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ことばと文学

黒猫とアメリカの闇

📝本稿は筆者が大学の授業で学んだ内容をもとに、独自の考察を加えて再構成したものである。 エドガー・アラン・ポーは世界初の推理小説『モルグ街の殺人』の作者として知られるが、彼の文学的業績はミステリの発明だけにとどまらない。ポーはアメリカ・ロマン派のもっとも暗い側面を体現した作家でもあった。1843年に発表された短編『黒猫』は、人間心理の奥底に潜む「闇の力」を描いた作品であり、アメリカ文学におけるロマン主義の本質を理解するうえで欠かせない一作である。 アメリカ・ロマン派の思想的背景 『黒猫』を読み解くためには、まずアメリカにおけるロマン主義の位置づけを確認しておく必要がある。 西洋文学史は大きく、古典主義からロマン主義、そしてリアリズムへと流れをたどる。古典主義は古代ギリシア・ローマの理想化された作品への回帰を志向し、リアリズムは19世紀半ばに社会や日常をあるがままに描く流れとして現れた。その間に位置するロマン主義は18世紀末にヨーロッパで興起し、感情や神秘体験、想像力を重視して、形式的な制約からの解放を追求した。 アメリカにおける思想の流れはさらに独自の展開を見せる。16世

By Sakashita Yasunobu

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ポーとミステリの誕生

📝本稿は筆者が大学の授業で学んだ内容をもとに、独自の考察を加えて再構成したものである。 ミステリとは何か。この問いに対する答えは、時代や論者によって少しずつ異なる。 江戸川乱歩は1951年の『幻影城』において「探偵小説とは、主として犯罪に関する難解な秘密が、論理的に、徐々に解かれて行く径路の面白さを主眼とする文学である」と定義した。一方、イギリスの批評家H・R・F・キーティングは1987年の『Crime and Mystery: The 100 Best Books(ミステリ百選)』において、ポーからP.D.ジェイムズに至る100作を選出しながら「エンタテインメントとしての価値を第一に書かれた小説であり、その主題が何らかの犯罪の形をとっている小説」をミステリの基本的な枠組みとして論じている。両者に共通するのは、犯罪にかかわる謎解きが物語の核であるという認識だ。 ところが、これらの定義には欠けているものがある。乱歩の定義はいわゆる「本格ミステリ」にしか当てはまらず、サスペンスやハードボイルドのような幅広いミステリの領域をカバーできない。そしてどちらの定義にも、主人公への視点が含ま

By Sakashita Yasunobu

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モダリティと語用論

📝本稿は筆者が大学の授業で学んだ内容をもとに、独自の考察を加えて再構成したものである。 文法的に正しい文を作れるだけでは、円滑なコミュニケーションは実現しない。話者の態度を表すモダリティ、場面に応じた文体の選択、談話の一貫性、そして語用論的な配慮まで、日本語のコミュニケーションには多層的な知識が求められる。本稿ではこれらの領域を概観する。 モダリティ: 話者の態度を表す モダリティとは、命題(出来事の内容そのもの)に対する話者の態度や判断を表す文法カテゴリーである。「田中さんが来る」という命題に対して、「来るだろう」(推量)、「来るかもしれない」(可能性)、「来るはずだ」(当然の推論)、「来なければならない」(義務)など、話者の主観的な判断が加わる。 認識的モダリティ 話者の確信度を表すモダリティで、日本語には段階的な表現がある。 確信度が高い順に並べると、「に違いない」(ほぼ確実)→「はずだ」(論理的な推論に基づく確信)→「だろう/でしょう」(推量)→「かもしれない」(可能性)となる。「田中さんは来るに違いない」は「間違いなく来る」という強い確信、「来るかもしれない

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日本語のヴォイス

📝本稿は筆者が大学の授業で学んだ内容をもとに、独自の考察を加えて再構成したものである。 ヴォイス(態)とは、同じ出来事を異なる視点から表現する文法的な仕組みである。日本語のヴォイスには受身・使役・自他動詞の対応などが含まれ、「誰の視点で出来事を語るか」を選択する機能を果たしている。本稿ではこれらの表現を体系的に整理する。 受身文: 出来事を受け手の視点から語る 受身文は、能動文で目的語や影響を受ける側にあたるものを主語に据えて、出来事を語り直す表現である。日本語の受身には大きく分けて3つの種類がある。 直接受身 直接受身は、能動文の目的語を主語にした受身文で、最も基本的な形である。 能動文「先生が学生を褒めた」→ 受身文「学生が先生に褒められた」 能動文の目的語「学生」が受身文の主語になり、能動文の主語「先生」は「に」で標示される。他動詞の目的語がそのまま受身の主語に転換される点が特徴的で、英語の受身文に近い構造をしている。 間接受身(迷惑の受身) 間接受身は日本語独特の受身で、直接的な動作の対象ではない人が、その出来事によって影響(多くの場合は迷惑)を受ける

