光と写真
物撮りは遠くから
物撮りがうまくいかない原因は、たいていシンプルだ。近すぎる。 被写体に寄れば寄るほど、手前と奥の距離差が相対的に大きくなる。結果、手前が膨らみ、奥がすぼまる。円筒形のボトルが台形に見え、箱の前面だけが不自然に大きくなる。これは「広角レンズの歪み」と呼ばれがちだが、正確ではない。歪みの原因はレンズではなく、距離だ。 パースペクティブは距離で決まる よくある誤解がある。「望遠レンズを使えば歪みが減る」。結論だけ見れば間違っていない。しかし理屈が違う。 パースペクティブ、つまり遠近感の見え方を決定するのは、カメラと被写体の距離だけだ。焦点距離は画角を変えるが、パースペクティブそのものには関与しない。同じ距離から撮れば、35mmで撮ってもトリミングしても、85mmで撮っても、パースペクティブは同じになる。 望遠レンズで「歪みが減る」のは、同じ大きさに被写体を写そうとすると、焦点距離が長いぶん後ろに下がらざるを得ないからだ。離れるから歪まない。レンズが歪みを消しているのではなく、距離が歪みを消している。 物撮りでマクロレンズの90mmや105mmがよく使われるのも、これが理由だ。マ