大学生活

You arrived on campus and nobody handed you a manual. These entries cover what no syllabus mentions: how to register courses without regret, how to write a report that doesn't embarrass you, which tools actually help, and how to survive the strange social physics of lecture halls, group work, and empty periods between classes. Practical, sometimes blunt, written for the student who just wants to know what to do next.

大学生活

書けないのは手ではなく問いが止まっているからだ

レポートが書けない。書き始めても手が止まる。何度書き直しても、まとまらない。その原因を「文章力がないから」と片付けてしまう人が多い。だが、ほとんどの場合、文章力は関係ない。 問題は、書き始める前にある。 「テーマを決める」と「問いを立てる」は違う 多くの学生が混同しているのがここだ。「SNSについて書きます」はテーマであって、問いではない。テーマだけでは、何を書けばいいか決まらない。 「SNSの匿名性は政治参加を促進するか、それとも抑制するか」。これが問いだ。問いが立てば、答えるために何を調べればいいかが見えてくる。構成が浮かぶ。根拠を集める方向が定まる。 レポートの出来は、書き始める前に決まっている。問いの質がレポートの質を決める。 弱い問いと強い問い 弱い問いには共通した特徴がある。範囲が広すぎる、答えが自明、あるいは調べれば一発で分かるものだ。 * 弱い問い: 「地球温暖化とは何か」 * 強い問い: 「なぜ地球温暖化の科学的合意にもかかわらず、政策実行が遅れるのか」 弱い問いは、百科事典を要約すれば済んでしまう。強い問いは、複数の視点を検討し、自分なりの

By Sakashita Yasunobu

大学生活

現像ソフトを選び直す

写真を撮り始めた学生がまず手にする現像ソフトは、たいていAdobe Lightroomだ。学割があるし、チュートリアルも多い。周りも使っている。それを否定するつもりはない。 ただ、選択肢がひとつしかないと思っているなら、少し立ち止まってほしい。 Lightroomという「当たり前」 Lightroomが学生の定番になっている理由は明快だ。Adobeは教育機関向けの割引を積極的に展開しており、Creative Cloud全体をまとめて契約する流れの中にLightroomが自然と含まれる。PhotoshopやIllustratorを使う必要があるなら、同じサブスクリプションにLightroomがついてくるのだから、わざわざ別のソフトを探す動機がない。 さらに、ネット上の学習リソースの量ではLightroomが圧倒的だ。プリセットの配布、YouTubeの現像チュートリアル、書籍。入口として近づきやすいのは事実だ。 しかし「入口として近づきやすい」ことと「最も良い選択である」ことは、まったく別の話だ。 Capture Oneという別解 Capture Oneは、デンマークのP

By Sakashita Yasunobu

大学生活

大学生になったら使うことを検討すべきアプリ

大学に入ると、管理すべきアカウントが一気に増える。大学のポータル、履修登録システム、学内メール、図書館、各種Webサービス。高校までとは比較にならない数のIDとパスワードを扱うことになる。 ここで紹介するのは「便利なアプリ一覧」ではない。大学生活で必要になる情報管理の習慣と、それを支える道具の話だ。 パスワードマネージャー 最初に導入すべきはパスワードマネージャーだ。理由は単純で、大学生活ではアカウントの数が爆発的に増えるからだ。 大学のポータル、学内メール、LMS(学習管理システム)、図書館のオンラインサービス、就活サイト、各種SNS。これらすべてに異なるパスワードを設定し、頭で覚えるのは現実的ではない。結果として、同じパスワードを使い回すか、覚えやすい短いパスワードに落ち着く。どちらも危険だ。 令和最新版のパスワード要件で整理した通り、NISTのガイドライン(SP 800-63B-4)はパスワードマネージャーの利用を積極的に支持している。サービス側にはパスワードの貼り付けやオートフィルを許可することが求められており、パスワードマネージャーの利用は現代のセキュリティ基準に

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大学生活

エンジニアを目指す大学生はポートフォリオを作れ

「プログラミングできます」。就職活動の面接でそう言ったとして、面接官はどう判断するだろう。「どのくらいできるんですか」、「何を作ったんですか」。返せる答えがなければ、その一言は空気に溶ける。 ポートフォリオとは、その答えを形にしたものだ。 ポートフォリオは作品集ではない 「ポートフォリオ」と聞くと、デザイナーが見せるような洗練された作品集を想像するかもしれない。エンジニアのポートフォリオは違う。美しさより、中身だ。 エンジニアのポートフォリオとは、自分が何を考え、どんな問題に取り組み、どう解決したかの記録だ。作品の出来栄えだけではなく、その裏にある思考の過程に価値がある。なぜその技術を選んだのか。どこで詰まり、どう乗り越えたのか。何がうまくいき、何がうまくいかなかったのか。 採用担当者がポートフォリオを見るとき、完成度だけを見ているわけではない。この人がどのように考え、どのように学ぶのかを見ている。完璧なアプリケーションひとつより、試行錯誤の痕跡が残った複数のプロジェクトのほうが、その人の技術力と成長の軌跡をよく伝える。 大学生の段階で完璧なポートフォリオを求める必要はな