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テンスとアスペクト

📝本稿は筆者が大学の授業で学んだ内容をもとに、独自の考察を加えて再構成したものである。 日本語の時間表現は、テンス(時制)とアスペクト(相)という2つの文法カテゴリーによって成り立っている。本稿ではル形・タ形によるテンス表現、従属節における相対テンスの仕組み、そして「ている」が持つ多様なアスペクト的意味について整理する。 テンス(時制): ル形とタ形 テンスとは発話時点を基準として、出来事が過去のものか非過去のものかを区別する文法カテゴリーである。日本語のテンスは基本的にル形(辞書形・ます形)とタ形(た形・ました形)の対立で表現される。 ル形は「非過去」を表す。未来の出来事(「明日、映画を見る」)と、現在の習慣・反復(「毎朝コーヒーを飲む」)の両方をカバーする。英語のような現在形と未来形の区別は日本語にはない。 タ形は「過去」を表す。すでに完了した出来事を示す(「昨日、映画を見た」「朝ごはんを食べた」)。 テンスと文の種類 テンスの現れ方は文の種類によって異なる。動詞文では「食べる(非過去)

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格助詞と「は」、「が」

📝本稿は筆者が大学の授業で学んだ内容をもとに、独自の考察を加えて再構成したものである。 格助詞は日本語の文構造を形作る要であり、名詞と述語の関係を明示する役割を担っている。学習者にとっては最も習得が難しい項目のひとつでもある。本稿では各格助詞の用法を概観したうえで、「は」と「が」の使い分け、場所表現の助詞選択について整理する。 格助詞の全体像 格助詞とは、名詞に後接して、その名詞と述語の間の意味関係(格関係)を示す助詞である。日本語の主要な格助詞には「が」「を」「に」「で」「へ」「と」「から」「まで」「より」がある。 「が」: 主語と対象を示す 「が」の最も基本的な機能は主語の標示である。「雨が降る」「花が咲く」のように、動作や状態の主体を示す。 もうひとつの重要な用法が対象の標示である。能力・感情・好悪・願望・可能を表す述語と共に用いられ、「日本語が話せる」「コーヒーが好きだ」「水が飲みたい」のように使われる。これらは「~を」で置き換えられる場合もあるが、基本的には「

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品詞・活用・誤用分析

📝本稿は筆者が大学の授業で学んだ内容をもとに、独自の考察を加えて再構成したものである。 日本語の文法には、学校教育で学ぶ「国文法」と、日本語学習者向けに整理された「日本語教育文法」という2つの体系がある。本稿ではその違いを踏まえながら、品詞の判定方法、動詞の活用体系、そして学習者の誤用分析について概観する。 国文法と日本語教育文法の根本的な違い 国文法は古文の文法との歴史的なつながりを重視した体系であり、学術的な完全性を志向している。一方、日本語教育文法は学習者が実際に日本語を運用することを重視し、国文法をもとに必要なものを吸味して整理しなおしたものである。 その典型的な違いが動詞の分類に現れる。国文法では活用の種類を5つ(五段・上一段・下一段・サ変・カ変)、活用形を6つ(未然・連用・終止・連体・仮定・命令)で整理する。一方、日本語教育文法では活用の種類を3グループに簡素化し、活用形も「ます形」「辞書形」「ない形」「た形」「て形」など機能別に提示する。「話さない」を国文法では「はな(語幹)+さ(未然形)+ない(

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日本語の文字と表記

📝本稿は筆者が大学の授業で学んだ内容をもとに、独自の考察を加えて再構成したものである。 日本語はアルファベット以外の文字を使用し、しかも3つの文字体系を併用する「漢字仮名混じり文」という世界的にも極めて特殊な表記法を持つ。本稿ではまず音声に関する重要な現象を確認したうえで、日本語の文字体系の全体像を概観する。 母音の無声化 母音は本来有声音だが、特定の環境では声帯振動を伴わずに発音されることがある。これが母音の無声化である。無声化しやすいのはイとウの2つで、主に2つの環境で生じる。 第一は無声子音に挟まれた環境で、「くさ」「きかい」「つくえ」などがこれにあたる。第二は無声子音のうしろで後続音がない環境で、「~です」「~ます」の語尾がその典型である。日本語の「です」「ます」が自然に聞こえるためには、語末のウの無声化が重要な役割を果たしている。 音素と異音: 「同じ音」の多様な姿 日本語話者が「同じ音」として認識しているものが、実際にはまったく異なる音として発音されていることがある。音韻論ではこれを「音素」と「異音」の関係として説明する。 代表的な例が撥音「ん」(音素/

