大学のあり方を問う

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本稿は筆者が大学の授業で学んだ内容をもとに、独自の考察を加えて再構成したものである。

社会は変わり、大学を取り囲む環境も大きく変わった。少子高齢化、グローバル化、情報技術の進展。こうした変化のなかで大学は何を求められ、どこへ向かおうとしているのか。

筆者は大学の講義を通じて、大学政策に関するレポートを毎回のテーマに沿って執筆した。そのなかで見えてきたのは、大学という組織が抱える課題の多面性である。経営、ガバナンス、入試、研究、地域貢献、国際化。それぞれが独立した問題でありながら、根底では互いにつながっている。

本稿ではこれらのレポートを5つの視点から整理し、各記事への案内とする。

大学と社会

大学は社会のなかでどのような存在なのか。この問いは他のすべてのテーマの出発点となる。

大学と社会の関係性では、企業と大学の類似点に着目し、「公共経営」という概念を手がかりに、大学が企業的手法を取り入れる背景を考察した。営利を目的としない大学がなぜ企業と似た振る舞いを見せるのか。その答えは、公共的課題の解決という共通の目的にある。

大学の理念と個性では、私立大学の教育理念を具体的に取り上げ、建学の精神が大学の個性をどのように形づくるかを分析した。国立大学が地域貢献を掲げる一方で、私立大学は独自の教育理念を前面に打ち出すという対照的な姿が浮かび上がる。

経営とガバナンス

大学がその使命を果たすために、組織としてどう動くべきか。経営とガバナンスは大学の内側を支える骨格である。

大学の戦略的ガバナンスでは、大学経営が管理から戦略的経営へと移行してきた過程をたどり、内的統制としてのガバナンスのあり方を論じた。権力の集中がもたらす迅速な意思決定と、それに伴うリスクのバランスが問われている。

大学の管理運営と多様化では、McNayの四類型を手がかりに、同僚制から企業制への移行を分析した。大学の発展期が終わり安定期に入った今、管理運営のあり方を見直す時期が来ていることを指摘し、大学の多様化の必要性を論じている。

IRと大学経営では、データに基づく意思決定支援としてのIR(Institutional Research)に着目した。ビッグデータやIoTの進展を背景に、大学経営における情報活用の重要性が高まっている。一方で、行き過ぎた効率化への警鐘も鳴らしている。

構成員と入試

大学を構成する人々は多様化し、大学に入る人々の選び方もまた変わりつつある。

大学構成員の多様化では、教員、職員、学生の三者それぞれに生じている変化を整理した。教員の役割拡大、職員の専門化、学生の背景の多様化。大学組織としての一体性を保ちながら、各構成員の力を引き出すことが課題となっている。

大学入試と選抜では、ユニバーサル化した高等教育のもとでの入試制度を考察した。大学が「選ぶ側」から「選ばれる側」へと変化するなかで、学力偏重からの脱却と、多面的な評価のあり方を論じている。

研究と社会貢献

大学の研究は社会にどう還元されるのか。直接的な貢献から間接的な貢献まで、その経路は多様である。

大学の研究と社会貢献では、COVID-19のワクチン開発を題材に、大学と企業の連携による社会貢献の実例を分析した。基礎研究を担う大学と、実用化を進める企業との協働が、危機的状況において果たした役割を考察している。

大学と地域貢献では、大学の「第3の機能」とされる地域貢献について、学術探究との関係を論じた。大学は即効性のある解決策を提供するよりも、学問を通した長期的な社会貢献こそ本領であるという立場から議論を展開している。

大学発ベンチャーと技術移転では、TLO(技術移転機関)を軸に、大学の研究成果が産業界へ還元される仕組みを整理した。大学の高度な研究力を背景としたベンチャーは、個人による起業とは異なる安定性を持ちうると論じている。

連携と国際化

一つの大学だけでは対応しきれない課題に対し、連携と国際化は重要な戦略となる。

大学間連携の未来では、大学同士の「水平的連携」と教育段階を超えた「垂直的連携」の二つの軸から、大学の将来像を模索した。OECDのリカレント教育やUNESCOの生涯教育の理念も踏まえ、連携のあり方を多角的に検討している。

大学の国際化では、学生と教員・研究者という二つの人的資源の観点から国際交流を分析した。経済的要因が国際交流の活発化を妨げている現状を指摘し、支援の充実とデジタル技術の活用を提言している。

おわりに

12本のレポートを通じて繰り返し立ち現れるのは、大学が社会の変化に応じて自らを問い直さなければならないという認識である。M. トロウが示したエリート型からユニバーサル型への移行、McNayの組織モデル、公共経営の概念。これらの理論的枠組みは、大学が直面する個々の課題を俯瞰するための手がかりとなる。

