写真のしくみ ㊱ 虹・ハロ・逃げ水・光芒が生まれるしくみと撮り方

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シリーズ「写真のしくみ」について
光はまっすぐ進み、レンズは世界をひっくり返す。写真と映像にひそむ小さな「なぜ?」を、数式なしで解き明かす全40回。

雨あがりの空にかかる虹、太陽のまわりにぽっかり浮かぶ光の輪、夏の道路にキラキラ現れる幻の水たまり、雲のすきまから降りそそぐ光のカーテン。

ふだん何気なく「きれいだなあ」と眺めている空の現象には、どれもちゃんとした理由があります。しかも、そのしくみはびっくりするほどシンプルです。光がまっすぐ進み、何かにぶつかって曲がったりはね返ったりする。たったそれだけのルールで、これだけドラマチックな光景が生まれるのです。

今回は、虹・副虹・ハロ・逃げ水・光芒という5つの「空のふしぎ」を追いかけてみましょう。


虹のひみつ

雨あがりの空に大きなアーチを描く虹。あの美しい色のならびは、いったいどうやって生まれるのでしょうか。

雨つぶは小さなプリズム

理科の授業でプリズム(三角柱のガラス)に白い光を通すと、赤・橙・黄・緑・青・藍・紫の色に分かれるのを見たことはありませんか。虹が生まれるしくみは、まさにあのプリズムと同じです。ただし、プリズムの代わりに働いているのは空中に浮かぶ無数の雨つぶです。

太陽の光が雨つぶに当たると、次の3つのことが順番に起こります。

  1. 屈折(くっせつ):光が空気から水の中に入るとき、進む速さが変わるため、光の道すじが曲がります。このとき、光にふくまれる色ごとに曲がる角度がわずかにちがうので、白い光が色の成分に分かれはじめます。
  2. 反射(はんしゃ):雨つぶの内側の壁にぶつかった光の一部は、鏡のようにはね返されます。
  3. ふたたび屈折:はね返った光が雨つぶの外に出るとき、もう一度曲がります。ここでさらに色の分かれ方が大きくなります。

この「入るときに曲がる → 中ではね返る → 出るときにまた曲がる」を経た光が私たちの目に届いたとき、空に七色のアーチが見えるのです。

虹はどうして半円なの?

虹をよく見ると、きれいな弧(アーチ)を描いています。平らな帯でもなければ、でたらめな形でもない。なぜでしょう。

その理由は角度にあります。雨つぶの中で1回反射した光は、太陽とは反対の方向を基準にして約42度の角度で私たちの目に届く。この「42度」という数字は、水の屈折率(光の曲がりやすさを決める値)から自然に決まる値です。

ここでちょっと想像してみてください。太陽を背にして立ったとき、自分の頭の影を中心にして42度の方向をぐるりと一周なぞると、それは空中に大きな円を描きます。その円の上にある雨つぶだけが、ちょうどいい角度で光を送り届けてくれるのです。つまり、虹の正体は実は丸い円です。

でも私たちは地面の上に立っているので、円の下半分は地面に隠れてしまいます。だから、ふだん虹は半円(アーチ)に見える。もし飛行機から見下ろすことができたら、足元にも虹が続いているまん丸の虹を見られることがあります。

虹の色はどう並んでいる?

虹の外側は赤、内側は紫。この順番にもちゃんと理由があります。

赤い光は波長が長く、水の中で曲がる角度が小さい。紫の光は波長が短く、曲がる角度が大きい。この差が、赤い光を外側に、紫の光を内側に分けています。その間に橙・黄・緑・青・藍がグラデーションで並びます。すべての色は白い太陽光にもともとふくまれている成分であり、雨つぶがそれを「より分けて」見せてくれているのです。

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やってみよう
虹の内側(紫よりさらに内側)の空は、外側の空よりも少し明るいことに気づいたことはありますか。これは、42度より小さい角度にも光が散らばって届くためです。次に虹を見かけたら、内側と外側の明るさを見くらべてみてください。

