生きること
決断できない状態の構造
どちらにするか決められない、と言ったとき、周囲の人間は「どっちでもいいから早く決めろ」と言う。たぶん、その通りだ。どちらでもいい。だからこそ決められない。 似すぎた選択肢 選択肢が二つある。どちらも同じくらい魅力的で、どちらも同じくらい不安がある。AにはAの利点があり、BにはBの利点がある。Aを選べばBの利点を失い、Bを選べばAの利点を失う。 心理学者バリー・シュワルツは『選択のパラドックス』の中で、選択肢が多すぎると人は決断できなくなり、たとえ決断しても満足度が下がると論じた。だが、選択肢が二つしかなくても決断できないことがある。問題は量ではない。選択肢の間の差が小さすぎることだ。 ふたつの選択肢が似ていれば似ているほど、どちらかを選ぶ理由が見つからなくなる。中世の思考実験に、ビュリダンのロバがある。等距離に置かれた二つの干し草の束の間で、どちらに行くか決められずに餓死するロバ。何でもいいと思えるほどに選択肢が拮抗しているとき、「何でもいい」は「何も選べない」に変わる。 正解があるという呪い 決断を阻むもうひとつの構造は、「正解がある」という思い込みだ。 就職先を選