登録の風

春になると、大学のキャンパスにはある種の空気が漂う。履修登録期間だ。 掲示板の前で時間割を睨む顔。シラバスの画面をスクロールする指。「あの授業、楽単らしいよ」という囁き。数日のあいだに、半年間の学びの全体像が決まる。否、「決まってしまう」と言ったほうが正確だろう。 GPAから逆算する 結論から言う。大学では、得意な科目を選べ。 身も蓋もない言い方に聞こえるかもしれない。しかしこれは精神論ではない。GPAの計算式から導かれる、構造的な結論だ。 GPAは加重平均だ。大学生は履修上限を超える意味がないで詳しく書いたが、科目を増やしても平均は上がらない。追加した科目の成績が現在の平均と同じなら、GPAは変わらない。平均以下なら下がる。上がるのは、平均以上の成績を取れたときだけだ。 つまり、GPAを守る最も確実な方法は、自分が高い成績を取れる見込みのある科目を選ぶことだ。それは多くの場合、自分が得意な科目であり、興味のある科目であり、学習の下地がある科目だ。 興味と得意は一致しないことがある ここで正直に書いておく。興味がある科目と、得意な科目は、必ずしも重ならない。 哲学

By Sakashita Yasunobu

大学生活

誰も何も言わない部屋で息をしていた

エレベーターの中で、誰も何も言わない。目のやり場に困り、スマートフォンを取り出す。あの沈黙が不快なのは、人間の本能だと思っている人が多い。だが、そうではない。沈黙を「気まずい」と感じるかどうかは、文化によってまるで違う。 沈黙の意味は一つではない フィンランドでは、沈黙は信頼の表れとされる。会話が途切れても、相手が気を悪くしているとは考えない。むしろ「この人の前では黙っていられる」という安心感の証拠になる。一方、アメリカでは会話の途切れは不快とされやすく、沈黙を埋めることが社交スキルとして求められる傾向がある。 日本はどうか。日本には「間」を重んじる美意識がある。茶道や能における「間」は、余白として肯定される。ところが、エレベーターやゼミの質疑応答では、同じ沈黙が途端に気まずくなる。この矛盾は、沈黙そのものではなく、沈黙が生じる「場」の構造に原因がある。 なぜ沈黙が圧力になるのか 会話分析(Conversation Analysis)の分野では、「ターン・テイキング」という概念がある。会話は話者が交互に「ターン」を取ることで成立しており、

By Sakashita Yasunobu

大学生活

正しさのなかで眠りにつく問いたち

「多様性を尊重しよう」。誰も反対できないこの言葉が、議論のなかで使われると、不思議なことが起きる。議論が終わるのである。 美しい言葉が思考停止装置になるとき 「多様性を尊重しよう」は倫理的に正しい響きを持っている。多様な価値観を認め合おう、異なる背景を持つ人々を排除しないようにしよう。この理念自体に問題はない。 問題は、このフレーズが議論の場で「結論」として持ち出されるときに起きる。価値観が衝突し、どちらかを選ばなければならない場面で「多様性を尊重しよう」と言うことは、判断を保留することと同義になる。しかも、判断を保留していることが道徳的に正しいかのように見えてしまう。 価値衝突は「尊重」では解決しない 現実には、互いに両立しない価値が衝突する場面がある。 たとえば表現の自由と他者の尊厳。ヘイトスピーチを表現の自由として保護すべきか、それとも他者の尊厳を守るために規制すべきか。この問いに対して「多様性を尊重しよう」と答えることは、何も答えていないのと同じである。 「表現の自由も大事だし、尊厳も大事だよね」は事実の確認であって、衝突の解決ではない。どちらを優先するかの判

By Sakashita Yasunobu

ことばと文学

便利な言葉が思考を眠らせる

「すごい」「重要」「さまざま」「多い」。便利な言葉だ。何にでも使えて、文字数も稼げる。だが、これらの言葉は、実は何も言っていない。 レポートの添削で最も多い指摘は、文法のミスではない。「具体的に書いてください」だ。 言葉の節約は思考の放棄である 「言葉の節約」とは、本来なら具体的に書くべきところを、曖昧な言葉で済ませてしまうことを指す。 「この問題はすごく重要である」。何がすごいのか。誰にとって重要なのか。どの程度重要なのか。この一文には情報がほとんど含まれていない。書いた本人は何かを伝えたつもりだが、読み手には何も伝わっていない。 言葉を節約しているように見えて、実際には思考を節約している。「すごい」と書いた瞬間、「何がどの程度すごいのか」を考える作業を放棄している。具体的に言い換える作業こそが、思考そのものだ。 雑語リストと言い換えの方向 大学生のレポートで頻出する曖昧な言葉と、その言い換えの方向性を示す。 「すごい」 何がどの程度そうなのかを数値や比較で示す。「前年比で30%増加した」「他の手法と比較して処理速度が2倍になる」。 「重要」 誰にとって、なぜ重