もうひとつの虹 副虹(ふくにじ)のふしぎ

運がよいと、虹の外側にもう1本、うっすらとした虹が見えることがあります。これが副虹(ふくにじ)、いわゆる「ダブルレインボー」です。

光が雨つぶの中で2回はね返る

ふつうの虹(主虹・しゅにじ)では、光は雨つぶの中で1回反射してから外に出ました。副虹では、光が雨つぶの中で2回反射してから出てきます。

反射するたびに光の一部は雨つぶの外に漏れ出てしまうので、2回も反射した光はだいぶ弱くなっています。だから副虹は主虹にくらべてずっと淡い。主虹の約10分の1の明るさしかないともいわれています。

2回反射の結果、副虹の光は太陽の反対方向から約50度の角度で目に届きます。主虹が約42度でしたから、副虹は主虹の外側に現れます。そして面白いことに、色の並びが逆になります。副虹では外側が紫、内側が赤。2回目の反射のときに光の道すじがひっくり返るために、こうなるのです。

ふたつの虹のあいだの暗い帯

主虹と副虹のあいだの空をよく見ると、まわりの空よりも少し暗いことがあります。この暗い帯には名前がついています。アレキサンダーの暗帯です。西暦200年ごろにこの現象を記録した古代ギリシャの学者、アフロディシアスのアレクサンドロスにちなんでいます。

なぜ暗いのでしょうか。主虹の光は42度よりも内側に散らばり、副虹の光は50度よりも外側に散らばります。すると、42度から50度のあいだには、どちらの虹からも光がほとんど届かない「空白地帯」ができます。だから、そのあいだの空だけが暗く見えるのです。

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やってみよう
次にダブルレインボーを見る機会があったら、ふたつの虹のあいだと、その外側・内側の空の明るさをくらべてみてください。肉眼でも違いに気づけるはずです。

ハロ(暈) 太陽や月を囲む光の輪

太陽や月のまわりに、大きな白っぽい輪が見えたことはありませんか。まるで光のフラフープのようなこの現象は、ハロ(暈・かさ)と呼ばれています。虹とはまたちがう原因で生まれます。

高い空の氷の結晶

ハロをつくっているのは、地上5kmから10kmという非常に高い空をただよう氷の結晶です。この高さにある巻雲(けんうん)や巻層雲(けんそううん)は、気温がとても低いため、水滴ではなく六角形の柱や板の形をした小さな氷の結晶でできています。

虹が「球形の水滴」によってつくられるのに対し、ハロは「六角柱の氷の結晶」によってつくられます。材料も形もちがうから、光の曲がり方もちがう。結果として、虹とはまったくちがう見た目になるのです。

なぜ「22度」の位置に輪ができる?

六角柱の氷の結晶に光が入り、別の側面から出るとき、その2つの面がちょうど60度の角度をなす場合があります。これはガラスのプリズムとまったく同じ構造です。光がこの60度の面を通り抜けるとき、屈折によって進路を曲げられます。どんな角度で入った光でも、最低でも約22度は曲がる。これを最小偏角(さいしょうへんかく)といいます。

多くの光線がこの22度ちかくの角度に集中するので、太陽や月から22度はなれた位置に明るい輪ができます。これが22度ハロです。腕をまっすぐ伸ばして手を大きく広げたときの、親指の先から小指の先までの幅が、だいたい太陽からハロの輪までの距離の目安になります。

ハロの内側の縁はくっきりしていて、よく見るとほんのり赤みがかっています。赤い光のほうが最小偏角がわずかに小さく、太陽に近い側に集まるからです。一方、外側はぼんやりしています。22度より大きく曲がる光もあるのですが、角度が広がるにつれて散り散りになるためです。

