生きること
自由意志を手放せない
あなたの意志で読み始めたと思っているこの文章は、138億年前にすでに決まっていたのかもしれない。 問いの形をした罠 「自由意志は存在するのか」。 この問いには不思議な性質がある。考えれば考えるほど、自由意志の存在を否定する方向に議論が傾いていく。物理法則は決定論的に振る舞い、脳は化学反応の連鎖であり、「選択」と呼んでいるものはニューロンの発火パターンにすぎない。論理的に突き詰めれば、自由意志が入り込む余地はどこにもないように見える。 それなのに、大多数の人間はいまだに自由意志を信じている。哲学者ですらそうだ。PhilPapersの大規模調査(2020年)によれば、哲学者の約59%が両立論(コンパティビリズム)を支持している。つまり、決定論が真であっても自由意志は成立しうると考えている。 なぜか。 「証拠があるから」ではない。「論証が強いから」でもない。おそらく、信じたいからだ。 そしてここに、この問いの本当の罠がある。「自由意志は存在するか」という問いは、いつの間にか「なぜ私たちは自由意志を信じたいのか」という、まったく別の問いにすり替わっている。 決定論の冷たい論