By Sakashita Yasunobu

大学生活

大学生はいい枕を買え

一人暮らしを始めるとき、ベッドフレームやマットレスにはそれなりに気を使う。でも枕はどうか。ホームセンターで一番安いやつを買って、そのまま何年も使っている人が多いのではないか。 枕は安い。安いのに、睡眠の質への影響が大きい。大学生が限られた予算の中で手を出せる投資として、枕ほどコスパのいいものはなかなかない。 睡眠は成績に出る 「睡眠が大事」なんて言われなくてもわかっている、と思うかもしれない。でも数字で見ると印象が変わる。 カーネギーメロン大学の研究チームが3つの大学の600人以上の一年生に毎晩睡眠トラッカーを装着させ、睡眠と成績の関係を調べた(米国科学アカデミー紀要掲載)。平均睡眠時間は6時間半。毎晩6時間未満の学生は成績が明確に低下し、睡眠が1時間増えるごとに期末の成績がわずかに上がるという相関が出ている。 国内でも似た傾向が報告されている。ある調査では、1日の睡眠時間が6時間以上の学生はGPA上位群に44%いたのに対し、6時間以下の学生はGPA下位群の45%を占めていた。睡眠の質、タイミング、量のすべてが良好な学生群は、学修成果や大学への適応度でも明確に良い傾向を示し

By Sakashita Yasunobu

ことばと文学

哲学書が読めない理由は難しさではない

哲学書を開く。三ページ読む。一行も頭に入っていない。 この経験をした人は多いだろう。そしてたいていの場合、その原因を「哲学は難しいから」に帰着させる。専門用語が多い。文章が回りくどい。抽象的すぎる。だから読めない。 本当にそうだろうか。専門用語は辞書を引けば分かる。「アプリオリ」は「経験に先立つ」であり、「弁証法」は「対立する概念を統合して高次の理解に至る思考法」だ。文章が回りくどいのは事実だが、法律文書だって回りくどい。抽象的だというなら、数学の方がよほど抽象的だ。 哲学書が読めない理由は、難しいからではない。あなたの側に、問いがないからだ。 問いの不在 哲学書は情報を得るための本ではない。 多くの読者が哲学書に挫折するのは、読み方の期待がずれているからだ。新書やビジネス書のように、「結論は何か」、「要点は何か」を探しながら読む。そして見つからない。あるいは見つかったとしても、その結論がなぜ重要なのかが腑に落ちない。 カントの「純粋理性批判」(1781)の結論を一行で書くことは可能だ。「人間の認識能力には限界があり、経験を超えたものについて確実な知識を持つことはできな

By Sakashita Yasunobu

大学生活

大学生がレポートでどう引用すればいいか迷ったら

結論から言う。特に指定がないなら、シカゴ・マニュアル・オブ・スタイル(The Chicago Manual of Style)に従え。 教員から引用スタイルの指定がある場合は、そもそもこの記事を読む必要はない。指定どおりに書けばいい。この記事が対象としているのは、「特に指示がなくて、何をどう書けばいいかわからない」という人だ。 なぜシカゴ・マニュアルなのか シカゴ・マニュアルは、人文科学系で最も広く使われている引用スタイルだ。歴史学、文学、哲学、芸術などの分野で国際的に採用されている。 人文社会系のレポートを書く場合、シカゴ・マニュアルに従っておけば、形式面で問題になることはまずない。汎用性が高く、書籍、論文、Webサイトのいずれにも対応している。 二つの方式がある シカゴ・マニュアルには、二つの引用方式がある。 脚注・参考文献方式(Notes-Bibliography) は、引用箇所に脚注番号を振り、ページの下部または文書の末尾に文献情報を記載する方式だ。歴史学、文学、哲学の分野でよく使われる。 著者名・