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もっと知りたい人へ
ハロにはもっとめずらしい46度ハロ(光が六角柱の側面と底面を通ることでできる)や、幻日(げんじつ)(太陽の左右にまぶしい光のかたまりが現れる現象)など、さまざまなバリエーションがあります。空にうすい雲がかかっているときは、ぜひ太陽のまわりを注意深く観察してみてください。ただし、太陽を直接見つめると目を傷めるおそれがあるので、建物や手で太陽本体を隠して観察しましょう。

逃げ水 道路にあらわれる幻の水たまり

夏の暑い日、まっすぐなアスファルトの道を遠くまで見わたすと、路面にキラキラした水たまりのようなものが見えることがあります。「あ、水だ!」と思って近づくと、水たまりはスッと消えてしまう。これが逃げ水(にげみず)です。近づけば逃げる。だから「逃げ水」。

熱い路面が光を曲げる

逃げ水の原因は、路面のすぐ上と少し高い場所の空気の温度差にあります。

真夏の強い日差しを受けたアスファルトは非常に高温になります。すると、地面のすぐ上の空気も強く温められ、その上の空気よりもずっと熱くなります。空気は温度が高いほど密度が下がり、光の屈折率(光の曲がりやすさを決める値)がわずかに小さくなります。

この温度差が急激な場合、上空から斜めに降りてきた光は、熱い空気の層に近づくにつれてゆるやかにカーブし、地面に届く前に上向きに折れ曲がってしまいます。その曲がった光が私たちの目に届くと、あたかも路面に空が映っているかのように見えます。私たちの脳は「路面に空が映っている=水面があるにちがいない」と解釈するので、水たまりがあるように感じるのです。

蜃気楼(しんきろう)のなかま

逃げ水は、気象学では下位蜃気楼(かいしんきろう)と呼ばれる蜃気楼の一種です。「下位」というのは、本物よりも下に像が現れるという意味です。砂漠の旅人が遠くにオアシスの水面を見たという話も、原理はまったく同じ。砂に熱せられた空気が光を曲げて、空を地面に映して見せていたのです。

逃げ水は不安定な現象でもあります。熱い空気は軽いので上へ昇ろうとし、冷たい空気が下へ降りてくる。この空気の入れかわり(対流)のために温度の層がつねに揺れ動き、逃げ水はゆらゆらと揺れたり現れたり消えたりします。遠くの景色がモヤモヤとゆがんで見える「かげろう」も、同じ温度のゆらぎが原因です。


光芒(こうぼう) 雲のすきまから降りそそぐ光の筋

夕方、厚い雲のあいだから何本もの光の筋が地上に向かって扇のように広がっているのを見たことはありませんか。まるで天から降りてくる光のカーテンのようなこの現象は、光芒(こうぼう)と呼ばれています。正式には薄明光線(はくめいこうせん)といい、英語ではクレパスキュラー・レイズ(crepuscular rays)といいます。

太陽の光はほぼ平行

太陽は地球からおよそ1億5000万km離れています。これほど遠くにある光源から届く光は、地球上ではほぼ平行です。しかし、光芒はどう見ても太陽の一点から放射状に広がっているように見えます。これはどういうことでしょうか。

答えは遠近法(パースペクティブ)にあります。まっすぐな線路を遠くまで見ると、2本のレールが遠くの一点に向かって集まっていくように見えます。でも、レールが本当に近づいているわけではありません。平行なものでも、遠くへ行くほど狭く見えるのが遠近法です。

光芒もまったく同じ原理です。雲のすきまを通り抜けた太陽光はほぼ平行に進んでいるのですが、遠くのほうの光の筋は狭く見え、手前のほうは広く見えます。そのため、あたかも雲の中の一点から放射しているように見えるのです。まれに光芒が空の反対側まで伸びることがありますが、そのとき反対側でもまた一点に集まるように見えます(これを反薄明光線といいます)。すべて遠近法による見かけの効果です。

なぜ光の筋が目に見えるの?

