日常の構造
信じた者から沈んでいく
信頼しろ、と世界は言う。協力は美徳であり、裏切りは悪だ、と。だが、もしあなたが合理的であればあるほど、裏切ることが唯一の正解になる構造があるとしたら。囚人のジレンマとは、善意を持つことが構造的に不利になる世界の設計図だ。 二人の囚人、二つの部屋 1950年、RAND研究所のメリル・フラッドとメルヴィン・ドレシャーが一つの実験を設計した。のちにアルバート・タッカーが「囚人」の物語として再定式化し、この名がついた。 二人の共犯者が別々の部屋で尋問されている。互いに連絡はとれない。選択肢は二つ。黙秘するか、自白するか。 両方が黙秘すれば、証拠不十分で軽い刑になる。片方だけが自白すれば、自白した方は釈放され、黙秘した方は最も重い刑を受ける。両方が自白すれば、両方ともそこそこの刑を受ける。 さて、あなたは黙秘するか、自白するか。 裏切りが「支配戦略」になる 相手が黙秘するなら、自白したほうが得だ。釈放されるから。相手が自白するなら、やはり自白したほうが得だ。最悪の刑を避けられるから。相手が何をしようと、自白が合理的な選択になる。 ゲーム理論はこれを「支配戦略」と呼ぶ。