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大学生活

大学で成績を分析しろ、それも徹底的に

成績通知が届く。あるいは学務システムにログインする。自分の点数が並んでいる。平均点も書いてある。受講者数も、分散も。 そしてほとんどの学生は、単位が取れたことを確認して画面を閉じる。 もったいない。その画面に並んでいる数字には、まだ語られていない情報が眠っている。得意科目の傾向、相性のいい授業の特徴、GPA改善のための具体的な戦略。すべて、すでに手元にあるデータから読み取れる。必要なのは、ほんの少しの計算だけだ。 手元にあるデータを知る 多くの大学では、成績と一緒に以下の情報が科目ごとに提供される。 * 自分の得点 * 受講者数 * 平均点 * 分散(あるいは標準偏差) これだけあれば、かなりのことがわかる。 分散が提供されている場合、標準偏差はその平方根を取るだけで求まる。標準偏差が直接示されていれば、そのまま使える。受講者数は、その科目の母集団の大きさを把握するために必要だ。受講者が10人しかいない科目と300人いる科目では、平均点や分散の信頼性がまるで違う。 ここまでは、ただの下準備だ。本番はここからだ。 偏差値を自分で計算する 偏差値は受験の世界

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大学生活

サークルに入らない学生はどこに居場所を作るのか

4月。キャンパスのあちこちで新歓ビラが配られる。「一緒にやりませんか」、「見学だけでもどうぞ」。大学生活の最初の数週間は、どこかに所属することへの圧力で満ちている。 しかし、サークルに入らない学生は決して少数派ではない。入らない理由も様々だ。興味のあるサークルがなかった。時間がなかった。人間関係が面倒だった。たまたまタイミングを逃した。いずれにせよ、新歓期を過ぎた後、サークルに入らなかった学生は一つの問いに直面する。 自分の居場所を、どこに作るのか。 居場所は所属先ではない 「居場所がない」と言うとき、多くの場合、それは「所属するグループがない」という意味で使われている。しかし、居場所と所属先は同じものではない。 所属先は、名前のある組織だ。サークル、部活、学生団体。入会届を出し、定例の活動に参加し、メンバーとして認知される。一方、居場所はもっと曖昧なものだ。図書館のいつもの席。学食の隅の静かなテーブル。毎週同じ時間に顔を合わせるゼミの仲間。名前がなくても、そこに「いていい」と感じられる場所は居場所になりうる。 所属先がなくても居場所はある。逆に、所属先があっても居場所が

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大学生活

大学生はタイピングを練習しよう

大学の授業でノートパソコンを開いたとき、周囲のキーボードを打つ音が気になったことはないだろうか。隣の席から聞こえる軽快なリズムと、自分の指が一本ずつキーを探す沈黙。その差は才能ではない。練習量の差だ。 フリック入力の達人、キーボードの初心者 スマートフォンでの文字入力には困らない。フリック入力なら一分間に何十文字と打てる。LINEの返信も、検索も、SNSへの投稿も、指先ひとつで済む。しかしキーボードの前に座った途端、その器用さは消える。 これは珍しい話ではない。むしろ、大学に入学してから初めてキーボードをまともに使うという学生は少なくない。名古屋学院大学の児島完二教授による調査では、新入生のタイピングスコア(e-typingによる測定)の平均は104.91ptで、過半数が100を下回っていた。e-typingの基準ではスコア100未満は「練習あるのみ」の水準だ。 つまり、大学生の半数以上は、レポートを書くにも不自由するレベルからスタートしている。 「打てる」と「速い」のあいだ キーボードを見ながら、人差し指でひとつずつキーを押していく。これでも文字は入力できる。打てない

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大学生活

なぜ学内向けサービスはUIが古いのか

大学の履修登録、図書館の蔵書検索、成績確認。これらのシステムを使うたびに、どこか十年前のインターネットに迷い込んだような気分になる。ボタンの配置は直感に反し、画面遷移は不必要に多く、スマートフォン対応はおまけ程度。なぜ、大学のシステムだけが時代に取り残されているのか。 予算だけでは説明できない 真っ先に浮かぶのは予算の問題だ。大学は企業のようにUIに投資する余裕がない、と。 しかし、この説明だけでは不十分だ。世の中にはオープンソースの優れたソフトウェアが数多く存在する。無料で使える学習管理システム(LMS)でさえ、多くの学内システムよりも洗練されたインターフェースを持っている。予算がないから古いのではなく、予算以外の構造的な力が働いている。 実際、大学のIT関連支出は決して少なくない。ネットワークインフラ、セキュリティ対策、サーバ運用。予算は存在するが、その配分先がUI改善に向かわない。IRと大学経営で触れたように、データ活用の重要性が増すなかでも、投資の優先順位は利用者の体験よりも基盤の安定に傾きやすい。 動いているものには触るな IT運用の世界には、暗黙の鉄則がある