そもそも、光そのものは横から見えるわけではありません。光がまっすぐ飛んでいても、その光が自分の目に入らなければ見えない。光芒が筋として見えるのは、空気中に浮かぶちりや小さな水滴が光を散乱させるからです。

光が当たっている空間では、ちりや水滴が光を四方八方にはね飛ばし、その一部が私たちの目に届きます。だから「光の通り道」が明るい筋として見えるのです。一方、雲の影になっている部分では、ちりや水滴がいても光が当たらないので暗いまま。この明るい筋と暗い筋のコントラストが、光芒のドラマチックな姿をつくっています。

光芒が夕方や朝方に多く見られ、オレンジ色に染まることが多いのは、太陽が低い位置にあるとき光が大気の中をとても長い距離進むため、波長の短い青い光が散乱して減り、波長の長い赤やオレンジの光がより多く残るからです。


空のふしぎ現象を写真に撮ろう

ここまで読んで「自分も撮ってみたい!」と思った人のために、それぞれの現象を写真に収めるちょっとしたコツを紹介します。

虹を撮るとき

  • 虹は太陽の反対側に現れるので、太陽を背にした方向にカメラを向けましょう。
  • 虹のアーチは大きいので、広角よりのレンズのほうが全体を入れやすいです。
  • 偏光フィルター(PLフィルター)を使うと、虹の色をくっきり写せることがあります。ただし、フィルターの角度によっては逆に虹が薄くなることもあるので、ゆっくり回しながらいちばんきれいに見える位置を探しましょう。

ハロを撮るとき

  • 太陽の方向にカメラを向ける必要があるので、太陽本体を建物の陰や手、木の枝などで隠すと、まぶしさを抑えて撮れます。
  • ハロの輪は大きいので、広角レンズが活躍する場面です。

逃げ水を撮るとき

  • 望遠レンズで遠くの路面をねらうと、ゆらめく逃げ水を大きく写せます。
  • 暑い日の午後、日差しがしっかり当たっているアスファルトの直線道路で見つけやすいです。

光芒を撮るとき

  • 絞りを少し絞る(F8からF11くらい)と、光の筋がくっきり写りやすくなります。
  • 雲のすきまから光が差し込むタイミングは刻一刻と変わるので、見つけたらすばやくシャッターを切りましょう。

この回のまとめ

今回は、空に現れる5つのふしぎな光の現象を見てきました。ポイントをふりかえりましょう。

  • 虹は、雨つぶがプリズムのように太陽光を屈折・反射・分散させて色に分ける現象です。太陽の反対側、約42度の角度に現れます。本当は丸い円ですが、地面に隠れて半円に見えます。外側が赤、内側が紫です。
  • 副虹(ふくにじ)は、雨つぶの中で光が2回反射してできる、もうひとつの虹です。主虹の外側、約50度の位置に現れ、色の順番が逆になります。ふたつの虹のあいだの暗い帯は「アレキサンダーの暗帯」と呼ばれています。
  • ハロ(暈)は、高い空をただよう六角形の氷の結晶が、60度のプリズム面で光を屈折させてつくる光の輪です。太陽や月から約22度の位置に現れ、内側の縁がくっきりと赤みを帯びます。
  • 逃げ水は、真夏の路面近くの熱い空気が光を曲げ、空が地面に映って水たまりに見える現象です。下位蜃気楼の一種で、近づくと消えます。
  • 光芒(薄明光線)は、雲のすきまを通るほぼ平行な太陽光が、空気中のちりや水滴に散乱されて筋として見える現象です。扇形に広がって見えるのは遠近法による見かけの効果です。

どの現象にも共通しているのは、光の屈折・反射・散乱という、とてもシンプルなルールの組み合わせで説明できるということです。特別な道具も難しい計算もいりません。空を見上げて「あれは何だろう?」と思ったら、光がどこから来て、何にぶつかり、どう曲がったのかを追いかけてみてください。それだけで、ふしぎの正体にたどり着けます。

カメラを持って外に出ましょう。空のふしぎは、知れば知るほど美しく、撮れば撮るほど面白いものです。

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