By Sakashita Yasunobu

ことばと文学

取り消せないものを背負いなおも歩く

誰にでも、思い出すと胸のあたりが重くなる過去がある。 深夜に突然蘇る、何年も前の失言。もう関係のない相手に向けた、取り消せない行動。記憶の底に沈めたはずの場面が、何の前触れもなく浮上して、布団の中で目を閉じたまま呻く。あの経験を、多くの人が共有しているだろう。 「やらかし」という言葉は軽い。だがその軽さの裏には、自分自身の過去をどう扱えばいいか分からないという、重い問いが隠れている。罪は永遠に背負い続けなければいけないのか。変わった自分は、過去の自分と同じ人間なのか。赦しとは何であり、誰に権利があるのか。 時効は三つある 法的には、時効という制度がある。刑法にも民法にも、一定の期間が経過すれば刑事責任や損害賠償請求権が消滅する仕組みが組み込まれている。社会制度としての法は、「永遠に罰する」設計にはなっていない。 しかし「社会的な時効」と「法的な時効」と「心理的な時効」は、それぞれ別の時計で動いている。 法的な時効が成立しても、社会がそれを忘れるとは限らない。インターネット以降、記録は消えない。デジタルタトゥーという比喩が定着したのは、一度オンラインに刻まれた情報が、本人の

By Sakashita Yasunobu

倫理と思考実験

自販機の前

自販機の前に立つ。30本ほどの飲み物が並んでいる。数秒、迷う。結局、いつもと同じものを買う。 この数秒間に、何が起きているのか。たかが飲み物の選択にすぎない。しかし、その「たかが」の中に、意思決定の構造がそのまま映し出されている。 二つのシステム ダニエル・カーネマンは2011年の著書『ファスト&スロー』で、人間の思考を二つのシステムに分けた。システム1は直感的で高速な処理。システム2は論理的で低速な処理。日常の大半の判断はシステム1が担っている。 自販機の前での選択は、典型的なシステム1の領域だ。ボタンを押すまでに、価格、味の好み、気温、喉の渇き具合、前回の経験といった変数が、意識にのぼることなく統合されている。「なんとなくこれ」という直感は、怠惰ではなく、高速な情報処理の結果だ。 ただし、新商品が並んでいるときは事情が変わる。見たことのないパッケージが視界に入った瞬間、システム2が起動する。「これは何だろう」「おいしいだろうか」「値段は」。処理速度が落ち、選択に時間がかかる。自販機の前で立ち止まる時間が長い人は、優柔不断なのではなく、新しい情報を処理しているだけかもしれ

By Sakashita Yasunobu

大学生活

大学のレポートのフォントサイズ

指定がなければ、10.5ptか11ptを選べばいい。 これが結論だ。ただし、フォントサイズだけを決めても体裁は整わない。行間や余白とのバランスを理解しておくと、より読みやすいレポートになる。 10.5ptと11pt Microsoft Wordの日本語版では、本文のフォントサイズの初期設定は10.5ptになっている。日本の公文書やビジネス文書でも10.5ptが標準として広く使われており、特に理由がなければこのサイズが無難だ。 11ptはわずかに大きいだけだが、文字の視認性がやや上がる。行数が少し減るため、同じ内容でもページ数がわずかに増える傾向はあるものの、読みやすさを優先するなら11ptも合理的な選択だ。 どちらを選んでも、減点されることはまずない。大切なのは、文書全体でサイズを統一することだ。 指定がある場合 教員からフォントサイズの指定がある場合は、それに従う。指示を無視してまで自分の好みを通す理由はない。レポートの書式に限らず、指定されたルールに従うこと自体が課題の一部だ。 行間と余白のバランス フォントサイズだけでは、読みやすさは決まらない。行間が詰ま

By Sakashita Yasunobu

大学生活

留学の準備は一年生から

留学は「行きたい」と思った瞬間に行けるものではない。 交換留学の応募締切は出発の半年から一年前に設定されている。語学試験のスコアは一朝一夕では伸びない。奨学金の申請にも書類の準備と審査の時間がかかる。三年生になって「留学したい」と動き出した学生が間に合わないのは、怠けたからではない。構造的に間に合わないようにできているのだ。 この記事では、大学一年生の時点から何をどの順番で準備すれば交換留学に手が届くのかを、タイムラインに沿って整理する。筆者自身、大学在学中に一年間の留学を経験した。その経験を踏まえて、準備段階でやっておくべきだったことも含めて書く。 逆算のタイムライン 三年生の前期に出発する交換留学を想定して、逆算してみる。 JASSOの海外留学情報サイトによれば、高等教育機関への留学は約一年半前から準備を始めることが推奨されている。出願締切が入学の一年前に設定されている大学や奨学金もある。 つまり、三年前期に出発するなら、一年生の後期には準備を始めている必要がある。 具体的なタイムラインはこうなる。 一年生前期(入学直後) * 大学の留学プログラムの概要を把握

By Sakashita Yasunobu