倫理と思考実験
放棄された問いたち
深夜に、あるいは退屈な午後に、不意にやってくる問いがある。答えを探しているわけではない。答えがあるとも思っていない。ただ問いだけが浮かんで、しばらく漂って、やがて沈む。翌朝にはもう思い出せない。思い出せたとしても、昨夜あれほど切実だったはずの問いが、朝の光の中ではひどく間の抜けたものに見える。 それでも問いは繰り返しやってくる。懲りもせず。 このテキストは、そういう問いの残骸を集めたものだ。体系も結論もない。哲学のふりをしているが、哲学になりきれていない。あるいは、哲学とはもともとそういう半端なものだったのかもしれない。ソクラテスは一冊の本も書かなかった。プラトンがそれを書き留めた。書き留められた時点で、それはもうソクラテスの問いではなくなっていた。 独り言としての対話 会話は根本的に独り言かもしれない。 そう言うと大げさに聞こえるが、実感としてはそれほど突飛でもない。誰かと話しているとき、私たちは本当に相手の言葉を聞いているだろうか。相手が口にした音を耳で拾い、自分の語彙と経験のフィルターに通して、自分の内側で「相手の言いたいこと」を組み立てている。聞いているのは相手の言