大学生活

You arrived on campus and nobody handed you a manual. These entries cover what no syllabus mentions: how to register courses without regret, how to write a report that doesn't embarrass you, which tools actually help, and how to survive the strange social physics of lecture halls, group work, and empty periods between classes. Practical, sometimes blunt, written for the student who just wants to know what to do next.

大学生活

空いている席が多いのに隣に座る人の心理

図書館のテーブル、フードコートのベンチ、電車のロングシート。空席がたくさんあるのに、わざわざ隣に座ってくる人がいる。悪意はないのだろう。しかし、あの瞬間に感じる居心地の悪さは本物だ。なぜこのズレは起こるのか。 パーソナルスペースの非対称 文化人類学者エドワード・ホールは、人間が他者との距離に対して持つ感覚を4つの層に分類した。密接距離(約0〜45cm)、個体距離(約45〜120cm)、社会距離(約120〜360cm)、公共距離(約360cm以上)。これらはあくまで目安であり、文化や個人差によって大きく変動する。 重要なのは、この距離感が人によって異なるということだ。ある人にとって「適切な距離」が、別の人にとっては「近すぎる」。隣に座ってくる人は、その人自身の距離感に基づいて行動しているにすぎない。問題は、公共空間では個人のパーソナルスペースが可視化されないことにある。 空間選択のクセ 人は席を選ぶとき、必ずしも「他者との距離を最大化する」ように動くわけではない。行動観察の研究では、人が座席を選ぶ際にいくつかの異なる戦略を取ることが確認されている。 端の席を好む人は、壁や

By Sakashita Yasunobu

大学生活

学割が成立する経済的ロジック

学生証の有効期限は、ある日突然やってくる。昨日まで半額だったサブスクリプションが、今日から正規料金になる。月額480円だったものが980円になり、年間で考えれば数千円の差が開く。 この瞬間、多くの人はそのまま正規料金を払い続ける。解約するのが面倒だからではない。もう、そのサービスなしでは生活が回らなくなっているからだ。 企業は、このことをよく知っている。 値引きではなく投資 学割は慈善事業ではない。「学生はお金がないから安くしてあげよう」という温情で動いている企業は、少なくとも上場企業のなかには存在しないと考えてよい。 経済学の用語で言えば、学割は「第三種価格差別」の一形態だ。消費者を識別可能なグループに分け、各グループの支払い意欲に応じて異なる価格を設定する。価格差別と聞くと不穏に響くかもしれないが、経済学では中立的な用語であり、航空券のクラス分けや映画館の割引デイも同じ原理で動いている。 学生は一般に、可処分所得が少ない。月額980円のサービスに対する支払い意欲は、社会人より低い。このとき、全員に980円を課せば、学生の大半は加入しない。しかし480円にすれば、相当数

By Sakashita Yasunobu

大学生活

誰も口を開かない最初の五分間が決めるすべて

「じゃあ、どうする?」 グループワークの最初の5分は、だいたいこの一言から始まる。そして、この一言が出た時点で、すでに崩壊は始まっている。 沈黙の5秒間 4人グループが組まれる。先生が課題を説明し、「では、グループで話し合ってください」と言う。全員が顔を見合わせる。1秒、2秒、3秒。誰も口を開かない。4秒目に誰かが言う。「じゃあ、どうする?」 この「どうする?」は問いのように見えて、問いではない。「誰かやってくれ」という無言の要請だ。そして残りの3人も同じことを思っている。全員が「誰かが始めてくれるのを待っている」状態。これがグループワーク崩壊の第一段階だ。 役割分担という儀式 沈黙に耐えかねた誰かが言う。「じゃあ、役割分担しよう」。 ここで起きるのは、役割の「押し付け合い」ではなく「引き受け合い」の失敗だ。「リーダー誰がやる?」と聞かれて、自分から手を挙げる人はほとんどいない。挙げたら最後、全部の責任を背負わされると直感でわかっているからだ。 結果として、もっとも断れない人がリーダーになる。もっとも声が大きい人ではなく、

By Sakashita Yasunobu

大学生活

終わらない議論の果てに立つということ

哲学科に入るまで、議論は結論を出すためにあると思っていた。 意見をぶつけ合い、正しい側が勝ち、間違った側が折れる。そうして一つの答えにたどり着くのが議論だ、と。テレビの討論番組はそういう前提で設計されているし、ディベート大会にはいつも勝者がいる。議論は決着するもの。それが常識だった。 哲学科に入って、その常識が崩れた。 ゼミで議論していると、終わらない。30分経っても、1時間経っても、結論が出ない。しかも誰もそれを問題だと思っていない。教授は「いい問いが出ましたね」と微笑んで、さらに議論を深める方向に舵を切る。結論を出す気配がない。最初は戸惑った。全員の議論の仕方が下手なのかと思った。しかしそうではなかった。哲学の議論は、終わらないのが正常だった。 なぜ終わらないのか。理由は三つある。それを知らないと、「哲学は結論が出ない無駄な学問だ」という誤解のまま終わる。 前提の無限遡行 哲学の議論が終わらない最初の理由は、前提が底を持たないことだ。 どんな主張にも前提がある。「人を殺してはいけない」という主張の前提は何か。「人間の生命には尊厳がある」かもしれない。ではなぜ人間の生