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ことばと文学

「主観でしょ」という沈黙の刃

「それって主観でしょ」。議論の中でこの言葉が出た瞬間、会話は終わる。反論として完成しているように見えるこのフレーズは、実際には何も言っていない。正確に言えば、「言っていないこと」があまりにも多い。 このフレーズは何を主張しているのか 「それって主観でしょ」という発言を分解すると、以下のような前提が隠れている。 「あなたの意見は主観的である。主観的なものは客観的ではない。客観的でないものは正しいとは言えない。したがって、あなたの意見は正しいとは言えない。」 一見筋が通っているように見えるが、この推論にはいくつもの飛躍がある。 「主観」と「客観」の雑な二分法 日常語の「主観」は「個人の感想」とほぼ同義で使われる。「客観」は「誰が見ても同じ事実」を意味する。この二分法はシンプルだが、シンプルすぎる。 たとえば「このコーヒーは苦い」という判断は主観か客観か。味覚は個人差があるから主観だと言えるが、カフェインの含有量や焙煎度は客観的に測定できる。「苦い」という判断は、客観的な特性に基づいた主観的な報告である。完全に主観でも完全に客観でもない。 あるいは「この政策は不公平だ」と

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大学生活

「やる気が出ない」は本当に感情なのか

「やる気が出ない」と口にするとき、私たちは自分の内側に何かが欠けていると感じている。やる気という燃料が切れた、と。だからその燃料が補充されるのを待つ。しかし、そもそも「やる気」とは何だ。燃料なのか。感情なのか。それとも、もっと別の何かなのか。 「やる気」という言葉を分解する 「やる気がない」という一語は、驚くほど多くの状態を包み隠している。少なくとも、以下の三つは区別する必要がある。 動機づけ(motivation)。特定の行動を起こす理由や目的がある状態だ。報酬、興味、義務感など、行動の方向を決める力をいう。 意志力(willpower)。やりたくないことを、それでもやる力だ。動機づけとは独立に存在しうる。報酬がなくても、必要だからやる、という場面で使われる。 気分(mood)。その時点での感情的な状態だ。倦怠感、退屈、不安、抑うつ。「やる気が出ない」の多くは、この層に属している。 「やる気が出ない」と言うとき、動機づけが欠けているのか、意志力が消耗しているのか、

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大学生活

講義室に降る小さな棘が論文になるまで

講義中、教授の話を聞いていて、ふと「あ、これ論文になりそうだ」と感じる瞬間がある。その感覚の正体は何か。 それは知識の蓄積から来るのではない。違和感から来る。 研究の種は違和感にある 研究は「たくさん知っているから始められる」のではない。「何かおかしい」「これは本当か」という違和感が、研究の出発点になる。 教授が「一般にXである」と言ったとき、「でも自分の経験ではYだったけど」と感じる。その瞬間、一般論と個別の経験の間にズレが生じている。このズレに気づけることが、研究の種を見つける力だ。 種が見つかる4つのパターン 違和感にはいくつかの典型的なパターンがある。 ズレ。 通説と自分の実感が合わない。教科書には「Aである」と書いてあるが、実際に観察するとAでないケースがある。このズレは「本当にAなのか。どういう条件ではAが成り立たないのか」という問いになる。 例外。 一般論に当てはまらないケースが見つかる。理論が「すべてのBはCである」と主張しているとき、CでないBを一つ見つければ、理論の修正が必要になる。例外は理論の弱点を示す。 矛盾。 AもBも正しいように見えるが

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大学生活

最初の一言が全員の席を決める

グループワークの課題が出た瞬間、教室に微かな緊張が走る。3人から5人のグループに分かれ、テーマについて議論し、成果物をまとめる。大学では何度も経験する光景だ。 そして不思議なことに、何度やっても、同じような役割分担が「自然に」出来上がる。誰かが仕切り始め、誰かが黙り、誰かがなんとなく調整役に回る。メンバーが違っても、構造は似ている。 性格の問題だろうか。もう少し踏み込んで考えてみると、どうもそうではなさそうだ。 最初の30秒で決まる グループワークの役割分担は、最初の30秒でほぼ決まる。 グループが形成された直後、最初に口を開いた人間が、その後のグループ内での発言権を大きく獲得する。最初の発言者が議論の方向を設定し、他のメンバーはその方向に沿って自分の位置を調整する。いわば、最初の一手がゲーム全体の構図を決めてしまう。 一度固定された発言量のバランスは、その後の議論でほとんど変化しない。最初に多く話した人はますます多く話し、最初に黙っていた人はますます黙る。フィードバックループが回り始めると、役割は急速に固定化する。 つまり、リーダーになったのは能力や性格のためではなく

By Sakashita Yasunobu