生きること
お金がなくなっても何も解決しない
「もしお金がなかったら、何をして生きる?」 飲み会で誰かがこの問いを放り投げると、場はにわかに活気づく。旅をする、絵を描く、田舎に引っ込む、カフェを開く。返ってくる答えはいつも美しくて、いつも少し嘘くさい。まるでお金だけが、僕たちと「本当の自分」のあいだに立ちはだかる唯一の壁であるかのように。 しかし、もう少し意地悪に考えてみたい。本当にお金が消えたら、あなたはその美しい答えどおりに生きるだろうか。 たぶん、生きない。 欲望は通貨を選ばない お金を「概念ごと」消すという思考実験は、見た目ほど簡単ではない。 お金そのものは、交換を効率化するための道具にすぎない。それが消えたところで、人が何かを欲しがるという事実は変わらない。通貨がなくなれば、別の何かが通貨の役割を担う。時間、信用、労力、あるいはもっと原始的な力関係。歴史を遡れば、貨幣が登場する以前から人間は交換し、蓄積し、奪い合ってきた。 だから「お金がなかったら」という仮定は、少し的を外している。問いの核はもっと奥にある。 いかなる制約もなかったとしたら、あなたは何をしますか。 これに即答できる人を、僕はあまり信用