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大学生活

大学の専攻というかゼミの選び方

大学3年になると、多くの学生がゼミを選ぶことになる。あるいは研究室を選ぶ、指導教員を選ぶ、専攻を決める。呼び方は大学によって違うが、やることは同じだ。卒業論文で何を書くかを、このあたりで決める。 この選択を「将来の就職に有利かどうか」で決める人がいる。「友達がいるから」で決める人もいる。「楽そうだから」で決める人もいる。どれも間違いではない。ただ、もうひとつ、もっと素朴で確かな基準がある。 その分野のスタンダードな読み物を、読めるかどうか。 読めるかどうかで判断する どの学術分野にも、入門者がまず参照すべき定番のリソースがある。教科書、百科事典、論文データベース、学術雑誌。それらは、その分野の知見を体系的にまとめた一次的な参照先だ。 たとえば哲学なら、以下のようなものがある。 * Stanford Encyclopedia of Philosophy(plato.stanford.edu)。スタンフォード大学が運営する査読付きの哲学百科事典。各項目はその分野の専門家が執筆し、定期的に更新される。無料で全文が公開されており、学部生から研究者まで幅広く参照されている。 *

By Sakashita Yasunobu

ことばと文学

言葉のなかの見えない距離

「年上だから敬語を使う」。多くの人がそれを当然のルールとして受け入れている。だが、考えてみてほしい。ただ先に生まれたというだけの理由で、なぜ言葉の形式を変えなければならないのか。時間を長く過ごした人が必ず敬意に値するなら、何もせずに過ごした時間にも価値があることになる。 敬語は「尊敬の表現」だと教わる。しかし実際には、敬語はもう少し複雑な機能を担っている。 敬語は距離の調節装置である 日本語の敬語は、大きく5種類に分類される。尊敬語、謙譲語I(謙譲語)、謙譲語II(丁重語)、丁寧語、美化語。2007年の文化審議会答申以降、従来の3分類からこの5分類に整理された。 この分類を見れば分かるとおり、敬語は単に「相手を持ち上げる」ための装置ではない。自分を下げる表現、場を整える表現、言葉を美しく見せる表現が含まれている。つまり敬語の本質は、話し手と聞き手の距離を調整することにある。 ブラウンとレヴィンソンのポライトネス理論(1987)では、人は対面的なやりとりの中で相手の「フェイス(面子)」を脅かさないように振る舞うとされる。敬語はその最も体系化された道具の一つだ。「いらっしゃいま

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大学生活

図書館をもう少し身近に

本を読むことのハードルは、思っているよりも高い。 「本を読め」と言われる機会は多いけれど、ではなぜ多くの人が読まないのかという問いに正面から答えるのは案外難しい。忙しいから、何を手に取ればいいのかわからないから、そもそも読書という行為が日常から遠いから。理由はいくらでも挙がるし、そのどれもがたぶん本当だ。 大学の図書館には膨大な蔵書がある。自由に手に取って、好きなだけ読める。それだけでも恵まれた環境のはずなのに、実際には試験前の自習スペースとして使われていることが多い。本棚の前を通り過ぎて、席に着いて、ノートを開く。蔵書は風景の一部になってしまっている。 もったいない、と思う。 ただ、「もっと本を読みましょう」という呼びかけだけでは、たぶん何も変わらない。読書の勧めは、すでに読書が好きな人には響くが、そうでない人にはなかなか届かない。必要なのは、呼びかけよりも手前にある、ちょっとした仕掛けなのだと思う。 三つの条件 仕掛けを考えるにあたって、大事にしたい条件が三つある。 誰かの負担にならないこと。 特定の誰かが毎日頑張り続けないと回らない仕組みは、早晩息切れする。できる

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生きること

おそらく人生でもっとも暇な時を過ごす君たちへ

大学受験を終えた高校生。就活を早々と終えた大学生。 何年ものあいだ、勉強や準備に打ち込んできたのだろう。結果がどうであったにせよ、まずはお疲れ様だ。 これから過ごす時間は、おそらく君たちにとって素晴らしい、かけがえのない時間になる。もちろん、そうなるように日々を過ごしていくのは君たち自身だけれど、それでも「やっぱり違った」というなら、そのときは一言文句を言ってくれて構わない。 まだ後期の試験を控えている人、来年に向けてもう一年頑張らなければいけない人もいるだろう。心から応援している。 たぶん人生の前半で、今がもっとも暇で、もっとも目的がなく、もっとも圧力がない。あらゆる意味でもっとも解放された自由な時間だ。人生全体を見渡しても、こうした時間はそう何度も訪れるものではない。 で、大事なのは、この時間をどう使うかだ。 おすすめは美術館に行くことである 唐突だと思う。 普段から美術館に足を運ぶ趣味をお持ちの方には、釈迦に説法だろう。そういう方にはぜひ、お気に入りの過ごし方を教えていただけると嬉しい。 さて、美術と聞くと、なんだか遠い世界のように感じないだろうか。 現代ア

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大学のレポートで使う書式

技術

大学のレポートで使う書式

大学のレポートはWordで作ることが多いと思いますが、Wordのデフォルトテンプレートは欧米基準で作られているのでそのまま使うわけにはいきません。とはいえ、いちいち直しているのでは手間がかかるので、テンプレートを編集してしまおうという話です。 大学で使っているレポートのたたき台としてのテンプレートなので自由に使ってください。 紙面のレイアウト まずは余白と文字数についてです。文字数は授業で支持があればそれに従います。特に指示がなければ、「標準の文字数を使う」でかまわないでしょう。 余白は欧米では広く取られますが、和文では間が抜けて見えるため小さめにとることにします。明確な決まりがあるわけではないので、好きにすればいいのですが、参考までに、私は普段上下左右の余白を17mmに統一しています(A4の場合です)。 デフォルトのフォントなどをレイアウト画面から設定できるのでここで設定を済ませておきます。 テーマ Word文書は後述しますが、スタイルによってパラグラフごとに管理されています。そしてそれらのスタイルはスタイルセットという形でまとめて管理されています。さらにこのスタイ

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