倫理と思考実験
気の利かない問いたち
あなたがこの文章を読み終えるまでに、何ひとつ解決しない。約束する。 ここには答えがない。処方箋もない。読んだ後に世界の見え方が変わるような、気の利いた結論もない。ここにあるのは、2500年以上にわたって誰も解けなかった問いを並べて、その解けなさを眺める、ただそれだけの行為だ。 哲学には長い歴史がある。その長い歴史のなかで解決された問いは、驚くほど少ない。解決したように見えるものも、たいてい、問いの形を変えただけだ。それでも人は問い続ける。深夜2時、天井を見つめながら。シャワーの中で。カフェの窓際で、冷めたコーヒーを前にして。答えが出ないと知りながら。 以下は、そういう問いの集まりだ。考えても仕方のないことばかり。でも、一度考え始めたら、もう戻れなくなるかもしれない。 あなたはもう死んでいる あなたはすでに何度か死んでいる。ただ、誰もそれに気づかなかっただけだ。 5歳のあなたを思い出してほしい。あの子供と今のあなたは、いったい何を共有しているのだろう。記憶はほとんど残っていない。性格も違う。身体を構成する細胞は約7年から10年でほぼすべて入れ替わるから、物質的にもほとんど重