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日本語の音声体系

📝本稿は筆者が大学の授業で学んだ内容をもとに、独自の考察を加えて再構成したものである。 日本語の音声には、他の言語にはない独特の特徴がいくつもある。本稿では「外国語としての日本語」という視点から、日本語の音声体系を拍・アクセント・プロソディ・調音の各側面から概観する。 拍(モーラ): 日本語のリズムを支える単位 日本語の音声を特徴づける最も基本的な単位が「拍」(モーラ)である。拍とは、日本語話者にとって長さがほぼ等しいと認識される音韻的な時間単位のことだ。子どもの遊び「グリコ」で一歩ずつ手をたたくリズムに、この拍感覚が如実に現れている。 拍を数える基本原則は「仮名1文字=1拍」である。ただし例外がいくつかある。拗音(「ちゃ」「しゅ」「きょ」など)は仮名2文字で1拍として数える。また特殊拍として長音「ー」、促音「ッ」、撥音「ン」はそれぞれ独立した1拍である。「びょういん」は「び・ょう・い・ん」で4拍、「きっぷ」

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大学

大学の戦略的ガバナンス

📝本稿は筆者が大学の授業で学んだ内容をもとに、独自の考察を加えて再構成したものである。 社会は変わり、大学を取り囲む環境も大きく変わった。これにより大学もよりよいあり方をそれぞれが自問する時期を迎えている。大学が象牙の塔であり続けることは時代に合わなくなっており、効率的な経営が求められるようになった。効果的な経営を戦略的に進めていくうえで、統制には内的なものと外的なものがある。本稿では内的な統制としてガバナンスに着目し、戦略的なガバナンスが求められる背景と今後の展望について論じる。 大学のガバナンスの現在 大学のガバナンスの必要性が生じた背景を、経営という視点と組織モデルという二つの視点から考察する。 経営から見たガバナンスの必要性 Michael Shattock によれば、大学経営の手法は university administration(大学管理)から university management(大学経営)へ、そして現代では strategic management(戦略的経営)へと段階を経て移行しているという(1)。また、Shattock は戦略的経営が注目さ

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大学

大学の国際化

📝本稿は筆者が大学の授業で学んだ内容をもとに、独自の考察を加えて再構成したものである。 大学の国際交流を考えるとき、経営的観点、地理的観点、ナショナリズム的観点など様々な切り口が考えられる。本稿では人的資源の交流という観点から大学の国際交流活動について考察を深め、今後の展開について論じる。 学生の国際交流 学生の国際交流は主に留学というかたちで行われる。海外からの交流としては外国人留学生の受け入れがその最たるものであり、国際交流活動を続けていくうえで留学生への待遇改善は大きな課題である。 滝沢によれば「留学生といえども、わが国で学び、研究する学生・院生であるから、その専門的力を身につけ、さらに高めるために、カリキュラムの改善、指導体制の確立、施設の整備など日本人学生と同様のことを常に意識しなければならない」と主張している(1)。また、外国人留学生の生活保障について「アジアからの留学生にとって、日本での生活費の高さは耐えられないものである。国費留学生にたいする奨学金を含めた種々の待遇改善をはかることはもちろん、私費留学生にたいしても、奨学金の給付、授業料の免除(減免)など、勉

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大学間連携の未来

📝本稿は筆者が大学の授業で学んだ内容をもとに、独自の考察を加えて再構成したものである。 M. Trowによって提唱された大学区分において、日本は現在ユニバーサル型へ変化しており、各大学はそのあり方の見直しに迫られている。そうしたなかで、他大学との提携を結ぶ大学もあらわれている。本稿ではそのあり方について「水平的」および「垂直的」視点から分析し、大学の将来像について模索していくこととする。 水平的連携:大学同士の提携 大学同士の連携のことを水平的連携と呼ぶこととする。水平的連携の視点からは、大学が提携を深めることによって、各大学の資源の有効活用や自身の特色を発揮するだけでなく、成長させることができ、企業における分業化のような効果が期待できる。さらには、社会の大学へのニーズにより的確に応えることができると考えられる。中元によると「共同事業体(大学コンソーシアム)で得ることが可能なメリットとして、(1)スケールメリット(規模の経済による効果)、(2)シナジー(単なる合力を超えた相乗効果)、(3)パイロットプログラム(試行実証・普及)、(4)相互補完(資源を持ち合うことで自大学の特色

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