倫理と思考実験
もう一度、最初から
誰しも一度くらいは考えたことがあるだろう。もし時間を巻き戻して、人生の最初からやり直せるとしたら、何かを変えるだろうか、と。 「変える」と答えるなら 何かを変えたいと思うなら、それは今の自分がどこか最善ではないと感じていることになる。あの時こうしていれば。あの選択をしなければ。そう思うのは自然なことだし、誰にだってそういう瞬間はある。 でも、ひとつ変えたら、今の自分のどこかが消える。ある失敗がなければ出会わなかった人がいる。ある回り道がなければ気づかなかったことがある。ひとつの選択を変えることは、その先に続くすべてを引き換えにすることだ。 「変えない」と答えるなら それはそれで、なかなかの覚悟がいる。すべての苦しみ、すべての失敗、すべての退屈な午後を含めて、もう一度まるごと引き受けるということだから。 どちらに答えても、どこか居心地が悪い。この問いには、正解がない。 記憶の問題 ところで、やり直すとき、今の記憶は残るのだろうか。 もし記憶が残るなら、それは「やり直し」というより「二周目」だ。答え合わせのある人生。正解を知っているテストをもう一度受けるようなもので