大学は学術の府であると同時に、社会の一構成要素でもある。その二つの顔をどう両立させるかという問いに、簡単な答えはない。しかし、問い続けること自体が、大学という営みの本質なのではないだろうか。

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AIの文章に価値はあるか

AIが生成した記事や、AIとのチャット履歴がネットに溢れている。そしてその大半は、正直なところ、読む気にならない。 AIの記事はなぜ退屈なのか 不思議なことに、AIとの対話は当人にとっては有意義であることが多い。問いを投げ、応答を得て、考えを整理する。その過程には確かな手応えがある。だが、同じやり取りを第三者が読むと、途端に退屈になる。 この落差はどこから来るのか。 AIとの対話で当人が得ているのは、「自分の問い」に対する応答だ。その問いの背後には、これまで何を考え、何に引っかかり、何を言語化できずにいたかという厚い文脈がある。応答がその文脈の上に載ることで、初めて対話に意味が宿る。 第三者にはその文脈がない。文脈を欠いた応答は、ただの情報の羅列だ。 ここに本質的な理由がある。多くのAI生成記事は「誰かの視点」を持たない。何を選び、何を捨てたかという編集の痕跡がなく、あらゆる方向に平等に情報が並ぶ。結果として、誰が書いても同じになるような文章が量産される。誰のものでもない文章は、読者に語りかけない。 シェイクスピアと猿 視点を変えてみよう。 有名な思考実験がある。

By Sakashita Yasunobu

EthernetポートのLEDが示すもの

PCやルーターのEthernetポート(RJ45コネクタ)には、小さなLEDが2つ付いていることが多い。何気なく目にする光だが、それぞれが異なる情報を伝えている。 リンク状態と通信アクティビティ 一方のLEDは、物理的な接続の有無と、データの送受信状況を示す。 * 点灯していれば、ケーブルが正しく接続され、リンクが確立している * 点滅していれば、データパケットの送受信が行われている * 消灯していれば、ケーブルが抜けているか、相手側の機器が応答していない この点滅は一見すると何らかの規則的なパターンに見えることがあるが、実際にはネットワーク上のトラフィック(パケットの送受信)に応じて不規則に発生しているだけであり、点滅のパターン自体に意味はないことがほとんどである。点滅していない場合は、単に通信が発生していない状態である。 通信速度の表示 もう一方のLEDは、リンク確立時にネゴシエーションされた通信速度を色で示す。10/100/1000 Mbps対応のポートでは、一般的に以下のような構成になっている。 * ある色で1000 Mbps(ギガビット)接続を示す

By Sakashita Yasunobu

日記を書こう

日記を書こう。 そう言ったところで、何を書けばいいかはわからない。何のために書くのかも、よくわからない。ただ、今日あったことを、今日感じたことを、どこかに書き留めておきたいという素朴な衝動がある。たぶんそれだけでいい。 断片を並べる場所 ブログの記事や論文には構成がある。伝えたいことがあって、それに向かって文章が組み立てられている。素材を選び、順序を決め、不要なものを削り、必要なものを足す。それは編集された自己の表出だと言えるかもしれない。 日記は、その手前にある。 編集する前の断片を並べる場所。まだ何が重要かわからない。何と何がつながるのかも見えていない。その日あった出来事、ふと頭をよぎった考え、目に入った光景。それらをただ、順不同で、脈絡もなく、並べておく。 そしてその断片は、書いた瞬間にはほとんど意味を持たない。 宛先のない手紙 日記の不思議なところは、書くときと読み返すときで、まったく違うものになるということだ。 書いている瞬間は、ただの記録にすぎない。今日こんなことがあった、こう思った。それだけのこと。でも三か月後、あるいは三年後に読み返すと、書いたとき

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NTPのStratum階層とGPS時刻同期の仕組み

Windowsの時刻がずれやすいと感じたことをきっかけに、NTPの仕組みやStratum階層、GPSを用いた時刻同期について調べた内容をまとめる。 NTPとは NTP(Network Time Protocol)は、ネットワーク上の機器間で時刻を同期するためのプロトコルである。現在広く使われているのはNTPv4(RFC 5905)で、1985年の初版から改良が重ねられている。 NTPはStratum(階層)と呼ばれるツリー構造で時刻を配信する。上位の正確な時刻源から下位へ順に同期することで、ネットワーク全体の時刻精度を維持している。 Stratum階層 NTPのStratum階層は以下のように定義される。 * Stratum 0 : 基準時刻源そのもの。原子時計やGPS受信機などのハードウェアデバイスが該当する。Stratum 0はネットワーク上のサーバではなく、シリアルポートやUSBなどでStratum 1サーバに直接接続される * Stratum 1 : Stratum 0に直接接続されたNTPサーバ。プライマリタイムサーバとも呼ばれる * Stratum 2

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